ネパール・スタディ・プログラム

第1章 NSP運営組織構成・運営スケジュール

執筆者:赤星 聖

第1節 はじめに
本章では「みんなでつくる」をモットーとしているNSPが、2016年6月に参加者確定後、どのような運営組織を構成し、どのような運営プロセスによって実施されてきたのかを紹介・報告する。具体的には、NSPの組織構成、運営スケジュールの全体像を概観することを主な目的とし、改善点を含む、各運営グループの個別具体的な論点については、第2章において説明を行う。次年度以降も引き続き実施されるスタディ・プログラムにおいて、NSPでの経験が有意義な形で生かされることを願う。

第2節 NSP組織構成・運営スケジュール

1.概要
国連フォーラム主催「みんなでつくる」スタディ・プログラム(以下SP)のモットーは、その名前にも挙げられるように、プログラムを「ゼロ」から「みんな」で作り上げることにある。プログラムメンバーは、渡航前・渡航中・渡航後の各段階において、全員が少なくとも1つの組織に参画し、以下のような内容を「ゼロ」から「みんな」で考えて、約1年間のプログラムを構成してきた。

  • 渡航前
    • 何を学ぶのか=研究グループ
    • どの機関・事業にどのように行くのか=プログラム企画グループ
    • 自分たちの活動をどのように発信するのか=広報グループ
  • 渡航後
    • プログラム全体のまとめ、および外部発信をいかに行うのか=報告会・報告書・映像グループ

2.全体スケジュール
下図のように、NSP運営組織は渡航前と渡航後で異なる。すなわち、6月に渡航前の、12月に渡航後の運営グループについて、NSP全体でのコンセンサスをとり、メンバーの所属を定めた。大まかなタスク内容は下図に記載しているが、詳しくは次章における各グループの運営報告を参照されたい。

<組織構造:渡航前>
渡航前は、(1)プログラム企画グループ(会計・企画・ロジ・保健)、(2)研究グループ、(3)広報・渉外グループの3班構成とした。加えて、国連フォーラム夏のネットワーキングカンファレンスに向けたチーム、および渡航中の危機管理チームをアドホックに結成した。なおNSPにおいて渡航前には検討できなかったが、プログラムの早い段階でウェブページ担当を設定しておいた方が、情報発信の手段が多様になり効果的であると考えられる。

渡航準備が佳境になるにつれて、やるべき内容が加速度的に増加してくるため、各グループの連携は綿密にとった方がよい。特に、勉強会の開催頻度や日程については、渡航前の準備の山場とうまくずらせるよう工夫した方が、消化不良にならずにすむと思われる。また、渡航直前には訪問機関および訪問プロジェクトをまとめて議論する勉強会を開催したほうがよい。渡航前準備がいくら忙しくとも充実した渡航内容にするために必須であろう。

<組織構造:渡航中(首都カトマンズを例に)>
渡航中の役割分担は下記の通りである。原則として、(1)渡航前のプログラム企画グループが企画統括、保健、会計、ロジスティクスを、(2)渡航前の研究グループが研究を、(3)渡航前の広報・渉外グループが広報を担当することとした。しかし、地方訪問の際には人数の偏りが生じたため、渡航前に所属したグループとは異なる役割を担った人も多い。

渡航準備終盤から、プログラム企画グループの負担が非常に大きくなるため、渡航2カ月前から1カ月半前には、プログラム企画グループの状況を把握し、どの分野に、何人ほどサポートが必要なのかを検討したうえで、他グループから応援を募ることができるような柔軟性を担保しておくべきである。渡航中の役割分担も踏まえた配置ができるとなおよい。

<組織構造:渡航後>
渡航後は、(1)映像・記録グループ、(2)報告書グループ、(3)報告会グループの3班構成としたうえで、NSPウェブサイトの構築および運営のため、全グループ横断的な(4)ウェブチームを別途結成した。前述の通り次回以降のSPでは、プログラム開始時にウェブチームを結成しておいた方がよい。加えて、国連フォーラム冬のネットワーキングカンファレンスに向けたチームも有志によって構成された。

NSPはメンバーが少数であったことから、渡航後研究グループを別途結成することはせず、報告書グループの一部とした。しかし、渡航前・現地訪問・渡航後の総まとめを行うべく、少人数であっても渡航後研究グループを結成したうえで、全体を巻き込んだ総まとめの機会を作るべきであったと考える。その際には、報告会を全国各地で行うことになるため、日程や全体の負担分担との関連から、報告会グループとの調整は必須である。

3.コミュニケーション
NSPメンバーは、日本以外にもアメリカ、イギリス、カナダ、シンガポール、ベトナム、南スーダン、ルワンダと世界各国に、また日本内でも東京・神奈川という首都圏のみならず、北は北海道から南は福岡・宮崎という九州地方まで、全国各地に散らばっている。

このような状況において、円滑なコミュニケーションを行うために利用したのが、(1)メールおよびメーリングリスト、(2)Google Hangout、(3)フェイスブックメッセンジャーである。

正式な連絡および意思決定において用いられるメールを基本としつつも、おおよそ1週間に1度各運営グループでGoogle Hangoutを用いたビデオ会議を行い、またよりカジュアルな議論を行う場合にはフェイスブックメッセンジャーを活用した。Google Hangoutは勉強会開催時に世界各地をつなぐ際にも用いられた。

NSPの各グループの運営方法としては、(1)Google Hangoutを利用してグループのメンバーが顔を合わせて行うビデオ会議を週末に行い、(2)その中でグループ内でのコンセンサス、次週のアクションポイントを確認し、(3)平日中にアクションポイントの実施、およびグループへの共有を行い、(4)Google Hangoutを利用してグループのメンバーが顔を合わせて行うビデオ会議で週末に確認する、というサイクルであった。