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第4章 ウガンダの現状ーSDGsの観点からー

4.2 ウガンダの現状ーSDGsの観点からー
4.2.1 SDGsの達成状況

(1)SDGsの概要

持続可能な開発目標(SDGs)とは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。(外務省, 出版年不明)第二次世界大戦後の「平和・開発・人権」という体系と、急速なグローバル化による 「環境・持続可能性」という体系が統合されたのがSDGsであり、ゴール達成のために、それぞれの項目は関連しあっている。図1はストックホルム・レジリエンス・センター所長のヨハン・ロックストロームが考案した「SDGsウェディングケーキモデル」と呼ばれるものである。この図が示すように、SDGsのゴールは地球環境を基盤とし、その上に人間社会、そして更に上層に経済活動が成立し、それらが連関性を保ちつつ存在していることを表している。

 

図1 SDGsウェディングケーキモデル(図はThink the Earth『未来を変える目標SDGsアイデアブック』p.135より)環境、社会、経済のそれぞれのゴールが相互に影響し合っている

(2)SDGsが目指す世界のキーワード、勉強会全体の構成

USPでは、SDGsが目指す世界のキーワードとして「No one left behind」「In larger freedom」「Well-being」を選定し、それぞれをテーマの軸に置いた勉強会を開催した。また、勉強会全体のテーマは、USPのテーマでもある「ウガンダから考える持続可能な社会のあり方」とし、参加者がSDGsの各指標の相関を正しく理解し、ウガンダの開発において特に重要と思われる点、すなわち「レバレッジポイント」を考察できることを目的として設定した。各勉強会のテーマは以下の通りである。

・第3回勉強会
「No one will be left behindの実現ー北部地域コミュニティの視点から、ウガンダで暮らす全ての人を包摂していくためにー」
・第4回勉強会
「In larger freedomの実現ーウガンダの未来を担う将来世代の自由・可能性を広げる開発を考えるー」
・第5回勉強会
「Well-being(よりよく生きる)の実現ーSDGs時代の経済・産業の望ましい成長のあり方を考えるー」

(3)ウガンダにおけるSDGs達成状況

ウガンダは17のゴールの内、ほとんどのゴールにおいて2030年までに達成を目指すことが難しいとされており、達成度をスコア化した際の順位は162ヶ国中142位(Sachs et al., 2020, p. 27)とされている。しかしながら、アフリカ内でのランキングを見ると52ヶ国中19位(SDG Center for Africa and SDSN, 2020, p. 40)とされており、アフリカ諸国の中ではSDGs達成に向け前進中の国ということができる。

17のゴールを1つ1つ見ていくと、ほとんどの目標、具体的にはゴール 1, 2, 3, 5, 6, 7, 9, 10, 11, 15, 16, 17で“Major Challenges remain”(4段階評価中もっとも達成度が低い)と評価されており、特にゴール 4, 11の「質の高い教育をみんなに」「住み続けられるまちづくりを」は“Descending”(後退気味)という評価(Sachs et al., 2020, p. 45)であり、今後一層の注力が必要とされている。

ウガンダは17のゴールのうち、ゴール13の「気候変動に具体的な対策を」のみ非常に高い確率で2030年までの達成が見込まれる。ゴール13では、気候関連災害や自然災害に対する強靭性と適応能力を強化するため、関連する政策・戦略を国家レベルでの計画に盛り込むこと、また教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善することが求められている。ウガンダはこの目標に対して「アフリカの真珠」と言われる所以である豊かな自然を守るためのアクションを起こしていると言える。ただ、他のサブサハラアフリカ諸国を見てみると、図2に見られるように多くの国がこのゴールに対しては達成が見込まれており、ウガンダだけが特別優秀とは言えない。

図2 サブサハラアフリカ諸国のSDGs目標の達成度(Sachs et al. 『The Sustainable Development Report 2020』p. 45より)多くのサブサハラアフリカ諸国でゴール13「気候変動に具体的な対策を」は達成が見込まれるが、他の目標の達成度は低い

第1章 はじめに

第1章 はじめに

1.1 報告書の目的
本報告書は、2020年4月から2021年3月にかけて実施したウガンダ・スタディ・プログラム(以下、USP)の全体像を記したものである。本年は、新型コロナウイルス感染症の影響により、当初2020年9月に想定していた現地渡航を延期せざるを得ず、予定通りの活動を行うことはできなかった。そのような状況下でも、USP参加者は、現地渡航ができない中でどのように学びを深めるか、チームビルディングを行うかなど知恵を出し合いながら活動をしてきた。執筆時点(2021年1月)では、2021年3月でUSP全体としての活動は終え、2021年夏に希望者を中心として現地へ渡航することを想定している。本報告書は2021年3月までのUSPの活動を報告するべく、その内容をまとめたものである。
後述するが、スタディ・プログラムには、(1)知識の習得と議論する力の獲得、(2)ネットワークの拡大、(3)リーダーシップの涵養、(4)国連の活動に関する議論の提供、という4つの目的があり、本報告書もその目的に資するものである。
報告書を執筆する過程で、これまで実施してきた勉強会やオンライン・ブリーフィングでの学びを統合し、消化・定着させる=(1)知識の習得と議論する力の獲得

  • 報告書を執筆する過程で、これまで実施してきた勉強会やオンライン・ブリーフィングでの学びを統合し、消化・定着させる=(1)知識の習得と議論する力の獲得
  • オンライン・ブリーフィングにご協力いただいた方々・機関へのお礼および、学びの報告=(2)ネットワークの拡大
  • 報告書の構成検討、執筆依頼、校正、アップロードという一連の過程を通したプロジェクト・マネジメント=(3)リーダーシップの涵養
  • 報告書をウェブ上で公開し、国連フォーラムのメーリングリストを通して周知することによる、ウガンダおよび国連・国際協力に関する議論の場の提供=(4)国連の活動に関する議論の提供

現地渡航ができないという例年とは異なる状況の中で、USP参加者がそれぞれに学びを深めるべく、試行錯誤を繰り返し、結果的に例年にない工夫が見られたことも事実である。とりわけ、現地で活動されている方々から、オンラインでじっくりとお話を聞き、質疑応答を行った「オンライン・ブリーフィング」の取り組みは、単にウガンダや国際協力に関する考察を深めるのみならず、オンラインで海外プログラムを実施するという新たな可能性を見出すことにも繋がった。また、オンライン・ブリーフィングを通じて、「現地でしか学ぶことができない内容」が各メンバーの中で明確になったことも有意義な点であっただろう。このように例年とは異なる学びを得たUSPの活動に関して総括することは、2021年夏に現地渡航が可能になるか否かに関わらず重要であると考え、本報告書を作成したのである。

第2章 国連フォーラム、ウガンダ・スタディ・プログラム(USP)とは

2.3 ウガンダを渡航先に選んだ理由
2019年12月に、渡航国選定およびプログラム参加者の検討を行うタスクフォースが結成され、その後、渡航国選定の過程に入った。例年と同様、タスクフォース参加者が各自渡航候補国を提案し、全体で議論を行ったうえで、徐々に候補国を絞った。その際には(1)国連をはじめとする国際協力のプロジェクトが活発に行われているか、(2)外務省が発表する海外安全情報において、レベル1「十分注意してください」以下の地域が大半であるか、(3)渡航費を一定程度安価におさえることができるか、(4)渡航前の学習にあたって日本語または英語で読むことのできる資料が十分に存在するか、(5)「2020年」に渡航する意義のある国であるか、などを基準とした。
最終的にはバングラデシュとウガンダに絞り込まれ、以下の理由からウガンダを2020年に渡航すべき国とすることで合意に至った。

  1. 第7回アフリカ開発会議(TICAD7)から1年であり、アフリカ諸国を渡航先として焦点を当てる良いタイミングであること
  2. 中でもウガンダは、長期にわたる内戦からの復興、周辺国からの難民流入、ジェンダーや子どもの保護、スタートアップの増加と堅実な経済発展、腐敗や汚職などのガバナンス、豊富な自然と環境保護といったなど多様な視点から学ぶことができること
  3. また、こうした多様な視点は、2015年に国連で採択され、2020年に5周年を迎える持続可能な開発目標(SDGs)と関連させて議論することが期待できること

USPのテーマについては、上記を踏まえてタスクフォースで検討を行ったうえで、SDGsとの関連を意識し以下とした。