ヨルダン・スタディ・プログラム

5.2. 参加者の声(Part. 1)

5.2 参加者の声(Part. 1)

U.I [所属:報告会チーム]

参加したきっかけ

私はもともとパレスチナ問題に興味がありました。そんな時にヨルダン王国にて難民に焦点を当てたスタディーツアーが実施されると知り、数多くのパレスチナ難民を抱えるヨルダン王国を訪問することで、ヨルダン側からパレスチナ問題について実際に自分の目で見、さらにプログラムを通して勉強することでより理解を深めたいと思い応募に至りました。

渡航前の学び

渡航前には勉強会が開催されるのですが、この勉強会は受け身の勉強会で終わるのではなく、グループに別れて話し合いの場がもたれるなどインタラクティブな学びの場になっていました。私にとってはこの話し合いの時間は、他の参加者がどう考えているのかを知り、そこから自分の理解をより深めていける、そんな貴重な時間でした。

現地での学び

現地では個人ではなかなか訪問の難しい国連諸機関や難民キャンプなどを多く訪問させていただくことができました。私は様々なことに対して懐疑的な意見を持っていることが多いのですが、その一つ一つを訪問先の職員さんや受益者さんとの対話の中で答えを見つけていくことができたのは私の中では本当に貴重な体験でした。また、その中で新たに生じた疑問や深掘りして行きたい分野を渡航後の勉強会で学んでいけるというのもこのスタディープログラムの良さなのではと感じました。

今後どのように生かしていきたいか

私には夢があります。そしてこのスタディープログラムに参加したことでよりその夢を強く意識することができました。今後、今回見聞きした知見を生かし広く国際協力の世界に関わって行きたいと思っています。

 

高見 純平(たかじゅん)[所属:報告会チーム/サブリーダー]

参加したきっかけ

「水を乞い、洪水が起き、人が死ぬ。」ヨルダンの友人が言った言葉です。その姿や背景を見てみたい、素直にそう思いました。乾燥国であるため、ヨルダン川の水量が減少し、地下水が溜まる帯水層も枯渇するなど水不足の問題が深刻です。しかし一方で、鉄砲水や土石流などの洪水が起こり、都市部では道路が冠水し、交通がマヒするなどの自然災害にも多く見舞われています。水資源が枯渇していく中で大規模でコストのかかる海水の淡水化施設はどれほど重要なのか、これらの問いの答えを考えたく、参加を決意しました。

渡航前の学び

渡航前の約半年間は主にリスク管理班・企画班・第4回勉強会チームに所属しました。リスク管理班ではリーダーという役割もさることながら、「いかにやることを減らしていくか」に注力しました。ケースバイケースな対応が多い途上国で、リスクシナリオなどを決めることには違和感を覚え、解釈が共通となるようなマニュアルの作成を心がけ、タスクの時間短縮スキル・ワークを学びました。また、企画班ではホテルのロジを担当しました。50人超の宿泊管理はなかなか骨が折れましたが、メンバーの宿泊希望を聞き取りながら進めていくことで、マルチタスクにおいて、優先順位を考えて最適な答えを見つける工夫や思考方法は仕事でも活かせると感じます。さらに、勉強会チームでは以下のことについて深く学びを得ました。アウトプットを意識するとインプットも深くなり、今後の学びの機会に活かせるように思います。

1) 難民キャンプ内での様々な先端技術、女性のエンパワメント、雇用促進事業2) 水不足問題を解決するイノベーション技術
3) アパレル・農業・ICT・観光など成長産業可能性

現地での学び

1)先端技術:都市部での活用状況が知る機会がありませんでしたが、IT協会での聞き取りから、Refugee Open Ware (ROW)の事業など3Dプリンタなどの先端技術の導入が難民キャンプで推し進められ、IT協会の方針と認識や考え方が多少異なることに驚きました。IT協会ではWebアプリ・モバイルアプリ企業の成長と国外輸出支援が課題でありました。先端技術の導入は国際貢献の枠組みの中で難民キャンプなどに導入されやすいことにも驚きました。

2)水不足問題:街を歩くと節水を促すような啓発活動がどこでも行われていると考えていました。しかし、その姿はほとんどなく、「水不足は前提認識として普及している」と感じました。政府機関訪問時には海水の淡水化プロジェクトを国の主要プロジェクトとして扱っている中で、今後の国民への上下水道サービスと普及活動が課題になると感じました。

3)成長産業:アパレル・農業・ICT・観光が成長産業であるという仮説は予想通りでした。その中でもとりわけICTの活用が声を高くして挙げられていました。Webアプリ・モバイルアプリ開発・市場展開など個人・法人の事業支援を推し進める中で懸念したのは、隣のIT大国イスラエルです。同国について口には出せませんでしたが、AgriTech・FinTechなどICTを活用することにおいては中東では頭ひとつ抜きん出ています。今後、どのように隣国との産業競争・協定などをもとにして、財政赤字を克服し得る産業を創出できるのか、さらに若者・女性・難民の雇用促進につなげることができるのかが課題になると感じました。

今後どのように生かしていきたいか

今回、初のイスラム教徒の国、乾燥地である中東、深刻な難民問題を抱えるスタディ・プログラムということもあり、頭の整理がまだまだ追いつきません。しかし、一つわかったことは「国が生きよう、躍動しようとしていること」です。政府機関を訪れた際にも彼らの知識や国に対する思いは強く、世銀Youthの声、難民の働く姿を見て一つ一つの意志が感じられました。日本だけを見てきた私にとって今の自分に何ができるのか、何をしたいかを改めて問う、いいきっかけになりました。

現在私は人工衛星の画像解析エンジニアとして国内外問わずインフラ、農業、社会経済に対して人工衛星を用いたソリューションを提供しています。これまで単一的な視点しかなかった課題に、新たな手法として投げかけることができます。選択肢を増やすこと、強制的なプロジェクトではなく、途上国の人々が安全・効率・選択をしっかりと享受できてこそ、本当の国際貢献になると感じています。そういう人材でありたいと強く願います。


(写真)全訪問機関終了後に立ち寄った死海

 

たじー [所属:報告会チーム/役職:マネジメント]

参加したきっかけ

ヨルダンと聞いたときにふと浮かんだのは、ガザでビジネスコンテストを主催していた友人の口癖だった。「丸の内でスーツを着て働いているような人が普通に関われるぐらい、国際協力が身近なものになったらいいよね。」ヨルダンでビジネスを立ち上げようとしていた彼は、ビジネス戦略と同じくらいに、難民の雇用、政治的対立の激しい隣国の企業との提携に、難民の多い地域を産地として打ち出すブランディングと、最大限に社会的価値を創出するためのあらゆる可能性を熱く語っていて、丸の内のビジネスパーソンの手にかかった国際協力の真髄を見た気がした。当時あの地域に特有の複雑さに理解が追いつかなかった私は、ただただ、移動する人々と移動が制限される人々は、どのように生きる尊厳と生計手段を担保していけるのか、それに伴い経済はどのように動くのか、そのようなことだけが頭を過ぎったのを覚えている。今年のスタディ・プログラムのテーマはヨルダンにおける難民支援だと聞いて、参加しないわけにはいかなかった。

渡航前の学び

程なくして「難民を経済的パワーに」との言葉に魅せられた。ヨルダンの難民受け入れ政策は、地政学的条件を踏まえると資源を持たない小国が生き抜くための強かな外交戦略に感じられたが、外交的動機でも人道的動機でもなく、真の意味でインセンティブを持って国や企業が難民を受け入れるようになれば、世界の支援のあり方も変わるかもしれない。それと同時に、ICT産業や農業を梃子にしたプライベートセクターの活性化、難民への制限付きの就業許可といった、支援の現場に取り入れられるビジネスマインドや技術を知るにつれ、その実態と可能性をこの目で見たいと思った。

渡航プログラムの企画も非常に学びが多かった。居住地も年齢もバックグラウンドも異なる約60人ものメンバーとの、「みんなで作る」がモットーの共同作業である。全体のタイムラインを頭に描いた後、ヨルダンで活動する機関やプログラムの概要調査、コンタクト、メンバーの訪問希望のデータ集計、ロジを含むスケジューリング等やることも膨大だったが、単なるタスク処理を超えて、リーダーシップのあり方についても考える機会となった。合意形成のためのオープンな議論の場の提供やペース配分、タスクの目的の共有や質の追求を意識して学んでいった。自分の常識の枠を越えた視点や困った時に手を差し伸べてくれる人、着々と物事を進める人、場の雰囲気を作るのに長ける人など、様々な特性のチームメンバーと走れることで、本業とはまた違ったソフトスキルを磨くことができた。

現地での学び

本当に多くの方の協力を仰ぎながら、数多くの政府機関、国際機関、NGO、民間企業、そしてシリア・パレスチナ両難民キャンプへの訪問機会を頂いた。まず、支援現場におけるビジネスや技術の観点では、政府も援助機関も口を揃えてプライベートセクターの重要性と資金需要を語っており、多くの機関が自立自走の支援の仕組みを模索しているようだった。シリア難民キャンプへの虹彩認証やブロックチェーンの導入は、圧倒的な効率化と資金の流れの変化によってこれからの支援のあり方を大きく変えていくであろうし、難民によるGISを利用した地図の作成は、支援者や裨益者にとっての有益な情報源として、これを利用した新たなサービスが次々と生み出されていくだろう。

一方で興味深いのは、事業性や効率化、雇用創出だけではなく、ホストコミュニティと難民との共同作業による社会的結束の強化、テクノロジーを若者の社会参画の手段に活用することで地域や仕事への愛着を持たせるなど、副次的な効果を期待する取組が多い点である。また、どこか無機質で砂埃の舞う褐色のシリア難民キャンプとは対照的に、パレスチナ難民キャンプの人のごった返す市場を思い出す。ヨルダンで取れた野菜だと自慢げに見せてくれた店主も、カルダモン入りのコーヒーを振る舞ってくれたカフェの店主も、無心にパンを作る工房の若い職人も、難民だと言われなければ普通の町で暮らす人たちのようだった。

果てしなく難民が増え続け、多くの制約がある中で、様々な支援方法が模索されている。できる限り機械的な要素を排除し普通の生活を装いながら、必要な支援を必要な人たちに行き渡るようにすることがいかに難しいか。そこに現地の人々と援助機関の長年の努力と葛藤が垣間見えた。支援の現場には事業性や先端技術といったお金と効率性を生み出すものと、伝統や愛着といった計り知れないもの、おそらくその両輪が必要だ。

今後どのように生かしていきたいか

目まぐるしい日々だった渡航から数ヶ月経ち、今真っ先に思い出すのは、アンマン城から見下ろした夕陽とアザーンの反響する美しい市街や、テラスでシーシャを吸うヒジャブを被った女性や、市場の熱気だったりする。そこには普通の人たちの暮らしが当たり前のようにある。国際協力や開発は、そこに骨を埋める覚悟のある者しか想いを馳せてはいけないということはない。今後も実務者としてお金と社会的価値を生み出すべく邁進すると同時に、友人の言葉ではないが、国際協力とは最も遠い丸の内界隈にいるような人たちが、社会的課題に時間と能力の5%でも割きたくなるように、これからも発信を心がけていきたいと思う。

 
(写真左)アンマン・ニュー・キャンプのカフェ
(写真右)ヨルダンのICT協会 int@j