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山本直人さん

国連開発計画(UNDP)ニューヨーク本部
エンタープライズ・ソリューション部チーフ

 

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山本直人(やまもと・なおと):長野県出身。慶應義塾大学文学部卒業後、コロンビア大学国際公共学大学院にて行政学修士を取得。1994年にUNDPに勤務開始、ペルー、ジャマイカ事務所において社会開発事業に従事。その後ホンジュラス事務所では駐在副代表を経験。2002年より、コペンハーゲンにてUNDPを含めた複数の国連機関を対象としたプロジェクト管理の強化に向けたPeopleSoft ERPの導入に携わる。2008年よりUNDPニューヨーク本部にてIT部門を統括するチーフを務める。

Q. 国連への就職を意識し始めた時期、きっかけについて教えてください。

1980年代のアフリカの飢餓問題をきっかけに、中・高校時代に漠然と開発の仕事がしたいという気持ちを持ちました。生まれた場所によって人生が左右されるって良くないですよね。そんな社会の不公正みたいなところに問題意識があって…。でも国連は敷居が高くて自分には入れそうにないと思っていました。

国連を明確に意識したのは大学院の頃ですね。大学院でニューヨークに来たとき、学部時代の先生の知人がUNDPで仕事をしていて、ちょっと訪ねてみたところ、「こういう道もあるのか、入るのはそんなにたいへんなわけでもないのか」と思い、国連を目指すことになりました。

Q. 大学院のときにブラジルのアマゾン奥地でNGOのインターンをされたそうですね。国連のインターンではなく、アマゾン奥地でNGOのインターンに臨んだ理由は何でしょうか。

状況に流された部分が大きいですね。国連に入るには仕事の経験が必要ということで、大学院在学中の2年間にわたってニューヨークの開発系NGOでインターンをしていたとこがあるんです。そのときに、夏休みにフィールドに出してほしいと希望したところ、「ブラジルに行ってきたら?」と言われて、ペルーとの国境、アマゾンの上流にあるアクレ州というところに行きました。クルゼイロ・ド・スルという町から船で5日くらい上がるところです。着いたら、「山本君、来たの。聞いてたけど、何できるの?」って。

「大学院では行政学やってます」と言ったら、「じゃあ、船で5日かかるところに事務所があるけど、動いてないから何か指導してきなよ。明日連れていくから、1か月後に帰っておいで。ゴムの収集やってる事務所とか倉庫とかあるから、会計の仕方とか事業の回し方とか、指導したら?」って。小さい村で3日くらい指導したら「もうたくさん習ったからいいわ」と言われ、あとは現地の人と暮らしていました。実は日本の大学を3月に終えて大学院に入る9月まで、半年間ブラジルの日系人の小学校で教員補助をやっており、なんとなくポルトガル語を話せるようになっていたのです。だからまたブラジルに行った、というのもあります。

Q. その後はラテンアメリカを中心にキャリアを積んでこられたのですね。ブラジルでの経験はラテンアメリカでのキャリアを選択するきっかけになったということでしょうか。

確かにそうですね。もともとラテンアメリカに興味があったというよりも、たまたまブラジルでインターンの機会があったから、というのが本当のところです。確固とした意志でラテンアメリカ、というわけではありませんでしたね。

Q. 現在のポストの業務について教えていただけますか。

現在はエンタープライズ・システム、言い換えると経営システムとか経営管理システムというんでしょうか、国連開発計画の組織全体を回すためのITシステムの構築をやっています。つまりUNDPで走らせているコーポレート・ウェブ、ERP(Enterprise Resource Planning)のアプリケーション、イントラネットのシステムなど、UNDPの事業に必要なITシステムの構築と維持を行う部署のヘッドをやっています。

Q. このポストはこれまでのキャリアの延長線上にあるのでしょうか。

やっとやりたいことに出会えたと思っています。僕はずっとUNDPにいますが、ある意味ここは何でも屋で専門性がない組織です。中核的な能力特性みたいなものがあまりないんですよ。その代わり、意志があれば何でもできるし、そしてやらせてくれるという強みがある組織です。

7、8年フィールドで勤務して、組織の基本が弱いことに気付きました。組織を回しミッションを達成するにはルールと目的がどのようにつながっていくかが見えていないといけない。ホンジュラスで事務所の副代表を務めたとき、フィールドのレベルで組織をまとめることに成功しました。次はUNDP全体のレベルで方向性を一貫して支えられるような組織の基本を構築したいな、じゃあやろう、と。

それを実践できる部署はITみたいなところだと思うんですね。組織全体が見える部署はけっこう少ない。でもITをやると見えます。いろんな人が「自分はこれやりたい、こういうふうに決めたい」と彼らの視点から主張するのを、単純なロジックに落としてシステムを構築していきます。この作業をやると、一つひとつはそれなりにロジックが通って完結しているように見えるシステムでも、全部つなげて考えてみると、筋が通らなくておかしなところがたくさん見えてきます。それを直すのは楽しいですね。

でもこれは僕の見方であって、「お前、IT野郎なのに何を言っているんだ」と見られることも多々あり、自分がやりたいことと人からの期待とのギャップには苦労します。「山本くん、実はけっこう面白いことやってるね」と言わせたときは嬉しいです。

Q. ITの基礎知識はありましたか。

全然ありませんでした。どうやってITに入ってきたかというと、ERPの導入からでした。プロジェクト・マネジメントの仕組みづくりをERPを通して始めたら組織の矛盾がよく見えて、おもしろいなあって。

組織がITをどのように理解するか、つまり単なるテクノロジーとして見るのか、自分の筋肉みたいに使うかで、最終的には大きな違いが出てきます。ITを単なるテクノロジーとして見るなら技術的な詳細を知らなければどうにもなりません。一方、ITを組織の筋肉として使うならデータベースや通信技術の詳細はあまり関係ないんです。もちろん知らないといけないし、経営管理システムの運営においてはその能力も必要ですが、組織をまわす筋肉としてのシステム構築において技術そのものは枝葉の話です。ITを使ってどんな統合性のある組織運営の仕組みをつくるかという話になると、あまりコンピュータのことを知らなくてもできます。

ITができる人、データベースを管理できる人は国連の外にたくさんいます。UNDPは自分で基幹となるアプリケーションを作っていません。ERPなどの基幹となるアプリケーションはオラクルやマイクロソフトの製品を使っている。つまりWordのプログラマーが必要なのではなく、Wordをどう使うか分かっている人が必要です。テクノロジーそのものというより組織の話になってくるんです。現在のポストに応募したとき面接で「あなたの弱点は何ですか」と問われ、「僕はITできません。コードも書けません。でもそれをどう使うかのシステムづくりはできます」と言ったら採用してくれた。UNDPには感謝しています。

きっと僕はうるさいIT担当だと思われているでしょうね。以前は「こういうシステムが欲しい」と言われたら言われたままにプログラマーが行って対処したわけですが、僕の場合はシステムの統合性と組織との整合性を大事にするので、「なぜそれをやりたいの」とうるさく聞くんです。「前の人はもっと良かったよ」と言われることもありますね。でもそれを詰めないと、後でつじつまが合わなくなるのです。問題の根源を指摘して解決策を提示し、「そうだねえ」となったら成功です。失敗したら「山本くん、あんたIT担当でしょ。そんなこと言っていないで頼まれたことやりなさいよ」となります。どう言えば分かってくれるのかと日々苦闘していますね。

Q. 山本さんのようにキャリアの方向性を変えることはめずらしいのでしょうか。

昔の友達には「何でそんなことやっているの?」と言われます。地域事務所でプログラムを運営して、副代表を務めてという主流にいたのに、「何でUNDPのメインストリームから離れた、左遷されたみたいなところにいるの? 何か悪いことしたの?」という見方をされることもありますね。

その意味では、フィールドの山本とITの山本が同じことを言っても、反応が違ってきます。フィールドのときは「おもしろいこと言っているね」と話を聞いてくれた。ITの山本には「あんた黙っとれ」となる。だからITの看板で苦労することはあります。「何でテクノロジーの人が開発、RBM(Results-Based Management)、パリ宣言に口出すの? あんたの知ったことじゃないでしょ」みたいなね。

UNDPではプログラムが花道です。途上国でプログラムをやって、成功して満足する人が多い。自分もそのキャリアを積んできたけれど、ある時「UNDP自身の組織の強化のために何かできないだろうか」と思ったんです。そのためにはITをうまく使った仕組みをつくって、プログラムとオペレーションをきれいに結びつけることが必要になる。だから、開発もRBMもパリ宣言も、ITの僕には必要なことなんです。そう言うと「偉そうなやつだな」と見られるかもしれない。でも、UNDPみたいなところで、開発事業を知らないでITをやるとたいへんです。技術の話ばかり先走りして、最終的な事業の結果について責任が取れなくなります。これはよくあるのですが、システムの問題が起こったとき、僕らなんかはIT分野の難しいことを言って逃げることもできる。ITの問題ではなくビジネス側の問題だと言って逃げることもできる。でもこれだけITが事業に密着している時代に果たしてそれでよいのでしょうか。

僕みたいなタイプはあまりいないかもしれませんけど、ITを使っての組織づくりは結局、「壊れているものを直す」ことに落ちていくんです。物を直すとは問題の指摘ができて、直す方法を考えて、必要な技術と人材を使って方向を変えていく仕事ですよね。ITは文句を言わずに仕事をしてくれるものの、文句が言えて気まぐれな人を扱う人事と「組織の基本づくり」という部分でかなり似ていると思います。

Q. これまでのキャリアで壊れたものを直してきた経験を教えてください。

ハリケーン災害の復旧支援でホンジュラスに行き、副代表として2年ほど残って事務所を直しました。壊れたプロセスを直して、それなりの結果が出るところまでは持っていきました。当時、ハリケーン被害があって支援のお金が集まっても、いくら使ったかをドナーに報告できない状況がありました。ポケットに入れているわけではなく、管理能力が弱かったんです。お金が足りないところがある、こっちから持ってくる、そっちのをあっちに持っていく、という過程で記録がきれいには残っていなかったのです。お客さんからお金をいただいたらきちんと報告するのが基本なのに、ホンジュラスでその仕組みをつくるためにはかなり時間がかかりましたね。

もうひとつはプログラム・オフィサーの指導です。「40個のプログラムを回している」と自慢している人がいましたが、僕はひとりで40個も回せるわけがないと思います。きちんと現地訪問をやっているのか、せめて3か月に一度は現場を見て報告しなさい、と。僕が指導して8割くらいは3か月に一度はやるようになりました。

また、国連では普通のことが普通と思われていないことがよくあります。例えば資源動員。国連は国と違って富を創出する部門、つまり民間を持っていないので、もらったお金を回すことしかしません。つまり資源を動員しているわけではないのです。例えば日本政府から国連システムにホンジュラスの復旧支援のために支援金が拠出されて、UNDPがそれを活用する。そうすると自分がいかに資源動員したかという議論になる。でもUNDPがその支援金を使ったからといって、それでホンジュラスへの支援の金額が増えたわけではなく、それは日本政府が拠出した額に過ぎません。つまりUNDPはホンジュラスに対して資源動員しているとは言えないんです。だから僕から見れば、資源動員というより、いかに援助をうまく回してドナーと受入国にどう喜んでもらえるかが大事になります。

この見方が「正しい」と当時の上司に認めてもらえたのは嬉しかったですよ。難しい話をして分かった気になって、実は本質を理解していないこと、また、国連に限らず多くの組織で本質を理解せずそのまま進んでいくことがよくあると思います。例えば組織内の文書でRBMなどキーワードはきれいに書いてあっても、その内容の実態はお粗末な場合が多いと思います。

Q. 国連で働くのに必要な能力をどのように身につけられましたか。

ホンジュラスでの成功体験は大事でしたね。上司に恵まれたことも。あともうひとつ、大きな転機はブラジルの日系人の小学校で教員補助をしていたときです。

ブラジルの子どもたちは自分がやりたいことをよく分かっている。僕はそのとき日本で大学まで終えていました。やりたいことをやるというよりも、正しいことをやるという教育を受けてきた。日本人はそういうところがありませんか。それは日本人の強いところでもあります。でも度が過ぎると、何をやりたいか、何を思っているか、と聞かれて答えるのが難しかったりしますね。「いま何をやりたいか」と聞かれてすぐに答えられますか? 僕はブラジルでそれに答えられなかった。

僕らの場合、答えを出すには文脈や自分の役割を考えて、その結果として正しい答えはこれだ、という思考が必要ではないですか。泣いている子どもがいるとしましょう。仮に僕としては殴りたいと感じたとする。でもその行動が直接出てくるのではない。文脈や役割を考えると、正しい行動としては慰めてあげる、だからそれが僕のやりたいこと、となるんです。自分のやりたいことが最初から決まっているわけではないから、答えを出すのに時間がかかります。

逆にブラジルの子どもは直接的な動き方をしますよ。前後も役割も考えない。やりたいと思ったことを直接的に表現する。だからすごくめちゃくちゃな場合もある。でもそれを見ていて、自分に欠けているところに気付きました。自分のやりたいことが分かっているというのは大事なことです。それが分かったから、僕は組織で言いたいことを何でも言えるようになりました。

当時は大学を卒業したばかりで、海外に行けるという単純な気持ちで楽しんで行ってきただけなので何かを直してきたわけではありません。壊れたものを直すのが好きだと思うようになったのは、国連で仕事を始めてからですね。ペルーでは90年代にテロがありました。僕は当時、リマに逃げてきた住民が村に帰るのを支援するプロジェクトを運営していて、住民のIDを作成して山奥まで届ける物流システムを構築しました。

そこでIDの授与式をやったとき、民間企業のロジ能力を痛感しました。かなり奥地まで行ったのですが、ビールをはじめとして人の欲しいものはちゃんとあるんです。公的組織の役割と民間組織の役割について考えさせられました。国連などの公的機関が入っていくべきなのか。それとも民間が参入するインセンティブをつくるべきなのか。市場が動いていないような最貧国では困難かもしれませんが、中所得国なら民間が機能する仕組みをつくれるのではないでしょうか。

Q. これからは何をどのように進めていくつもりですか。

現在、国連で新しくて分かりやすい会計基準が導入されています。これを利用して壊れているところを直したいですね。6年前にERPシステムを始めましたが組織の現状とうまくかみ合わないところが出てきて、160か国のUNDPスタッフが数字を読むときに苦労しています。例えばシステムの構築まで理解していないと読めないレポートがある。僕がヘルプデスクで状況を説明すると「そういうことか、でも難しいねえ」と言われる。全世界のオペレーションで無駄な時間を使っているのが現状です。ここを直せたら組織にかなり貢献できることになります。

もうひとつはUNDPの潜在能力を引き出すことです。この組織はアプリケーションやデータベースに結構投資しているので、ウェブべースのアプリケーションが世界中のオフィスに走っている。これをうまく使って全世界にあるバックオフィスを統合できれば、フィールドオフィスが効率的に開発の仕事に取り組めるようになりますね。

最近IMF、世界銀行、OECD、UNDPのウェブページを見ていました。UNDPのページは開発に役立つ情報が少なく、業務内容以外の情報はあまり載せていない。でもIMFのサイトでは過去30年の経済発展のグラフが国ごとに出せる。ブラジルはこれ、ペルーはこれと。世銀のサイトにもそういうのがある。さらにデータドットゴブというサイトはアメリカについての情報がすごい。このように何か役に立つものを発信したいというのもあります。

BOP(Base Of Pyramid)ビジネスにも興味がありますね。ペルーのビールの話に戻りますが、貧しい人たちがいるところには何か条件が整えば必要なものは届くんです。その条件が明確になれば開発のアプローチは変わるのではないでしょうか。援助が足りないから届かないというのは違っていると思います。国連の平和構築はさておき、開発はパラダイムの転換がないと時代遅れになると思うんです。「援助します」という根っこの考え方を変えていかないと。国連でこれをやれたらおもしろいでしょうね。「山本くん、やってくれないか」と誰かが頼んでくれたら嬉しいです。

国連全体でのIT統合についても、誰か偉い人に「山本くん、こっちにきてやってくれ」と頼まれたら喜んでやります。ただ今はそのようなことを頼まれることはないでしょう。まだITに携わって2年です。3年、4年とやって「UNDPが変わりました」というところまで行けたら、頼んでもらえる可能性が出てくる。今度のインタビューで「UNDPで4年間やって、こんなことができました」と言って評価してもらえたら、おもしろい方向につながるかもしれません。

直すのが好きなんですよね、本当に。ちょっと分野が違うので、イスラエルとハマスの関係修復を頼まれてもできないですけど、例えばある国の政府から「農林省のシステムが壊れているから直して」とか頼まれたら喜んでやります。

Q. グローバルイシューに取り組むことを考えている若者に向けてメッセージをお願いします。

地球規模の課題の多くは、本質的には地球規模の課題ではないと僕は思います。地域の問題が集合として存在するときにグローバルなイシューになるわけです。地球規模に見えても、基本的にはローカルな問題が多いのではないでしょうか。問題の本質を見極めないと、がんばっても解決に至りません。そのグローバルイシューの本質が何なのか、じっくり考えてほしいと思います。

もうひとつは、敷居が高いとは思わないことです。国連はそんなに敷居が高いところではありません。自分が何をしたいかを分かっていれば、他のことは二の次ですよ。僕は大学院の一学期にものすごく勉強したんです。でも授業は半分しか分からないし、教科書も分からないことがいっぱい書いてある。それでもけっこう良い成績が取れたりしました。ものが分かることと、言葉ができることって違うと思います。コミュニケーション能力がないとか、国際的な経験がないとか、それは枝葉の話です。「自分はこういうことができる、こういうことに取り組みたい」という幹が備わっていれば、枝葉のことは後についてきますよ。

自分のやりたいことをまじめに話したら、分かってくれる人は分かってくれます。逆に、分かってくれない人はいくら話しても分かってくれません。他の社会でも同じですが、国連の場合は少し多様性が大きくて懐が深いと思いますよ。何か提供できるものがあれば積極的に国連にチャレンジしてほしいですね。

Q. チームリーダーとしてお仕事をされていて、どのような人材を育てたいとお考えですか?

僕はこれまで上司に恵まれたんです。最初ペルーに行ったとき、スペイン語ができないことを上司に打ち明けたら「気にしなくてもいい、そのうちできるようになるから」と言ってくれました。業務のやり方も手とり足とり教えてくれました。メモの取り方、会議録の取り方、手紙の書き方。ホンジュラスでも話を聞いてくれて評価してくれる上司に恵まれた。僕もそういう立場になって、若い人たちに返していきたいと思います。

今の部署で、彼らに徹底して教えたいと思っているのは、問題の経緯をきちんと考えて、解決するための方向性を決めてから、僕の部屋に話しに来ることです。それを決めないで僕の部屋に入ってきたら質問攻めです。上司にそれをやってもらったから今の自分があるわけで、それを返していきたいです。

もうひとつは基本ですね。礼儀作法というか、少なくとも約束したことはやりましょう、ということ。これはしつこく言っています。できなければちゃんと知らせましょう、ミスをしたら言いましょう、と。これができれば物事を覚えていき、いろんな状況に応用が利きます。国連はこういった基本が弱いところなんですよね。基本が大切です。これは日本人のけっこう強いところですよ。

 


2010年5月12日、ニューヨークにて収録
聞き手:太田徹
写真:田瀬和夫
プロジェクト・マネージャ:宮脇麻奈
ウェブ掲載:陳 穎

 


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