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持続可能な社会構築に金融が果たす役割


 

大和総研 調査本部 主席研究員
河口真理子さん


略歴:河口真理子(かわぐちまりこ)
大和総研にて企業調査、経営戦略研究部長/主席研究員などを経て、大和証券グループ本社広報部CSR担当部長就任。現在は、大和総研 調査本部 主席研究員。担当分野は環境経営・CSR・社会的責任投資。NPO法人・社会的責任投資フォーラム代表理事・事務局長。


1.金融の社会的意義

この6月に開催された国連持続可能な開発会議(Rio+20)では、とくに国際条約や具体的な行動計画ができたわけでもなく、目標に向けた政治的合意文書に合意しただけと、あまり見るべき成果はなかったとされます。一方で、金融やビジネス市民・NGOの主催するサイドイベントでは活発な議論や提案が出されました。その中で今回特に注目したいのは金融の動きです。

国連環境計画金融イニシアチブ(United Nations Environment Programme Finance Initiative : UNEPFI)が中心となり、金融機関の立場から持続可能な社会構築に向けて果たすべく、宣言の公表などが行われました。その中で金融機関らしい取り組みとしては「自然資本宣言」(Natural Capital Declaration)の公表があります。これは、自然自体を生態系サービスなどの利益を生み出す資本ととらえて、金融機関が、その考え方を自社の金融商品やサービスに組み込み、自らの活動状況を開示する財務会計のフレームワークに自然資本を反映させることなどを宣言したものです。この宣言に37の銀行、運用機関、保険などの金融機関のCEOが同意のサインをしました。さらに、国連加盟国に対して、企業の財務報告に、持続可能性にかかわる情報(環境や人権社会的課題に関する情報)の開示義務付けを提案しました。

金融と持続可能な社会構築、なぜその二つがつながるのか。その前に、そもそも金融の本質的な役割とは何なのでしょうか。金融に関する教科書をみると、金融とは「お金を融通すること」と、定義されています。端的な説明ですが、お金を融通することは経済社会的にどのような意味があるのでしょうか?

経済を体にたとえると、金融はしばしば血液に喩えられます。血液が循環しないと生きて活動できないように、金融機能を通じてお金が流れることで経済が動きます。血液は体の構造上決まったところにある血管を流れますが、金融の回る道筋は経済社会の中で変容していくものです。また、そしてどのような順序で、どの分野に流れるかによって、経済社会のあり方を変えていきます。

たとえば、数年前からBRICsなど新興国や環境ビジネスは有望市場として投資資金が集まりました。新興国へ投資が増えて資金が集まれば生産が拡大され、需要を刺激します。そして地域の雇用を生み、所得も増えて、消費市場も形成されて、成長も一段と進みます。結果、新興国の経済水準は大きく向上します。拡大が期待される自然エネルギー、リサイクルなど環境ビジネスに資金が投入されれば、投資家は収益を手にするでしょう。また同時に自然エネルギーが増えてリサイクルビジネスが盛んになれば地球環境負荷は減少し、環境保全が進む効果も期待できます。

しかし、一方で環境保全のコストを節約するために森林を乱伐したり汚染を除去せず垂れ流したり、労働コストを下げるために途上国で児童労働を強制させている企業や産業に、高収益という面だけを評価して投資資金が流れればどうなるでしょう?投資家は確かに収益を得られるかもしれません。しかし、その一方で世界の環境破壊は進み、途上国では安い児童労働に苦しむ貧困層が増え、地球環境や社会に負担をかけることになります。

つまり、投資家が同じ収益を得たとしても、投資した事業や産業のあり方によって、将来の社会は大きく変わり得るのです。投資する際には自分のリターンを大事にすると同時に、それが回りまわって社会にさまざまな影響を与える、そのことを自覚すること、それが投資家の社会的責任だと考えます。

同じことは投資だけでなく銀行が行う融資にも当てはまります。投資は投資家自身が投資先の事業のリスクやリターンを考えて自己判断でお金の行き先を決めますが、融資の場合は預金者に代わり銀行がリスクをとってお金の行き先を決めます。そのお金の行き先が、再生可能エネルギーや森林保全、環境技術開発など環境負荷を減らす事業であったり、途上国の貧困撲滅や教育・医療支援など社会的課題を解決する事業であれば、投資家や預金者が収益を得ると同時に、環境問題や社会問題解決につながります。

金融は、お金の出し手にとっての資産運用の手段と考えられていますが、その社会的な意義とは、お金の出し手がリスクをとることで、環境問題や社会的課題を解決する事業や新たな技術に資金が流れ、それが社会の持続可能な発展を促すという役割です。そしてその社会的な意義を達成すると同時に、自分の個人的なリターンにもつながる。しかし、今までの金融は、お金というバーチャルな価値を増やすか、ということに注力し、その金融市場の振る舞いが社会にどのようなインパクトを与えるかについてはほとんど関心を持ってきませんでした。しかし、お金でお金を生むという金融ゲームが肥大化し現実と乖離しすぎたひとつの帰結であるリーマンショックやさまざまな金融不祥事を経て、世界の金融機関は自らの社会的責任や社会的存在意義を考え直すようになりました。加えて日本の場合は、東日本大震災も広く金融機関が社会に果たす役割を再認識するきっかけとなったのです。そして2011年11月には、持続可能な金融行動原則(21世紀金融行動原則)が、策定されて、銀行、証券、運用、保険、リース会社など含め180以上の金融機関がこれに署名し、金融業務において持続可能性の観点を組み込むことに同意しました。

しかし、ここまで金融業界が何もしていなかったわけではありません。多くの金融機関は、規模は小さいものの、CSRの一環としてすでに環境や社会に配慮した商品サービスを提供してきました。しかし、Rio+20でもグリーン経済がテーマになるなど、経済メカニズム全体を持続可能な形に変えていこう、という動きが政府間の合意だけでなく、ビジネス界から、また金融業界から自発的に生まれるようになってきたところで、特に筆者自身は、投資の立場からも然様な課題が注目されるようになってきたことは、金融が本気でこの問題に取り組まなければならなくなってきたことを意味すると思います。私は環境や社会に配慮した投資−いわゆる社会的責任投資(Socially Responsible Investment; SRI)−を日本に広げる活動に10年以上携わってきました。本稿では以下に社会的責任投資について、その意味と今までの経緯、そして今後の可能性について述べていきます。

2.社会的責任投資(SRI:Socially Responsible Investment)とは

従来、社会的責任投資(SRI)とは、宗教的理由や個人的倫理感や社会運動的発想にもとづいて、たばこやアルコール、武器などの特定の産業にかかわる企業や、アパルトヘイト時代の南アフリカ、軍事政権下のミャンマーなど、人権上の問題があるとされた国と関連する企業などを投資対象から排除する、ニッチな投資手法とされてきました。

しかし、最近では、投資判断の際に、個人的倫理観に基づかなくても、企業の環境、社会的側面を評価考慮する投資と理解されるようになってきています。そしてその名称もSRIからSを省いた責任投資(RI)とか、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)を考慮する投資=ESG投資などと称されることが増えています。またSRIと称しても正式にはSustainable and Responsible InvestmentとSをSocialからSustainableに置き換える投資家も増えてきています。
注)ただし、混乱を避けるため、本稿では、基本的に投資プロセスに環境・社会・倫理やコーポレートガバナンスの側面を加味する投資手法をSRIと表現する。

この要因としては、@従来のSRIが宗教や社会活動家の投資手法とされ、主流派の投資家に受け入れにくかったこと A宗教的価値観や倫理観だけではなく、より精度の高い投資評価をするために環境や社会を考慮する必要があると考える投資家が増えていること B地球環境問題自体が一部の環境主義者だけが気にするテーマではなく、人類共通の脅威として経済社会に広く影響を与えることが認識されてきたことなどがあります。

特に、Aの考え方は、欧米の公的年金を中心に幅広く支持されるようになり、持続可能な金融の流れを後押しする大きな力となってきています。



3. SRIの系譜

ここで、簡単にSRIの歴史をふりかえってみましょう。実はSRIは異なる理由や背景のなかで広がってきたのです。 SRIの始まりは、先ほど述べたとおり、宗教上の倫理的動機から始まっています。米国で1920年代に、キリスト教会の資金を運用する際に、たばこ、アルコール、ギャンブルなど、教義から許容しがたい業種を投資対象から外したことが発端とされています(1) 。こうした特定の会社や事業を排除するSRIの方法はネガティブスクリーンによる運用と呼ばれます。

その次の流れは社会運動としてのSRIです。第二次世界大戦後そして1960年代以降の米国では公民権運動、反アパルトヘイト運動や反戦運動などの社会運動が盛り上がりましたが、こうした社会運動の一手段として株主行動が注目されるようになりました。株主行動とは、株主として企業に社会的な課題について取り組むよう働きかけることです。たとえば1969年にはベトナム戦争で使われたナパーム弾を製造しているダウケミカルに対して、ナパーム弾の製造中止を求める株主提案が行われました。また著名な消費者運動家であるラルフ・ネーダー氏を中心とした社会運動家グループは、GM(ゼネラルモーターズ)の1970年の株主総会で、取締役会の多様性の要求と、社会的責任についての監査・忠告を行う株主委員会の創設という2つの株主提案を、翌1971年にはアパルトヘイト政策を行っている南アフリカ共和国から撤退を求める株主提案を提出しました。これらは株主総会で否決されたものの、GMは結局サリバン牧師を初の黒人取締役として任命し、公共政策委員会を設立し、ネーダー氏の主張を一部受け入れる形となりました。

このように企業の行動に影響を与える「株主行動」は、最近ではエンゲージメントといわれ、株主提案だけでなく、経営層と直接に面談して企業行動を変えていくなどの手法は、欧米の公的年金を中心に広く活用されています。特にインデックス運用をしている場合は、問題のある企業がそこに含まれていても売却できません。そこで、株主の力を使って企業行動を変えることで、投資家の社会的責任を果たすという考えです。

そして3番目の「企業価値評価に環境や社会などCSRの観点が必要」という考え方は比較的最近のものになります。これは1990年代に広まってきた「企業の積極的な環境対策は、コストではなく企業価値にとってプラスの投資」という考え方を反映しています。90年代までは、積極的な環境対策は企業にとって「余分なコストをかけること」すなわち「企業価値にマイナス」と考えられていました。しかし、90年代に入りISO14000などの環境マネジメントシステムを導入する企業が急増するに従って、環境対策の推進は結局効率性・生産性向上につながるという認識が広がり始めました。例えば省エネや歩留まり向上やデザイン変更による省資源も、エネルギー消費や廃棄物という環境負荷を削減すると同時に、エネルギーコストや原材料コスト低減につながります。また、ビール粕など植物性廃棄物を肥料などに商品化すれば、廃棄物コストの削減と売上への貢献が期待できます。また低燃費車や、省エネ家電、エコハウスなど、環境が多くの製品において競争力の源泉となっています。

こうした環境の取り組みだけでなく、2000年以降頻発した食品の安全性問題、工場の爆発事故、内部告発による不祥事の発覚、エンロン事件、途上国の下請け工場での児童労働の発覚など、様々なCSRに関わる問題は、企業活動そのものやブランド価値に影響を与えることが明らかになってきました。また、働きやすい職場環境を整備し、多様なバックグラウンドを持つ社員の能力を活用するダイバーシティの取り組みは、優秀な従業員を集め生産性をあげ、活力を高めることにつながるという認識もほぼ常識となりつつあります。このように企業のさまざまな社会的側面も分析評価し、ホリステイック(包括的に)企業評価に含めることが投資判断上にも重要だと投資家自身も考えるようになりました。

具体的な投資手法としては、企業の環境対応、ダイバーシティの取り組みなど、それぞれの側面における取組内容の評価を財務情報と組み合わせて、いずれにおいても優れている企業を選択するというポジティブスクリーニングがあります。さらに、先に述べた株主行動をとりいれるケースもあります。このような取り組みは宗教や社会運動からのSRIとはその動機が違うということで、SをとってRI責任投資、と呼ぶことも増えています。

最後に、投資家がこうした取り組みを行う背景には、株主責任・投資家責任の自覚ということがあります。CSRを推進することが社会にとり望ましいのであれば、投資家が企業を通じて彼らのCSRの取り組みを推進させ、あるいは社会にプラスのインパクトを与えることは、広い意味での株主・投資家責任です。また、年金基金の株式保有が増えて株主としての存在感が増す中で、年金基金とりわけ公的年金基金には、彼らのミッションとして彼らの投資行動が与える社会的影響について責任を持つべきである、という考え方も共感されるようになってきました。さらに寄付を行う財団などでは、こうした投資の判断に実際に社会に与える影響を大きく考慮すべきであるという発想から、インパクト投資と表現する投資家も増えています。

以上のことをまとめると、現在SRI投資家には上述の4つの立場があることがわかります。歴史的に見れば一番目の宗教家と二番目の社会運動家がSRIを主に支えてきた投資家ですが、90年代後半以降にSRI市場が急拡大した最大の要因は「CSRが企業評価に必要」と考える投資家が増え、SRIが主流化してきたことにあります。またリーマンショック以降は、投資家としての責任を自覚する投資家も増えています。さらに、投資対象となるのは株式だけではありません。最近では、債券を使ったインパクト債券、グリーンビルなどに投資する不動産投資、未公開株への投資など、投資対象も広がってきています。

4. 国連責任投資原則(PRI: Principles for Responsible Investment)

SRIを主流化する大きな推進力となったのが2006年に発表された国連責任投資原則(PRI: Principles for Responsible Investment)です。これは、2006年4月にコフィ・アナン国連事務局長(当時)の発案によって、国連グローバルコンパクトと、国連環境計画金融イニシアチブが協同で策定した原則です。この原則策定の考え方が示されている前文を以下に示しましたが、投資家としての社会に対する責任が明確に謳われていることが分かると思います。責任投資という考えを最初に提示したのもこのPRIです。個人投資家とは異なり、年金基金などの機関投資家は個人的な倫理を動機にしたSRIを行うことが受託者責任義務違反と見なされてしまいます。しかし、ESGの要素を投資プロセスに考慮するRIは、より精緻な企業評価に結びつくので、逆に受託者責任上必要である、とここでその解釈を180度変えている点も注目されます。この原則がよりどころとなって、機関投資家の立場からもESG投資を推進しやすくなりました。2012年8月現在で欧米の公的年金などを含め1099の機関がこれに署名しています。

PRI前文

私たち機関投資家には、受益者のために長期的視点に立ち最大限の利益を最大限追求する義務がある。 この受託者としての役割を果たす上で、(ある程度の会社間、業種間、地域間、資産クラス間、そして時代毎の違いはあるものの)環境上の問題、社会の問題および企業統治の問題(ESG)が運用ポートフォリオのパフォーマンスに影響を及ぼすことが可能であることと考える。 さらに、これらの原則を適用することにより、投資家たちが、より広範な社会の目的を達成できるであろうことも認識している。(太字筆者) したがって、受託者責任に反しない範囲で、私たちは以下の事項へのコミットメントを宣言する 。 (2)

5. SRI市場動向

このSRIの市場規模ですが、発祥の地米国では1995年から2009年の14年間で、6,400億ドルから3.1兆ドルと5倍弱に拡大しています。現在の主要な投資家は公的年金で、全体の74%を占めています(出所:Social Investment Forum Foundation “2010 Report on Socially responsible Investing Trends in the United States”)。欧州では、2002年から2009年の8年間で、3,360億ユーロから4兆9,860億ユーロへと15倍弱に増えています(出所:Eurosif “European SRI Study 2010”)。こうした市場拡大の背景には、投資家の意識や行動変化だけでなく、法規制による後押しもあります。欧州のSRI市場の急成長の契機となったのは2001年の英国の年金法の改正が挙げられます。これは、英国の年金基金に対してその運用方針において、環境や社会倫理を考慮しているかどうか、していないいならなぜかを開示させることを義務化したものです。SRIの義務化ではなく、情報開示の義務化という間接的な取り組みですが、この改正の1年後には7割以上の年金基金が運用方針に環境社会への考慮を明記するなど、極めて効果が高かったため、同様の法規制が、スウェーデンなどでも行われました。また、クラスター爆弾を禁止するオスロ条約が発効したことで、クラスター爆弾関係企業を投資対象から排除する投資が増えたため、これもSRI市場拡大を後押ししています。

一方で日本の市場ですが、2012年6月現在でSRI型投資信託の残高が2,200億円、ワクチン債などの社会貢献型債券が累計販売で6,000億円強と、2つ合わせても1兆円に満たないレベルです(出所:社会的責任投資フォーラム(SIF-Japan))。これは、欧米で主流の公的年金がほとんど参加していないためです。2010年12月に、労働組合総連合会(いわゆる連合)が、年金基金など労働者が拠出したお金をワーカーズキャピタルと定義し、ワーカーズキャピタルの所有者の社会的責任としてSRIを推進していくというガイドラインを公表し、公的年金や参加の企業年金への働きかけを始ました。3.11があったため、その後の動きはゆっくりではありますが、公的年金の間では、SRI導入を検討し始めたところが増えており、今後の展開が期待されます。

ちなみに日本では、1999年に環境に配慮した初の金融商品としてエコファンドが発売されてから、SRIという言葉が市民権を得てきましたが、通常日本で理解されているSRIは、主に投資対象銘柄の環境対応評価を財務評価に加味してポートフォリオを構築した投資信託、いわゆるエコファンドやSRIファンドを指すことが多いです。これらのファンドでは、欧米で盛んなエンゲージメントは行われておりません。一方で、途上国の子どもにワクチン接種するためのワクチン債や、マイクロファイナンスボンド、エコボンドなど社会的課題解決のための債券投資を、インパクトインベストメントという考え方が日本でも浸透し始めたおかげで、投資対象金融商品も株式だけでなく、債券や、不動産、未公開株などへ広がりをみせています。

6. 持続可能な金融にむけて

世界の金融市場は現在極めて不安定な状況にあります。しかし、ここで紹介したように、当初は宗教的倫理感から始まったSRIですが、社会運動、投資判断、そして投資家責任と社会の変化を反映して多様化し、参加者の層も厚くなっています。またSRIの中心的主体は公的年金ですが、いわゆるプロの運用だけでなく、ネットを通じて市民が直接自分の支持したいプロジェクトや会社に出資や融資を行うクラウドファンディングが米国や英国を中心に急速に広がっています。米国で2009年4月に開始されたKickstarterは3年間で2万のプロジェクトに180万人から2億ドルの資金を調達しています。また日本でも、ミュージックセキュリティーズは、老舗の酒蔵や、無農薬米、被災地の復興などの事業に出資するプラットフォームをネット上で構築、すでに200本近いファンドを提供しています。市民発電所といわれる市民の手による市民風車や太陽光発電、小水力などの再生可能エネルギーへ投資する仕組みも様々な地域から生まれています。今家電を買うなら省エネ家電が当たり前です。一人一人のお金はわずかだったとしても、みんなが当たり前のように、資金運用の際にネットを通じた小口の支援型融資に加えて大手の金融機関や自分の年金基金で持続可能な運用を選ぶ。それは、間違いなく持続可能な社会構築への大きな推進力となるでしょう。

(1)エイミードミニ著(山本利明訳)『社会的責任投資』226p 木鐸社 2002によれば、理論的なバックグラウンドは、18世紀に始まったとされる。実際の金融商品としては、1928年にPioneer Fundが設定されている。

(2)http://www.unpri.org/principles/japanese.php


2012年09月01日掲載
担当:奥村、金田、釜我、迫田、菅野、高橋、濱
ウェブ掲載: 斉藤 亮