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第15回SDGs勉強会 「難民支援におけるテクノロジーの可能性 〜難民が直面する課題と現場で使われる テクノロジー〜」

2020年11月7日実施 

国連フォーラム関西支部 第15回SDGs勉強会

難民支援におけるテクノロジーの可能性

〜難民が直面する課題と現場で使われるテクノロジー〜

開催報告

文責:纐纈 響七

2020年11月7日(土)に、オンラインにて、『難民支援におけるテクノロジーの可能性〜難民が直面する課題と現場で使われるテクノロジー』を開催致しました。そのご報告をさせて頂きます。

【イベント概要】 

《企画背景》

 近年、先進国でのテクノロジーの進歩は目覚しく、スマートフォンやパソコンは、生活や仕事、授業では必須アイテムになってきており、その影響は先進国だけなく途上国にも浸透し始めています。UNHCRのヨルダンの難民支援では、色彩認証が取り入れられ、安全性や支援の効率性から新たな支援の形態として期待されており、特に難民キャンプでは、テクノロジーを活用した難民のコミュニティの成立や外とのコネクションが重視されています。しかし、このようなテクノロジーを用いた新しい支援を取り入れる上で、その利点のみならず起こりうる問題点にも目を向けていかなければなりません。

 そこで、国連フォーラム関西という国際協力に関心を持つ若者が集うプラットフォームでは、新たな支援の形態としてのテクノロジーの好事例や可能性を知ると同時に、その課題点やどのように調和をとっていくのかを考え、新しい国際協力の在り方を考える、勉強会を企画します。

《企画目的》

対象:難民支援やテクノロジーによる途上国支援に関心がある方

企画目的:

 難民支援の円滑な自立と支援には、テクノロジーが使われ始めており、その重要なワードとして「難民の接続性」ということがあります。「難民の接続性」とは、難民コミュニティーだけでなく、難民コミュニティーや難民キャンプの内外問わず、支援やサービスがつながることを意味します。テクノロジーが世界の人道支援や難民のコミュニティー開発に寄与していることを理解し、企画終了後も難民問題への関心を引き続き持ってもらうため、以下のことを目的として企画しました。

 

  1. 難民支援×テクノロジーという新しい支援の形態が、どのようなものを用いてどのように支援がなされているのか、外との接続性を意識した支援とはどのようなものなのか、という難民支援の形態や難民支援組織が直面する課題点の理解

  2. テクノロジーの支援を理解した上で難民コミュニティーの接続性を踏まえて、どのような課題に、どのようなアプローチで支援ができるのかを考えます。また、難民支援におけるテクノロジーの活用や民間セクターとの関わりがどのように変化してきたのか、また今後の在り方を考える。

 

《イベントプログラム》

【日程】2020年11月7日 13:00~15:00(12:45開場/15:00〜ネットワーキングタイム)

【場所】Zoomにて実施

【イベントプログラム】

オープニング

  国連フォーラム紹介、タイムライン説明

第1部

- 講演 守屋 由紀 

 「難民支援とテクノロジー ~世界の難民問題~」

第2部

- グループディスカッション

- グループディスカッションの共有

閉会

- ゲストによる講評

- クロージング

《ゲスト》
守屋 由紀氏 国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所 広報官
東京生まれ。幼少期を香港、メキシコ、アメリカで暮らす。大学卒業後、総合商社、法律事務所などを経て、1996年よりUNHCR駐日事務所。2007年より広報官。世界の難民・避難民などへの理解を促し、UNHCRの活動を日本に紹介することに従事。東京をベースに、アフリカやアジアなど18カ国の現場を訪問、直近の訪問地はコロンビア。

【開催報告】

勉強会当日は、ゲストの方の講演とディスカッションの2部構成で行いました。

ゲストは、UNHCRの守屋様をお呼びして、難民支援におけるテクノロジーの活用の現状とその成果について説明していただきました。

ディスカッションでは、事前に配布した事前資料を参考に難民支援における問題点を深堀したのち、「その問題をテクノロジーによってどのように解決していくか」そして、そのテクノロジー支援のメリット・デメリットについて支援のアプローチについて考えました。

《第1部 守屋由紀氏の講演》

第1部では、守屋様から難民支援におけるテクノロジーの活用をテーマにご講演頂きました。

はじめに、守屋様の活動についてご紹介頂きました。難民を取り巻く状況は年々悪化しており、人類の1%が移動を余儀なくされている、と守屋様は指摘します。このような人類の課題ともいえる難民問題に対して、広報官である守屋様は、様々な人にUNHCRの活動を知ってもらうため、メディアや著名人など発信力のある方々を巻き込んで活動されてきました。

COVID-19の影響は、難民支援にも影響を大きく与えていると守屋さんは述べます。世界中が困難な状況にある中、UNHCRへの支援額が増加したというエピソードは印象的でした。

◆守屋様からご紹介いただいたポータルサイト

“Operational Portal -Refugee Situations-”<http://data2.unhcr.org/en/situations>

UNHCRをはじめとした国連機関やNGOによるオペレーション情報、教育、水などの詳細なデータが掲載されています。

次に、ヨルダンの難民キャンプの実際の事例をもとに、難民支援におけるテクノロジーの利用についてご説明いただきました。

Iris scanning biometrics 虹彩認証

自分の虹彩を合わせることによって、自分の電子口座にアクセスし、現金を受け取ることができます。ヨルダンは、パレスチナ難民を受け入れている国ですが、国境は閉鎖せず、難民を受け入れていました。多くの難民に対してどのようにしたら的確な支援ができるかを考えていました。

虹彩認証によって、奨学金を受けることもできます。奨学金を受け取ることによって、600人の学生に教育の機会を提供しています。スマートフォンにグランドが入ってきて、その金額で教育を受けています。

太陽光発電

砂漠のようなヨルダンのザアタリ・キャンプでは、IKEA財団からの寄付によって広大な太陽光発電をおこな合っています。電気が通っているテントやプレハブの近くに街頭がありその街頭が電気を奪っていたため、電気不足が深刻だったことが導入のきっかけです。

難民の自立につながります。自分たちの生計を立てて、人間の尊厳を高めるような成果もできました。また、安定した電力が供給できることにより、そのキャンプの運用費を削減することもできました。

テクノロジーの進歩(AIや統計データ)を用いた支援は今後も重要視され、UNHCRでは、イノベーションや革新に力を入れています。また、色々な現場でプロジェクトを組んでのイノベーションもあります。

《第1部 質疑応答》

質疑応答では、以下のようなお話を聞くことができました。

― 日本企業はどのように協力しているか

守屋様からは、UNHCRが実際に企業と関わっている例を挙げてくださいました。ユニクロで有名な(株)ファーストリテイリングとグローバル・パートナーシップを結び、難民の方々への服の提供を行っている事例をご紹介頂きました。要らなくなった服の回収から現地での提供まで一貫して取り組まれ、社員が現場を訪れてフィードバックを社内に持って帰るなど、普段の生活では気付かない企業の取組みを知ることができました。また、UNHCRの機材としてトヨタの車が多く使用されていることに言及されました。機材の提供のみならず、メンテナンスの指導がなされていることで、長期的に使用することができ、様々な現場で活用されていることをお話頂きました。

― 難民キャンプ外に住んでいる難民をターゲットにしたテクノロジーを用いた支援について

難民の多くは、キャンプではなく都市や町などで暮らしており、そのような都市に住む難民の人々への支援が難しいことに言及されました。ヨルダンの難民の方々は七割以上の人が携帯を持っているため、スマホを通じて情報を提供しているとお話しくださいました。一方、現金給付による支援の重要性が高まってきていることを教えて頂きました。現金支給による支援であれば、自身の生計を主体的に考えることができるほか、それぞれのニーズに合ったものを地元のマーケットで購入するといった、経済活動に参加することができます。このように、現金給付の支援は、難民の自立促進や受け入れコミュニティへの還元にもつながるという点で重要性が高まっていることを学びました。

― 日本の難民・移民政策について

日本における外国人労働者の受け入れなど、移民以外のかたちで受け入れを行っているような状況に言及され、移民や難民の政策を進めるには世論の声・世論の理解が影響を与えるのではないかと述べられました。また、外国籍の人の割合が高い新宿区の事例を挙げ、移民政策を進めるうえでは多様性の理解が必要ではないかとお話頂きました。また、〇〇人として括る報道や、〇〇難民というワードを使うことも難民や移民への誤解を招きかねないと指摘されました。

― 課題が起こっている現地企業とのテクノロジーの活用における協力について

外からの力に頼らず、現地の人や物などのリソースを用いて課題などに取り組んでいくことの重要性に言及され、JICAなども取り組んでいる自主性を促す取り組みに言及されました。さらに、「テクノロジーと人」や「人の活動」をどのように融合させるかがテクノロジーの活用においても重要だと述べられました。

《第2部 グループディスカッション》

今回のグループディスカッションでは、参加者の皆さまにグループに分かれて頂き、難民キャンプの方々や難民支援において直面する課題や解決策となるテクノロジーについて考えて頂きました。このグループディスカッションでは、難民の方々が直面している課題をテクノロジーでどのように解決するか、そしてそのテクノロジーの可能性やテクノロジーを用いた支援の課題について考えました。

<A班>

A班では、教育をテーマに議論しました。難民として国を移動している間に「学びのギャップ」が生まれること、難民が居住しているところから学校が遠いことや、親が経済活動を重視することで「子どもの学習機会」を奪ってしまうという問題が挙げられました。

これに対するテクノロジーを使った解決策として、AIの活用やタブレットの使用などのアイディアが挙りました。AIによって生徒に応じたカリキュラムを選定・理解度の測定をすることで、学びのギャップを把握しつつ対応できることや、タブレットで場所の制約なしに教育機会を創出できるというメリットが考えられました。

一方で、難民キャンプではネットワーク状況が不安定であることやインターネット料金を払えない難民への教育機会などの意見も生まれ、それに対してどう解決していけばよいかなどと活発な議論が行なわれました。

<B班>

B班は、雇用促進・エンパワーメントをテーマに議論を進め、特に「難民キャンプに雇用がない」「雇用があっても、その人の教育レベルと合わない」ことにより、生きがいや自立心につながらないという課題が挙がりました。そこで、雇用を求める世界の企業と教育レベルの高い難民をマッチングし、適切な人に適切な仕事を提供するクラウドソーシングサービスというアイディアが挙がりました。本アイディアにより、難民の方はキャンプにいながら自尊心の持てる仕事に携わることができる反面、雇用する企業側の難民の状況への理解や文化、考え方への理解をどう深めていくかなど、ソフト面に対する配慮が必要になるという意見も挙がりました。

<C班>

C班は、自立促進・エンパワーメントについて議論を進めました。難民キャンプにおける教育にフォーカスを当て、学歴証明書がもらえないことを課題に上げました。そこで、「ネットの環境を整える」「オンラインで学歴証明書」が発行できるようにするなどが挙がりました。そこでSAP デジタルバッチに焦点をあてて、どのような仕事を経験したきたのか、学歴や資格がオンラインで発行できるようにするテクノロジーを提案しました。そのため、dのような企業が行うのか、漏洩した場合のリスク管理などが懸念点として挙げられました。

<D班>

D班は水問題・衛生環境について議論しました。下水処理システムの不整備から発生する公衆衛生の問題や、農業に関心がある参加者からは農作物への影響などが課題としてあげられました。これらの課題を解決するためには盤石な水の循環管理システムが重要であるため,

ITを用いた24時間体制の管理や、VRを用いた修繕技術訓練などがアイディアとしてあげられました。コスト等を考えると実現可能性はまだまだ低い一方で、長期的な視点で構築していくことの重要性も意見としてあげられました。

<E班>

E班は、自立促進をテーマとしてディスカッションに取り組みました。難民の方々が直面している問題として、生計を立てるための市場がないことや経済活動を行うための身分証明がないこと、経済制裁により物資が届かないことなどが問題点として挙げられました。中でも、地方においては農業による自給自足が行われていることに着目し、どのようなテクノロジーが農業による生計手段確立に役立つかを考えました。ドローンを用いた農薬散布や稲の生育状況や土地の乾き具合などを調べるための写真によるデータの収集といった実用例のあるアイデアから、LEDを用いたネット環境の構築といった未来の可能性に言及したアイデアまで様々な意見が交わされました。

《クロージング》

講評

最後にグループディスカッションを踏まえ、ゲストの守屋様から講評を頂きました。

― 今回の勉強会の改善点などは、ありますか。

グループディスカッションがもっと長くてもよかったと思います。みなさんのバックグランドから出される様々なアイディアがとてもいいなって思いました。コロナの中で、今までのことを変えるチャンスだと思います。

― 特に印象に残った新しいテクノロジーなどはありますか。

特にデジタルバッジのアイディアは革新的なものだと感じました。日本にきた難民の人が自分の立場を証明するものがないということがあります。デジタルバッジがあれば、証明されるのかと思う一方セキュリテーとの兼ね合いなどを何かARVRができるかもしれないです。そもそも難民問題を防ぐテクノロジーを作れるかもしれない技術革新があるかもしれないです。

各班に様々なアドバイスをくださり、参加者の質問にも答えてくださった、守屋様、西村様に心より感謝申し上げます

《参加者の声》

参加者の皆さまからのアンケート結果を抜粋してご紹介いたします。

  • 講演、質疑応答、グループディスカッションの時間配分が丁度よく、最後まで楽しめました!
  • いつも通り、ディスカッションタイムがしっかり設けられており、トピックについて深く学ぶことができました。
  • 同じグループの方の知識が豊富で、勉強になることばかりでした
  • さまざまなバックグラウンドある方々から幅広く学ぶことができた。
  • 自分にとっては少し遠いテーマ(テクノロジー)でしたが、いろいろなアイディアがでて、非常に刺激的な時間でした。新たな知見や考え方を得て、また自分に何ができるかを考えるきっかけとなりました。
  • 皆さんとの意見交換や、発表の仕方がとてもうまく、とても参考になりました。色んな分野の方がいる中で、自分の専門性や経験、関心分野について、短い時間の中でわかりやすく論理的な説明をする力が必要とわかった。日本の難民についてももっと幅広く知ってもらえる方法を考えていきたいと思った。

この度「第15回SDGs勉強会「難民支援におけるテクノロジーの可能性〜難民が直面する課題と現場で使われるテクノロジー〜」」にご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。

今回残念ながらご参加頂けなかった皆さまも、次回以降の勉強会のご参加をお待ちしております。

国連フォーラムは引き続き皆さまに有意義な「場」を提供できるよう努めて参ります。今後とも、国連フォーラム関西支部をどうぞよろしくお願いいたします。

 

また、国連フォーラム関西支部のFacebookグループページホームページでは、国連や国際協力に関する情報共有を行っております。関心のある方はぜひチェックしてみてください!

世界人道デー企画:自然災害に伴う人道危機の現在

世界人道デー企画「自然災害に伴う人道危機の現在」~脅威に立ち向かうOCHAとJICAの活動とは~

2019年 8月11日  実施

世界人道デー企画「自然災害に伴う人道危機の現在」
脅威に立ち向かうOCHAとJICAの活動とは

開催報告

8月11日(日)に、関西学院大学大阪梅田キャンパスにて、『世界人道デー企画「自然災害に伴う人道危機の現在」〜脅威に立ち向かうOCHAとJICAの活動とは〜』を開催致しました。そのご報告をさせて頂きます。

【イベント概要】

《企画概要》
日時 2019年8月11日(日)13:00~17:00
場所 関西学院大学 大阪梅田キャンパス 1004教室
共催 国連人道問題調整事務所神戸事務所、独立行政法人国際協力機構関西センター、国連フォーラム関西支部
ゲスト

・吉田明子 氏
2007年 国際連合人道問題調整事務所(OCHA)入職。2018年11月 OCHA神戸事務所 所長就任。アジア太平洋地域事務所、ニューヨーク本部、 フィリピン事務所、組織変革実施チーム、機関間常設委員会(IASC)事務局、各国での人道支援を経た後、現職に就任。

・金塚匠 氏
2017年4月 JICA地球環境部 環境管理グループ 配属 2017年8-10月 JICAタイ事務所 OJT 2019年5月 JICA関西 業務第一課 異動 学生時代は土木工学、特に都市洪水に関する研究し、洪水解析モデルの最適化問題に取り組む。 JICA地球環境部ではタイ・カンボジア・スリランカの環境問題(気候変動・廃棄物・下水道)に関する技術協力事業を担当。 JICA関西センターでは農業・都市交通・交通安全・災害復旧等に関する研修事業を実施中。

内容 1.オープニング
2.イントロダクション
3.講演
4.質疑応答
5.個人ワーク
6.グループディスカッション
7.意見の共有
8.クロージング
9.ネットワーキングタイム
《企画背景》

 人道に関する問題が大規模化・長期化・複雑化していることから、人道支援ニーズが国際社会で急速に高まっています。紛争及び自然災害が原因で、2018年には148の国と地域で新たに約2,800万人が被害を受け、世界で人道支援を必要とする者が1億3000万人以上存在しています(2019年4月現在 OCHA)。さらに、2018年に新たに発生した自然災害による国内避難民は、紛争を起因とする避難民よりも多い約1,700万人であることから(IDMC 2019)、自然災害も今日における人道危機を生み出す大きな原因の1つであると言えます。

 第49回世界経済フォーラムでグテーレス国連事務総長が、「人類が現在直面する最も重要な課題は気候変動である」と強調したように、気候変動や自然災害がグローバルイシューとして国際社会で活発な議論が近年交わされています。特に地球温暖化防止の国際枠組みであるパリ協定が本格的に始動する前年である2019年は、パリ協定加盟各国を集めて地球温暖化対策を議論する気候サミットが開催されるなど、非常に重要な年です。

 そこで、本企画では特に「自然災害」に着目し、自然災害に伴う人道危機の課題に関して、国連及び政府開発援助の実施機関の活動を発信することで自然災害と人道問題について参加者の関心を高めることを目的としています。

 

《目的と到達目標》
  1. 「人道への課題 Agenda for Humanity」、中でも「人道支援のニーズを減らす」こと、さらには支援ニーズを減らすために、人道危機の影響を受けやすく、かつ見落とされやすい女性や子ども、難民・避難民のような脆弱者に目を向けることが不可欠であるため、今回のテーマである自然災害に伴う人道危機に脆弱である人たちへの理解を深める。
  2. 人道危機・支援の事例に基づく議論を通して、人道支援の包括的なアプローチについて理解し、参加者が自身の関心や専門と照らしながら、自分にできる関わり方を考える。
  3. 現在の日本においても自然災害が脅威となっている現実から、将来の持続可能な社会の実現のために、世界で深刻化する自然災害と人道危機を「自分事」のように捉え、当問題解決に向けて自分なりの考えを発信できるようにする。

 

【開催報告】

 オープニング
  • 久木田氏より開会のご挨拶
  • 共催団体紹介(OCHA神戸、JICA関西、国連フォーラム/国連フォーラム関西)
    • OCHA神戸
       国際連合人道問題調整事務所(OCHA)は、自然災害や紛争によって人道危機に晒された人々の生命と尊厳を守るため、国際的な人道支援活動を調整しています。支援を必要とする国ごとに様々な人道ニーズや優先順位を把握し、包括的かつ戦略的な対応計画を取りまとめる作業を担当するのがOCHAの役割です。すべての人が、すべての人のために、効果的で、人道支援の基本原則に則った活動を行うことを推進しています。

       OCHA神戸事務所は2002年に設立され、日本政府や国内外の人道支援団体と連携を強化することで、主に海外での緊急人道支援活動やそのための備えをサポートしています。また、OCHAの、日本におけるスポークスパーソンとしての役割も担っています。
    • JICA関西
       国際協力機構(JICA)は、「信頼で世界をつなぐ」をビジョンに掲げ、開発途上国への国際協力を行う日本のODA(政府開発援助)実施機関です。技術協力や、有償資金協力、無償資金協力、民間連携や市民参加協力、国際緊急援助など様々なメニューでODAを実施し、開発途上国が抱える課題に取り組んでいます。

       JICA関西は、「途上国と関西を信頼でつなぎ、ともに『持続可能な開発目標(SDGs)』の達成に貢献します」をミッション・ステートメントとし、防災をはじめとする関西圏の多彩なリソースを生かした研修事業や民間企業の途上国への海外展開支援、市民参加協力事業など、地域と途上国を元気にする国際協力を推進しています。

 

  • ゲスト紹介

▲ 司会は国連フォーラム関西支部の黒崎が務めました。

 本企画では、ゲストとしてOCHA神戸より吉田明子氏、JICA関西センターより金塚匠氏をお迎えしました。
 吉田氏は、2007年に国際連合人道問題調整事務所(OCHA)入職され、2018年11月から現在においてOCHA神戸事務所 神戸事務所長に就任されました。
 金塚氏は、2017年4月 JICA地球環境部 環境管理グループに配属され、2019年5月から現在までJICA関西 業務第一課 国際防災研修センターに所属されています。

 

  • イントロダクション(企画背景や自然災害と人道危機の関係性について)

 冒頭のイントロダクションでは、国連フォーラム関西支部の森田が「自然災害と人道危機」の関係性やその概要について地球温暖化の問題を交えながら、説明を行いました。

▲ イントロダクションでの紹介は、国連フォーラム関西支部の森田が務めました。

 世界人道デーは、2005年8月19日を「人道支援を必要とする人々や、支援に携わる人々について考える日」として国連総会にて定められています。①進行する地球温暖化に伴う自然災害の暴力化、②世界で強制移住(displacement)を生み出すなど、自然災害が深刻な人道問題にまで発展していること、③近年日本においても自然災害が猛威を振るう事態が挙げられることより、今回の世界人道デー企画では「気候変動と人道支援」に焦点を充てて開催することとなりました。

 IPCC第5次報告書では、産業革命期と比較して、世界の平均気温が既に約1℃上昇しており、最も地球温暖化が進行した場合、2100年までに最悪で約5℃度上昇すると発表しています[1]。また、国連は気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする目標を掲げていますが[2]、2018年IPCC特別報告書は、2030年に1.5℃の上昇を達成する可能性があると指摘しています[3]。さらに地球温暖化によって海水温が上昇し、最大風速54m/s以上の強い台風の発生率も高くなる[4]と予想されています。

 様々なリスクが進行する地球温暖化によって表面化してきます。平均気温1℃の上昇が熱波や洪水などの異常気象による被害を増加させるとも言われており、実際に、世界の自然災害の発生数も1980年から2018年までに右肩上がりの状態である[5]など、気候現象や風水災害の気象に関連する自然災害は増加しています。また、2018年に新たに発生した国内避難民の要因は、紛争/暴力よりも、自然災害が原因で避難する人が多いと報告されています[6]。このように自然災害は、今日における人道危機を生み出す大きな原因であると言えます。

 昨年を象徴する漢字に「災」が採用されたように、日本も2018年は災害の脅威を目の当たりにする年となりました。西日本豪雨や台風21号などが原因で、2018年の自然災害による農業被害額は、東日本大震災があった2011年に次ぎ、過去10年で2番目の5,679億円でした[7]。今後も自然災害が増加することで、強制移住、ジェンダーによる暴力行為、家族の離散、雇用問題[8]など複数のリスクが国内外で多発することも考えられます。自然災害による人道危機の悪化を最小限にとどめるためにも、人道への課題(Agenda for Humanity)4「届ける支援から人道ニーズ解消に向けた取り組みへ」が重要となってきます。


[1] IPCC 第5次評価報告書 第1作業部会[http://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg1_overview_ presentation.pdf]
[2] 2015年パリ協定第2条1項(a)
[3] IPCC 1.5℃特別報告書 詳しくは環境省HPを参照。[https://www.env.go.jp/press/106052-print.html]
[4] 当銘寿夫(2019)「当たり前になっていく『異常気象』地球温暖化は誰が止めるのか」『Yahoo!ニュース 特集』ヤフー[https://news.yahoo.co.jp/feature/1337]
[5] Munich Re, Loss event worldwide 1980-2018. As at August 2019.
[6] Internal Displacement Monitoring Center (IDMC). 2019. DRID 2019 Global Report on Internal Displacement. p.1.
[7] 平成30年農業白書より。
[8] 自然災害時における人々の保護に関するIASC 活動ガイドラインより一部抜粋。[https://www/brrokings.ed/wp-content/uploads/2016/07/0106_operational_guidelines_nd_japanese.pdf]

 

 講演

講演では、各機関のレジリエンスの強化や開発援助など、自然災害に伴う人道ニーズ解消に向けた取り組みについて話して頂きました。

「自然災害による人道危機 ~早期緊急対応に向けて~」 吉田明子氏

 国連機関の中で、人道問題で大きな役割を担う国連人道問題調整事務所(OCHA)の吉田明子氏によるご講演を頂きました。

▲ OCHA神戸 吉田明子氏による講演の様子。

 はじめに、OCHAの組織について、そして人道支援資金の最近の試みについてお話を頂きました。OCHAは、国連総会決議46/182のもとに設立された国連機関です。国連による緊急人道支援の調整機能の強化を目指しており、支援の調整、アドボカシー、情報管理、資源の動員、政策支援の5つを主軸に活動されています。

 緊急支援のための資金である中央緊急対応基金(CERF)は、大規模な自然災害や紛争が発生した際に、ドナー等からの資金が届くまでの空白期間を埋めるため、緊急人道支援の初期財源として補填することで、被害の発生や拡大を最小限に抑えることを主な目的にしています。各国ドナー等から拠出金を集め、被災者のニーズに応じて、国際機関や援助機関の実施する人道支援プロジェクトに配分しています。

 自然災害の対応には年間15億ドルの人道支援資金が必要と言われますが、必要な資金と予算には大きな開きが存在しており、年々そのギャップは拡大しています。そこで、CERFの資金規模を拡大することによって、このギャップを埋め、さらに、予測される危機に対して早期に対応を行う資金を提供できないか、という案が持ち上がっています。

 干ばつによる食糧危機などが、今日においてモバイルデータの通信量、土壌の状態、栄養失調率などの統計的手法によって、発生の予測可能性が高まっていることから、あらかじめ事前投資することで、危機的状況を回避、あるいは自然災害が発生した際の被害を最小限に留められることも期待できます。また、グテーレス国連事務総長が世界の人道ニーズに応じるために、CERFへの拠出を10億ドルにまで拡大させることを提案しました。これに対して国連加盟国を含め幅広い支持や賛同の声が表明されるなど、CERFの意義は大きいことが分かります。

 実際に2017年のナイジェリア、南スーダン、ソマリアにおける飢餓や2018年サヘル地域おける干ばつに対して、CERFによる早期対応が実施され、その効果も認められています。しかしながら、吉田氏はCERF自体の課題も複数挙げられました。課題には、国連総会の総意、アーリーアクションの定義が曖昧なため、資金提供の決め手が見つかっていないなどが挙げられます。CERFの運営は他団体のコンセンサスが必要であるため、優先順位や金額などの合意の難しさを述べられておられました。

 

「気候変動と自然災害分野におけるJICAの協力」 金塚匠氏

一国の政府組織として、そして日本として行う人道支援について、国際協力機構(JICA)関西センターの金塚匠氏によるご講演を頂きました。

▲ JICA関西 金塚匠氏による講演の様子。

 はじめに、金塚氏の所属するJICAについてのご紹介を頂きました。「JICAは、ただ良いことをするばかりでなく、外交上の手段の一環として、途上国にも日本にもいい影響をもたらすことを目指して事業を行っています」と述べ、2015年に閣議決定された開発協力大綱や独立行政法人国際協力機構法などの基盤となる政府の決定や法律ほか、SDGsなど様々な国際社会の流れを組んで活動を行っている、という国際協力を実施する国の組織としての特徴を紹介していただきました。

 金塚氏は、気候変動は経済活動が大きい先進国のみならず、途上国を含むすべての国が取り組まなければならない問題として認識され、パリ協定という国際枠組みが定められたことや、IPCCの1.5℃特別報告書によると、産業革命以前と比べて気温が上昇しており、2030年から2052年の間には1.5℃上昇することが確からしいと議論されていることを紹介してくださいました。

 このような深刻な気候変動問題に、どう取り組むのか。金塚氏は、2つの方法があると指摘します。第一に、温室効果ガスの排出を減らす緩和策です。再生可能エネルギーの利用や運輸交通、廃棄物管理や農業・畜産業における工夫、森林管理や植林などによりCO2の排出を削減する方法があると述べます。第二に、気候変動の負の影響に備える適応策です。気候変動による自然災害に備えた防災の実施や品種改良など農業分野における工夫、生態系保全や水資源開発、感染症対策等が挙げられます。適応策については、特に途上国が関心を寄せており、JICAも気候変動対策の支援に貢献していると述べられました。例として、バンコク都に対して日本(特に横浜市)の知見を共有し技術移転を行ったり、インドの鉄道建設による公共交通機関への転換で渋滞・車両の減少を通じたCO2削減、また、ベトナムへの資金協力および制度構築の支援や、ラオスに対する気象システム設置の支援を通じた防災協力などをご紹介いただきました。

 自然災害に伴う経済的損失が近年増加しており、その一因は気候変動にあると金塚氏は紹介します。また、それらの影響を受けやすい人は貧困層の人々であり、これらの人は、自然災害に脆弱な場所に住まなければならず、被災しやすく、貧困によりさらなる二次被害を受けやすい状況にあると言います。

 「日本は、支援国の中でも特に自然災害に関する知見があるため、防災分野に関しては日本がリードしています。とりわけ過去20年の二国間協力ではトップドナーとなっています。」JICAでは、様々な事業に防災の知見を取入れ開発協力を行っていると金塚氏は述べます。例えば、タイでの地下鉄建設の際に入口の高さを上げることで、2011年の大洪水の影響を受けることなく地下鉄の運用に成功し、フィリピンでの病院建設の際に沖縄の構造物の特徴を取り入れた設計することで、台風に強い病院運営ができるようになった事例、また、ミャンマーの小学校の建設の際に、1階部分ではなく2階に教室を設置することでシェルターと学校の両方の機能を兼ね備えることができるなどの様々な成功事例を紹介してくださいました。また、JICAでは、脆弱な立場にある女性に対する避難ワークショップの実施や、障がい者を巻き込んだ防災計画の立案、研修の実施を行っていると言います。さらに、緊急時にすぐに資金協力ができる備えを行っており、保険の仕組みの提供や、植林や自然環境保護のための支援も行っていると述べます。JICAでは日本での経験を踏まえて、海外の人道問題、特に災害に関する分野での協力を行っていることが、金塚氏の紹介で学ぶことができました。

 

質疑応答

 質疑応答では、被災地における性暴力の防止やサバイバーへの支援について質問が挙がりました。吉田氏は、被災地の不安定な状況下では様々な事件が発生しやすい傾向にあることを言及したうえで、これに対して、専門領域の国連機関は、早期に対応できるよう開発の分野で、制度の構築やサバイバーへの支援などに取り組んでいることをご紹介いただきました。

 具体的にどのような日本の知見を海外に伝えているのか、そして国内の災害支援や対策に貢献していることはあるのか、という質問に対して、金塚氏は、JICAでは、被災者の心のケアに関する知見や、インフラへの事前投資によって災害のリスクを軽減することができた経験を共有している、と紹介されました。また、日本への貢献については、世界の被災者同士を繋ぎ、似たような経験をした方々で思いを共有することで、心のケアなどに繋げた例をご紹介いただきました。また、吉田氏は、人道支援が必要な緊急事態のもとでは、支援を受ける側の負担も多くなることに言及し、その際に、OCHAは国際社会に伝わるように情報を整理、発信していることを紹介されました。また、「支援の受け入れ側の負担を減らすような話し合いも現在進められています」と述べました。

 様々な分野を含めたプロジェクト実施が必要であると認識されつつある議論を踏まえ、JICAではどのように取り組んでいるのかという質問に対して、金塚氏からは「たとえば気候変動対策室を設け、他分野のプロジェクトであっても、計画策定時には同室に協議を行うことによって、全てのプロジェクトに対して気候変動対策の視点を盛り込めるよう取り組んでいます」とお答えいただきました。

 最後に、人道支援に対する取組みについて、報告書などを通して様々な日本人にもわかるように日本語で発信してほしいという意見が出され、国連機関や国際支援機関のみならず、市民である私たちによる協力の必要性を確認しました。

 

 個人ワーク・グループディスカッション・意見の共有

▲ グループディスカッションの様子。

 個人ワーク及びグループディスカッションでは、サイクロン、地震、干ばつの3つの自然災害の事例が載った情報シートをもとに話し合いました。個人ワークの時間では情報シートを読み込み、配布されたワークシートに記入を進めることで、自身の考えをまとめました。次に、6人程度のグループに分かれ、それぞれが考えたアイデアを共有し、①「どのような人道支援が求められるか」そしてそれらは「誰にとって必要か」、②「人道支援のニーズが解消された理想の状態はどのようなものか」、③「どのアクターが」「どのような取組みをする必要があるか」を議論しました。

 

サイクロン班

 1班では、人口の半分以上が被害を受けたという状況に着目し、「どのように国を再建することができるか」が重要だという意見に至りました。産業を成長させることと貧困率を下げることにより、被災前より良い状況をつくるための支援について話し合いました。具体的には、被災経験を活かし、予測した事態の対応ができるよう、マニュアルを作成し共有する必要があるとの意見が出されました。また、エネルギーの供給源を地域によって分散させ、それぞれの地域がエネルギーを生産できるようにする必要性も挙げられました。

 4班では、食糧不足や水・衛生問題の深刻化に着目し、リスク分散のための新たな食料生産や、安定的な食料や水の確保、感染症や衛生面への対応や、長期滞在支援者に対する宿泊先の確保やエネルギーの供給、物資供給の為の輸送手段の確保などが必要である、と様々な意見が出されました。被支援国としては、災害に強いまちづくり・復興対策が必要であり、支援国としては人材の派遣や技術支援や知識の伝達が、現地市民としては共助の意識が、そして私たちは情報収集をする力や情報を伝える力が必要であるという意見に至りました。

地震班

▲ グループディスカッションの様子。

 2班では、病院が被災し医薬品が不足している状況に着目し、ディスカッションが進行しました。足が途絶えてしまった山間部への救助チームの派遣や、病院が崩れてしまったために自宅で治療をしている患者をキャンプへ移動させ、電力や医薬品の供給、医療人財の派遣をすることが必要であるという意見が出されました。また、地域自立型のインフラや、災害時マニュアルの必要性についても話し合われました。

 5班では、首都に医療施設が集中している点や、石造りで破壊されてしまった建築物が多く、衛生的な水が不足している点、また短期的・長期的の双方で食糧不足が深刻な点に着目をして議論が進行しました。72時間以内の医療提供や、医療人財の育成や地域での医療の確保が重要であるという意見が挙がりました。また、Googleマップでの支援情報の共有や、市民参加による支援の輪の拡大が重要であるという意見も出ました。

干ばつ班

 3班では、干ばつによって不安が増加し治安の悪化によるコミュニティ関係の悪化に着目し、生活における不安がない状況が理想であると考えました。また、被害を受けた国が主体となることが人道支援の在り方ではないかという点で議論が盛り上がりました。そのうえで、現地の行政やNGOが動きやすいような財政づくりや支援体制が必要であると意見が一致しました。干ばつなどは、人に伝える「見せ方」が難しい問題である事に対して、私たちが感度を高く情報を収集し、発信していくことが重要であることを確認しました。

 6班では、水や食糧の分配に着目し、自然災害の支援者・被支援者の経験をもとに議論が進みました。特に、物資の共有時に妊婦さんや子どもに多く配分されることが理想であると考え、人的ネットワークと情報ネットワークが必要であると意見がまとまりました。災害時の情報格差を防ぐために、日ごろから情報を共有できるネットワークを作成すると良いという案や、風化させないための市民教育も必要であることが話し合われました。また、事前に予測し情報を提供することで、災害発生時の混乱が防げる点や、被災者の状況を支援側が理解するとスムーズな支援につながるのではないか、という意見も挙がりました。

 

 講評

最後に、グループワークやその意見共有を踏まえ、ゲストの吉田氏と金塚氏から講評を頂きました。

 吉田氏は、「緊急支援と開発の両方が重要と皆さんが考え、共有したことは、実際の現場でも長らく議論されていることです。ただ、それを実際に実現するのはとても難しく、最近ようやく『The New Way of Working』として、人道支援と開発の共同の成果をハイレベルで協力して実施していこうという段階にあります。しかし、今後より一層アイデアを取り入れて人道支援に活用していきたいと思っています。」と述べられました。また、「被災国が主体的に彼らが必要なことを進められることが大事で、現地の人々をエンパワーする「Localization」として世界人道サミットの課題として議論されています。」と最近の議論の潮流を紹介してくださり、自然災害の被災者や支援者の経験を防災や人道支援に役立てていく必要性を述べられました。

 また、金塚氏は、「グループワークの共有で指摘された『より良い復興』は、日本としても力を入れており『Build Back Better』という言葉で、仙台防災枠組にも取り入れられています。」と述べ、「Google Earth Engineなどプラットフォームを活かした防災協力も一つの形として想定されるので、ぜひ調べてみてください」と、実際の取組み可能性について示唆してくださいました。また、「トイレの問題や支援する側の課題、情報ネットワークの必要性など細かな点に目が回らなければならない点は、人道支援において重要な視点です」と述べられ、干ばつの発信の難しさや、情報の伝達から支援に繋げることの難しさにも言及されました。「SNSが普及しているという意味で、我々全員が問題意識についての情報を発信することができ、人々の意識向上に繋がります。そして、それが最終的な支援に繋げることができ、人道問題の解消や、OCHAやJICAなど支援側の活動の効果を向上することができると思います。」

参加者一人ひとりの意見に真摯に向き合い、共に考えてくださった吉田様、金塚様に心より感謝申し上げます。

 

【参加者の声】

本勉強会にお越し下さった皆様からは、多くのご満足いただいた意見を頂きました。本報告で、一部をご紹介させていただきます。

  • 様々な立場の方と意見を共有することができ、刺激を受けました。
  • ディスカッションを通じて、勉強するのみならず、知ること・考えることに繋げることができ、良いきっかけとなりました。
  • グループディスカッションを行う上で、異なる見解が合った点が面白かった。
  • ネットワーキングタイムでは、自分の関心分野に関する情報を得ることができました。

『世界人道デー企画「自然災害に伴う人道危機の現在」〜脅威に立ち向かうOCHAとJICAの活動とは〜』にお越しくださり、誠にありがとうございました。

▲ 記念撮影の様子。

 PDF版はこちら

第11回勉強会

第11回SDGs勉強会「『法と開発』を考える」

2018年7月22日 実施

国連フォーラム関西支部 第11回SDGs勉強会

『「法と開発」を考える

開催報告

文責:黒﨑 野絵海

2018年7月22日に、関西学院大学梅田キャンパスにて、国連フォーラム関西支部際11回SDGs勉強会『「法と開発」を考える』を開催いたしました。そのご報告をします。

【イベント概要】 

《企画背景》

 1990年代以降の開発援助政策の展開と共に、開発途上国における法制度改革に焦点があたるようになり約30年が経ちます。今となっては、「法と開発」は日本でもソフト面での支援の代表格として、「法整備支援」という名称で行われています。しかし、関西において「法と開発」の議論をしている場は殆どなく、学生自身も知る機会が少ないです。そのため、「法と開発」の重要性を幅広い観点で知る機会をつくるために企画しました。

《イベントプログラム》

オープニング

  国連フォーラム紹介、タイムライン説明

第1部 法と開発の系譜、法整備支援主体を学ぶ

第2部 ケーススタディ

閉会

- ゲストによる講評

- クロージング

《ゲスト》
金子 由芳 神戸大学大学院国際協力研究科教授
アジア地域の民事・経済法制を主対象として、開発に伴う法制度の自律的発展の問題を、比較法的知見と地域研究とを融合する方法で研究している。
東京大学法学部卒業。法学修士 (ジョージタウン大学)、法学博士 (九州大学)、日本輸出入銀行 (現国際協力銀行)、広島大学を経て現職。

【開催報告】

《第1部》

◆法と開発の系譜、法整備支援主体を学ぶ


国連フォーラム関西支部運営メンバーの黒﨑より、開発援助の歴史的変遷とともに、「法と開発」における目的・手段の変化を説明。

以下発表資料を掲載いたします。

https://docs.google.com/presentation/d/1vEkVyIgqK63xdvVls_5N4h1lwI-Hmq_AFTEHDPvnv4Y/edit?usp=sharing

《第2部》

◆ ケーススタディで考える。
ゲストの金子由芳氏より、「法と開発」に関する日本の法整備支援の課題に関しての説明いただいたのち、ミャンマーを事例に日本の法整備支援の課題を参加者同士でディスカッションをしました。

【日本の法整備支援の課題】

①寄添い型支援?~現地ニーズといかに整合化?

②ドナー間のモデル対立をどう整合化すべきか?

③人材育成重視のグッド・ガバナンス支援? ~法曹や行政官をどう育てていくべきか

【ディスカッションの内容】

寄添い型支援?~現地ニーズといかに整合化?

[経済外交と人権外交の両立]
・経済外交+人権外交はできるのか?
人権外交を押し出すとしても経済外交がないと相手国のメリットにならない
・向こう側に寄り添うとは、どういうことなのか?
経済面、人権面の開発をバランスよく行うこととする。

[開発独裁という障壁]
開発独裁によって日本的にも開発がしにくいのかもしれない。

・憲法的な課題を放置しながら経済外交重視でいいのか?
経済が進むと出てくる問題(不正雇用など)が出てくる可能性がある。しかし、憲法に対する干渉は、内政干渉になりかねない。

[結論]
相手国のニーズがあるので経済政策をやり、内政干渉にならない程度の私法や行政の改革を行っていくことがベスト。

人材育成重視のグッド・ガバナンス支援? ~法曹や行政官をどう育てていくべきか

[試験制度]

現状:試験の点数で学部が決まる。

→希望通りの学問が学べるように(教育を平等に)

→日本が試験を監視

[賄賂]

内部から変えていくのは難しい

外部から変える

→・厳しく取り締まる

 ・メディアを通し、賄賂は御法度であると認識させる。

→ただ、取り締まる主体も省庁のため、自分たちが汚職をしてきたのにそれを変えようと頑張るのだろうか。

[結論]

留学生の規範意識を正す

法整備支援とは違ってくるが、

・日本が監視

・日本が企業の技術(IT)で平等な試験を履行する制度を整えるよう促す。

《参加者の声》

参加者の皆様からのアンケート結果を一部抜粋してご紹介いたします。

・「全く知らない分野だったが、1つの国家が別の国の開発・発展を支援していく方法の1つとしてもっと学んでいきたいと思った。」
・「法整備の種類やニーズがあること、日本がどのように行っているかがわかった。」
・「参加する前は、講義が主体の内容かと思ったが、ディスカッションも含まれていて、能動的にものを考えることができたと思った。」
・「元々、経済団体での産業振興をメインにした民間経験を通して大学院で平和構築・開発政治を研究したいと思っていた。この講演に参加してみて、開発をより学問として追求したいと思うようになった。」
・「自身の不勉強な分野である「法」に対する関心が高まった。「政治」と「法」と「開発」の連関性をもっと意識していこうと決意した。」


お越しくださった皆様、誠にありがとうございました。今回残念ながらご参加頂けなかった皆さまも、次回以降の勉強会のご参加をお待ちしております。

国連フォーラムは引き続き皆さまに有意義な「場」を提供できるよう努めて参ります。今後とも、国連フォーラム関西支部をどうぞよろしくお願いいたします。

また、国連フォーラム関西支部のFacebookグループページホームページでは、国連や国際協力に関する情報共有を行っております。関心のある方はぜひチェックしてみてください!

ネットワーキング・カンファレンス2018年

国連フォーラム関西特別企画『人とつながる。世界とつながる。Networking Conference in 関西』

2018年3月18日 実施

国連フォーラム関西特別企画
『人とつながる。世界とつながる。Networking Conference in 関西』

2018年3月23日(土)に、関西学院大学大阪梅田キャンパスにて、国連フォーラム関西特別企画『人とつながる。世界とつながる。Networking Conference in 関西』を開催いたしました。そのご報告をさせていただきます。

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ネットワーキング・カンファレンス2018年

〈参加者〉50名

〈ゲスト〉
SDGパートナーズ 代表取締役 CEO 田瀬 和夫 氏
関西学院大学院教授 久木田 純 氏
UNOCHA 神戸事務所長 渡部 正樹 氏
WHO健康開発総合センター医官 茅野 龍馬 氏
サラヤ株式会社 海外事業部アフリカ担当 森 窓可 氏
認定NPO法人テラ・ルネッサンス 栗田 佳典 氏
アマルプロジェクト 岩元 晴香 氏
大阪市立大学アイセック 三上 諒子 氏
SGH高校生(葺合高校/関西創価高校)(2名)

〈コンテンツ〉
【第一部】
◆①講演セッション:『キャリアトーク』
(学生の部)
・登壇者
  アマルプロジェクト:岩元 晴香 氏
  大阪市立大学アイセック :三上 諒子 氏
  高校生:2名 
それぞれの学生団体、高校であれば学校やスーパーグローバルハイスクールの取り組みを説明いただいたのち、パネルディスカッションで、将来へのビジョンや、大切にしている価値観などお話していただきました。
(有識者の部)
・登壇者
  UNOCHA神戸事務所長:渡部 正樹 氏
  WHO健康開発総合センター医官:茅野 龍馬 氏
  サラヤ株式会社 海外事業部アフリカ担当:森 窓可 氏
  認定NPO法人テラ・ルネッサンス:栗田 佳典 氏
それぞれの所属団体に関する概要を説明いただいたのち、パネルディスカッションで、大切にしている価値観ついて等、お話していただきました。

 

【第二部】
◆①国連フォーラム共同代表による基調講演
「国連フォーラムのこれから ~来るべきSDGs達成の2030年に向けて~」
・登壇者
  SDGパートナーズ 代表取締役 CEO:田瀬 和夫 氏
  関西学院大学院教授:久木田 純 氏
国連フォーラム設立の経緯から、今後の展望に関してお話いただきました。

◆②人とつながる。トークセッション
あなたが思う、持続可能な世界とは?」
「持続可能な世界の実現のために、具体的にどう取り組むか?個人としてどう関わりたいか?」
をお題に、グループに分かれ、ディスカッションが行われました。

 

〈アンケート〉
参加者の皆様からのアンケート結果を一部抜粋してご紹介いたします。
海外に関心がなかったのが、実際に現場を見たくなった。
国際機関だけではなく、企業でもSDGsの活動を行っていると知ることができた。
世界により目線を向けている学生達と出会えて、刺激になり、勉強に励もうと思った。
”ラベルよりコンテンツ”という考え方が今まで欠けていたので、新たな考え方をえることができた。
「大変優秀な学生が多く関西にいることを見れてうれしかったです。」
もっと悩んで混乱しようと思った。いろいろなことを知ろう!と思った。

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お越しくださった皆様、誠にありがとうございました。今回残念ながら参加ができなかった方も、次回以降のご参加をお待ちしております。今後とも、国連フォーラム関西支部をどうぞよろしくお願いいたします!

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第5回SDGs勉強会 「人権を守ってこそ持続可能な開発に」

2016年9月30日実施

国連フォーラム関西支部 第5回SDGs勉強会

人権を守ってこそ持続可能な開発に

開催報告

すべての人間が生まれながらにして持っている権利、「人権(Human Rights)」。
ジェンダー、マイノリティの権利等々、様々な分野で語られているこの概念ですが、「重要なのはわかるけど、具体的に何を指すのかはいまひとつよく分からない・・・」そんな風に感じたことがある方も少なくないはずです。
しかし、そんな「人権」、実はSDGsの原則にその考え方が反映されているなど、現在開発政策や実践の場においても重要視されつつあります。
「人権」とは何なのか、そして人権はSDGs、ひいては国際社会にどのように関わっているのか、秋の夜長に素敵なゲストの皆さまと共に考えてみました。

 

【イベント概要】

《企画概要》

イベント名:人権を守ってこそ持続可能な開発に

日時 :2016年9月30日 18:00~20:00

場所 :関西学院大学大阪梅田キャンパス1408教室

タイムテーブル:

18:00 – 18:05 国連フォーラムの説明
第一部
18:05-18:35 伊藤氏 「ヒューマンライツ・ナウの人権擁護活動から『人権』を考える」
18:40-19:00 久木田氏「子どもの権利条約とユニセフのプログラム」
19:00-19:20 パネルディスカッション
 議題:「SDGs×Human Rights~人権がSDGsに組み込まれることによる現実の変化~」
第二部
19:25-19:45 グループディスカッション/質疑応答
20:00 終了予定

ゲスト :

  • 伊藤和子(いとう かずこ)氏
    弁護士 国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長
    1994年に弁護士登録。女性、子どもの権利、えん罪事件など、人権問題に関わって活動。2004年、ニューヨーク大学ロースクール客員研究員。2005年、国連人権小委員会インターン、米国NGOインターンを経て2006年に帰国。2006年に国境を越えて世界の人権問題に取り組む日本発の国際人権NGO・ヒューマンライツ・ナウの立ち上げに関わり、事務局長として国内外で現在進行形の人権侵害の解決を求めて活動中。ヒューマンライツ・ナウは2012年以降国連特別協議□を付与された国連NGOとして活動中。
    同時に、弁護士として、女性をはじめ、権利の実現を求める市民の法的問題の解決のために日々活動している。ミモザの森法律事務所(東京)代表。
  • 久木田純(くきた じゅん)氏
    関西学院大学教授、国連フォーラム共同代表(unforum.org)。
    1978年西南学院大学文学部英語専攻卒業、シンガポール国立大学社会学部留学(ロータリー財団フェロー)を経て、九州大学大学院で教育心理学修士号取 得、同博士課程進学。1985年外務省JPO試験に合格、翌年から国連職員としてユニセフ駐モルディブ事務所に派遣され、駐日事務所、駐ナミビア事務所、 駐バングラデッシュ事務所、ニューヨーク本部を経て、駐東ティモール事務所代表、駐カザフスタン事務所代表を歴任。2015年1月国連退官。2003年に 世界銀行総裁賞受賞、2011年に東ティモール共和国勲章を受勲。

【開催報告】

《第1部》講演

「日本初国境を超える国際人権活動」(伊藤氏)
「子どもの権利条約とユニセフのプログラム」(久木田氏)

 

《第2部》パネルディスカッション

SDGs×Human Rights ~人権がSDGsに組み込まれることによる現実の変化~

《第3部》グループディスカッション

当日の内容を記録致しました議事録は以下のURLからご覧いただけます。
https://docs.google.com/…/1JOkYZpWCLdlsuCHeSR6EtVI6jm7…/edit


みなさまと共にこのような場を作ることが出来たことを、とても嬉しく思います。
これからも国連フォーラム関西支部をどうぞ宜しくお願い申し上げます。

た、国連フォーラム関西支部のFacebookグループページホームページでは、国連や国際協力に関する情報共有を行っております。関心のある方はぜひチェックしてみてください!