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第62回
堀尾麗華さん
インターン先:
UNICEFフィリピン事務所 保健と栄養部署


第61回
鈴木涼子さん
インターン先:
UNESCOバンコク事務所アジア太平洋地域教育支局・教育政策課


第60回
谷口雄大さん
インターン先:
世界保健機関(WHO)本部


第59回
波多野綾子さん
インターン先:
UNICEFシエラレオネ事務所


第58回
福田知彰さん
インターン先:
国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所


第57回
見津田千尋さん
インターン先:
国連人道問題調整事務所(UNOCHA)神戸事務所(OCHA Kobe Office)


第56回
金子梓さん
インターン先:
WFP国連世界食料計画・日本事務所


第55回
小林綾子さん
インターン先:
OCHA New York


第54回
梅田直愛さん
インターン先:
UNVカンボジア事務所(UNV Cambodia)


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HOME国連でインターン・ボランティア > 第63回





第63回 斉藤 由美(さいとう ゆみ)さん
グルノーブル経営大学院(Grenoble Ecole de Management) 国際経営学研究科 修了(国際経営学修士)
インターン先:国際労働機関 (ILO) ジュネーブ本部
インターン期間:2015年10月〜2016年4月(6ヶ月)



■インターンの応募と獲得まで■

インターン応募の動機
私は、在学中よりずっと、将来国際機関で働きたいという希望がありましたが、国連に入るには競争が激しいこと、インターンは無給であるというイメージが強かったこと、また私の通っていたビジネススクールは、国際開発を専門とした大学院と比較して、国連やNGO関係の機関に関する情報が少なく、コネクションもなかったため、国連でインターンをすることは全く考えていませんでした。就職活動をしていた頃、国連フォーラムのメーリングリストで、ジュネーブ国際機関日本人職員会(JSAG)によるセミナー「国際機関での仕事」がジュネーブの国際労働機関(ILO)本部で開催されることを知り、国連での就職について具体的なお話を伺える貴重な機会と思い、参加の申し込みをしました。このセミナーは、スイスやその近隣国に留学または在住している国際機関への就職に関心のある方を対象にしており、内容は、ILO、UNICEF、UNHCR、国際赤十字連盟の国際機関職員の方々がパネリストとして、機関の紹介や担当業務などについての説明、日本政府代表部によるJPOを始めとする国際機関へ入る多様なルートについての紹介、最後に国際機関での仕事のケースを取り上げ、参加者に自身が担当者だったらどのように対応するかというシミュレーション演習などがありました[1] 。実際に国際機関の会議室で、直接国際機関で働かれている方々の仕事内容を伺わせて頂くことは、とても新鮮で興味深く、多くのことを学ばせて頂きました。セミナーの前後で国際機関職員、JPO、インターンを経験された方々との懇談会の機会を作って下さり、その際に、ILOのインターンは、生活費手当が支給され、ジュネーブでの家賃、食費など生活において最低限困らない額であることを教えて頂きました。ジュネーブは物価が高いため、生活費手当が出るといっても、十分な額なのか不安を感じていた私にとって、実際にジュネーブに住まれている方や、インターンを経験された方から生活面についても色々と教えて頂けた事は、インターンに応募する背中を押して頂くきっかけとなりました。また、国連で働かれている方の多くが、学生時代にインターンを経験されており、皆さん全員が、インターンを経験して良かったと言われていたため、私が今の時点で想像する以上にインターンを通して得ることは大きいと感じ、応募を決意しました。

インターン応募のプロセス
私は、2015年9月のインターン開始を目指して、同年5月にILOのインターンシップに応募しました。昨年までILOのインターンの募集は、年に3回でしたが、今年2016年より、1月と6月の年に2回になります。(不定期な募集を除きます。)

(1)ILO Online Profile
まず、ILO専用の履歴書であるILO Online Profileを作成しました。まずインターネット上でアクセスし、自身の学歴、職歴、スキルなどを登録しました。ILO Online Profile登録後、PDFに抽出した履歴書を何度も見直し、編集しました。

(2)ILO Internship roster
ILOのホームページ上で、5月中旬に募集が始まったことを確認し、ILO Internship roster(インターンシップ空席募集)に登録しました。現在、ILO本部でのインターンシップへの応募は、このロースターを通して行うことになっています。ILOのインターンシップロースターで1度に応募できるポジションは3つまで、インターンシップ契約期間は最長6か月間です[2]。私は2つのポジションに応募し、6カ月の契約期間を希望しました。また、カバーレターも必須で、WORDやPDFファイルでアップロードすることができます。

(3)筆記試験、面接
ロースター登録後、ショートリストに名前が載ると、試験と面接が行われます。それぞれの部署によって内容は変わりますが、私の場合は、指定された時間帯内でワードやエクセルを使った試験で、インターネットで添付して送るというものでした。基本的には、試験の後、スカイプなどでインタビューを行い、その後に合否が出ます。ただ、部署によっては、筆記試験が無く面接のみの場合もあり、様々です。

■インターンシップの内容■

業務内容
私は、人事部(Human Resources Development Department)の政策・社会福祉局(Policies and Social Benefits Branch)に配属になり、主に職員健康保険基金(Staff Health Insurance Fund)の保険償還に関するデータ分析をさせて頂きました。ILOはジュネーブを本部に、40以上の国に地域総局及び現地事務所が置かれています[3]。それぞれの国のILOに所属する現役職員、また退職された職員とその家族の疾病、負傷もしくは死亡、または出産に関して、職員健康保険基金が保険給付を行っています[4]。職員健康保険基金には14名の職員がおり、世界各地から送付された健康保険療養費支給申請書等の書類を確認し、給付の手続きを行います。保険給付の手続きは、全てジュネーブ本部が行っているため、毎日世界中から膨大な申請書類や問い合わせがあります。近年、職員健康保険基金では、半年以上給付手続きが遅れるなど様々な問題を抱えており、私がインターンとして派遣されたのは、職員健康保険基金の制度を変更する時期でした。その制度変更に関して採決をとるため、全職員を対象に投票が行われたため、ILO職員組合(ILO Staff Union)を初め、職員の方々の間では、投票について常に話題になっており、様々なご意見を伺いました。

私の仕事は、職員健康保険基金の問題点を数値化し可視化することでした。ITシステムに管理されている情報の中から抽出されたデータを、年齢、国・地域、為替、医療サービスの種類などのカテゴリー別に分析しました。また、職員健康保険基金のニーズに合わせたクライエントリストの作成、新しい保険支給申請書のレイアウト作成、保険制度マニュアルの作成の補助などに関わらせて頂きました。私の上司はフランス人で、学生時代に国連でインターンをされた経験があり、インターン開始日には当時を懐古されながら、「業務内容が、あなたにとって興味があり、やりがいを感じるものであること」、「ネットワーキングを行い、ILO内だけでなく他の国連機関について学ぶこと」、「インターン中にストレスを抱えて、溜込むようなことがないこと」の3つが大切であると教えて頂き、これからインターンシップをする中で、もしこれらの点にそぐわないことがあればいつでも教えて欲しいと言ってくださりました。私の働かせていただいた部署は、職員になるまで苦労をされてきた方が多く、いつもインターンの業務やジュネーブでの生活について気にかけて下さり、とても雰囲気の良い職場でした。また、年3回開催される理事会(Governing Body)の職員健康保険基金の事業計画と予算案の承認に関する部分や、国際女性の日(International Women's Day)のハイレベルパネルディスカッションの聴講など、貴重な経験もさせて頂くことができました。

業務外の活動について
ILOインターンボード(The ILO InternBoard)といって、インターンの代表により運営されている委員会があります。ILO内やほかの国際機関のインターンボートと共にジュネーブでイベントを開催し、人とつながる機会を増やし、ジュネーブでのインターン生活をより良い経験にしていくことを目的としています[5]。月に数回、Coffee and CakeやILO Intern Apero、Weekly drinks with GIA (Geneva Interns Association) など、ILO内外で交流を深めることができるイベントがあり、参加費も約1〜5スイスフラン(約111〜555円)からとリーズナブルです。またSmall Talksといって、ある分野における専門家を講師にお招きし、短時間の講義を開催することもありました。


 (国連機関のインターン経験者と共に)

Diversity Month
ILOインターンボードが、1カ月間に渡り、Diversity Monthというイベントを開催しました。週に一度、障がい(Disability)、性(Gender)、人種(Ethnicity)など様々な角度から、多様性(Diversity)について職場で生じる問題点を話し合い、参加者一人一人がILOの活動の主目標であるDecent Work(働きがいのある人間らしい仕事)について理解し、見解を深めるというイベントでした。UN AIDSやILO職員組合の方などのゲストスピーカーをお呼びして、ケーススタディーやワークショップのようなアクティビティーも行われ、労働環境におけるEquality(平等)について、それぞれの意見を交換し、議論することで、多様性についての意識を高めることが出来、とても画期的なイベントとなりました。


 (Diversity Monthのワークショップにて[6])

Pay your intern!
ILOのインターンボードは、全ての国連機関はインターンへ生活手当を支給すべきであると常に主張しており、その活動も活発に行われています。国際インターンの日(International Intern’s Day)には、他のジュネーブの国連機関に所属するインターンと共に、ジュネーブ国連本部(Palais des Nations)の前の広場でイベントを開催しました。インターンが地面に靴を置き、「UNpaid is UNseen」の意思表示を提示しました。この靴は、 国連機関においてインターンが“Invisibility (不可視性)”な存在であることを象徴しています。国連機関に所属するインターンに、一日も早く生活費手当が普及されるよう、強い願いが込められています。


 (UNpaid is UNseen / UNpaid is UNfair [7])

■資金確保、生活、準備等■

食事
ILO本部のカフェテリアは、ベジタリアン、クラシック、スペシャリテなど5つ以上のメニューから選ぶことができ、それ以外にも、サラダ、ピザ、魚、肉など種類が豊富にあります。年に数回、世界の国の料理が提供されるInternational Weekがあり、その一週間は、レバノン料理やタイ料理なども楽しむことが出来ます。ただ、節約や健康管理のために自分で作って持って来られている方も多く、私もほとんどお弁当を作って持って行っていました。

交通
ジュネーブは小さい街で、トラム(路面電車)やバスの交通網が発展しており、交通関係で困ることはありませんでした。

その他感想・アドバイス等
現在、大学に在学中で、これから大学院に進んで国際機関でのインターンシップやイベント等への参加を考えられている方は、国際機関とコネクションが強い大学院に進まれることをお勧め致します。国際機関によっては、大学とインターンシップの協定を結んでおり、校内で選考のプロセスが行われ、大学側がインターンの生活手当を支給する場合もあるようです。また、国連本部があるジュネーブ、ニューヨーク、ウィーン、ナイロビ等に立地している大学を選ぶことで、国連の情報が入りやすく、イベント等に関わる機会を作るチャンスが増えるかと思います。

また、大学・大学院に所属されている方々には是非、本部でのインターンと、地域事務所もしくはカントリー事務所でのインターンの二つ経験されることをお勧め致します。私は以前、国連機関ではありませんが、ODA関連のアフリカの事務所でインターンをさせて頂いたことがあります。その際に、プロジェクトの立ち上げや、現地の政府との交渉など、地域事務所ならではの仕事の進め方を目の当たりにし、アフリカに実際に行ってみなければ知ることが出来なかった、貴重な経験をさせて頂きました。地域事務所でしか出来ない仕事・集められない情報、本部でしか出来ない仕事・集められない情報などの両方をインターンとして学ばせて頂いたことは、現在の私にとって、とても大きな財産となっています。

■その後の将来の展望■

ILOの職員の方々とお話させて頂いた際、お一人おひとり全く違ったキャリアパスを進んで来られていることを学び、国際機関の就職には、一つの正しいキャリア形成のモデルがあるわけではなく、様々な道があることを感じました。現在の仕事、家庭環境や自身の専門分野とする国際機関の空席状況などのタイミングと、国際機関で活躍していくために、自身の専門性を特化させていくことの二つが大切であるように感じました。今回のインターンを通し、実際に自身がどの分野で何を専門性にしていきたいか、そのために何を学び、経験を積んでいくべきかが明確になったことは、とても大きな収穫でした。私は、自身の人生でこれを成し遂げたいということを常に明確にし、そのために経験を積み、能力を高めていきたいと思っています。そして、その努力の延長線上で、また国際機関に関わらせて頂くことが出来たらと強く願っています。

結びに、これまで拙い文章ではありましたが、ILOでのインターンの経験について寄稿させて頂く事で、一人でも多くの方にILOのインターンシップについて知って頂き、また将来国連でインターンをされる方の参考にして頂けることが一つでもあればと願っております。





[1]http://jsag-geneva.blogspot.co.at/2016_04_01_archive.html

[2]http://www.ilo.org/public/english/bureau/pers/vacancy/intern.htm

[3]http://www.ilo.org/tokyo/about-ilo/lang--ja/index.htm

[4]http://www.ilo.org/dyn/shif/website.display?p_lang=en&p_id=1

[5]http://ilointernnetwork.weebly.com/about-us.html

[6]http://ilointernnetwork.weebly.com/blog

[7]https://www.facebook.com/PayYourInterns/photos/a.1652820451662999.1073741835.1577174352560943/1652861068325604/?type=3&theater



2016年6月9日掲載
ウェブ掲載:三浦舟樹