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私の提言:最高のコストパフォーマンスを達成するMFIの調査システムを
略歴:
1. マイクロファイナンスとは マイクロファイナンスとは、銀行融資を受けられない貧困層の人々を対象とした、各種金融サービスの総称である。小額融資(Micro Credit)が代表的サービスだが、貯蓄、保険など様々なサービスがある。 組織や人間の行動は環境によって変化する場合がある。もちろん、人間の偉大さのひとつは環境にも屈せずに周囲を変革できるところにあるが、全体として見た場合、環境が組織や個人の行動に及ぼす影響は否定できない。 マイクロファイナンス機関の行動を変質させうる外部的要因としては、次の3つが考えられる。
MFIに投資するマイクロファイナンス投資ファンド・マイクロファイナンス投資ビークル(MIV)の活動は、上記1と2に少なくない影響を与えている。本稿では、MIVの活動に焦点をあて、現状分析とその問題点、問題解決のための提言を行う。 マイクロファイナンス機関の資金調達元は大きくドナーと投資家に分類される。ドナーには、国際機関、財団、NGOなどがある。投資家には国際機関、個人投資家、機関投資家、マイクロファイナンス投資ビークル(MIV)がある。 CGAPはMIVを次の様に定義する。
CGAPのレポートによると、2008年末におけるMIVの数は103であり、資産残高(AUM, Asset Under Management)は総額で66億ドルとされている。AUMは2009年においても約30%増加したと推定されている。 2.2. MIVの例:Dexia Microfinance Fund MIVのAUMの半分以上は、大手5社によるものである。ここでは、大手MIVの一つとして、BlueOrchardのDexia Microfinance Fundを紹介する。 スイスに本拠を置くBlueOrchardはDexia Microfinance Fund(ファンド国籍はルクセンブルグ)を運用している。アメリカドル建てのファンドは1998年9月より、スイスフラン建てファンドは2001年12月より、ユーロ建てファンドは2003年4月より運用が開始されている。 為替リスクをヘッジした場合、マイクロファイナンス投資に存在するリスクの多くは、現地の借り手の貸倒れリスクである。このようなリスクは現地の地場産業や農業の景況に影響され、先進国の経済状況との相関は低い。多くのMIVが2009年度においても概ね正のパフォーマンスを達成出来たのは、借り手の貸倒れリスクが先進国の金融危機の影響を受けにくかったことに由来していると考えられる。 先進国の中で、マイクロファイナンス投資ファンドが存在しないのは日本だけであった。そのリターン特性と社会的意義から、Living in Peaceは2008年より日本で初めてのマイクロファイナンス投資ファンドが組成されることを望み、呼びかけてきた。 2009年は、日本におけるマイクロファイナンス投資元年となったといえる。Living in Peaceとミュージックセキュリティーズ株式会社の業務提携の下に組成されたマイクロファイナンス投資ファンド「カンボジアONE」は日本初のマイクロファイナンス投資ファンドであった(第2種金融商品取引業者の登録のないLiving in Peaceは、金融商品の勧誘、募集等の行為は一切行っていない)。この取組みには多くのメディアが注目し、20以上の新聞、雑誌、テレビ、ラジオで取り上げられた。また、大和証券が組成した「マイクロファイナンス・ボンド」(国際機関IFCのマイクロファイナンス事業への資金調達)も多くの注目を集め、数百億円の資金を集めた。 マイクロファイナンスについての学びの意識が高まってきたのもこの1年だった。アライアンス・フォーラムが主催したマイクロファイナンスのスタディツアーには定員の3倍を超える人数が申し込み、世界銀行の主催するマイクロファイナンスコースにも、いつになく多くの人々が参加している。 マイクロファイナンスの潜在的な需要は2,800億ドルあると考えられている。今後もマイクロファイナンス投資は拡大を続けるであろうと考えられる。 しかし、現状は一種の危うさを孕んでいる。それは、マイクロファイナンス投資ファンドが、国内のMFIの寡占を促進させると同時に過度の資金余剰をもたらし、MFIセクターの健全な成長を阻害しうることである。 MFIへの投資は、全体としては歓迎されるべきものである。マイクロファイナンスセクターは一貫して資金不足の状態にあり、資金不足主体に資金を提供するのは金融の基本でもある。 3.1. MIVの有するインセンティヴが生みうる偏った投資活動 問題点は、投資が偏っている点にある。MIVには投資家から集めた資金を投資に費やす動機が存在する。そうしないと投資リターンを得られないためである。大手のMIVがその資金を全て投資に用いるためには、どうしても大規模の投資を行わざるをえない。 3.2. 偏った投資がもたらしうるもの―寡占と一部MFIの資金過剰 上述のような状態が続くと、中小規模のMFIの成長が抑制され、大規模のMFIのみがますます成長し、市場が寡占化する可能性がある。30年以上に渡り貧困層のファイナンスを支援してきたStuart Rutherford氏は、次のように指摘する。「今となっては大手となったMFIにも中小規模だった時期があり、当時は外部からの投資や資金援助を受けて育ってきた。それに比べ、現在において中小規模のMFIはあまりにも厳しい資金調達環境にさらされている。」 また、このような状況においては、拡大意欲のあるMFIが必要以上の資金調達をしてしまう可能性がある。 繰り返しになるが、組織や人の偉大さのひとつは環境に左右されず自らの理念を全うする姿にあり、私もそれを否定しない。しかし、問題はマクロの話であり、資金調達環境が組織の行動に影響を与えるのは事実であると考える。 投資ファンドのビジネスは、一定のサイズを達成しないと成立しないといわれている。投資ファンドの運用者らは手数料によってビジネスを成立されている。その手数料は主に次の四つからなる: 前述した通り、マイクロファイナンス投資の多くはローン投資であり、年間のリターンは固定されている。よって、投資運用者が投資家にリターンを返すためには、投資にかかるコストが投資サイズに対して一定の比率(2%程度)に収まる必要がある。バートン・マルキールの「ウォール街のランダムウォーカー」にもあるように、投資パフォーマンスと手数料には明確な関係がある。 また、マイクロファイナンスが必要とされている地域は発展途上国が主であるが故、各種インフラや適切な人材・能力などの不足などによって事前調査に相応のコストが発生してしまいがちな状況にある。
この問題に対する解決策として、私はMFIの事前調査システムを開発し、MFIの調査コストを格段に下げることを提言したい。それにより従来よりも低コストでMIVに興味を持つ機関に調査データを提供し、1,000万円程度の小さいサイズでも収支がつくようにする。そうすることによってサイズは小さいが資金を必要としている中小規模のMFIに資金を提供し、マイクロファイナンス市場のより一層の健全化につながる。 これはLiving in Peaceのマイクロファイナンスプロジェクトの中期目標であり、私たちだからこそ達成しうる目標だと考える。 現地訪問なしの調査システム 私たちは、現地訪問をせずにある程度のパフォーマンス評価を出来るシステムの開発を考えている。企業の倒産確率を推定するクレジット・リスク・モデリングの学びは、少なくない場合において、数値情報のみを用いたシステムの導き出す答えは、融資担当者の経験に基づいた勘を上回るというものだ。これは企業の信用リスクの推定に限った話ではなく、数多くの場面で実証されており、「その数学が戦略を決める」という書籍にもまとめられている。MFIへの投資だけがモデル化できない理由は存在しないと考えられる。また、このシステムは企業の財務パフォーマンスのみならず、ソーシャルパフォーマンスも推定できるものにしようと考えている。 パートタイムNPOの利点である固定費の低さを活用 Living in Peaceは、パートタイムのメンバーの集まるNPOであり、参加者は自らのモチベーションによって行動している。 事務所も有さず活動しているため、組織運営にかかる固定費は非常に低く、調査システムを開発しても、人件費のかかる会社よりはるかに低コストで開発することが可能である。 目指すのは最高のコストパフォーマンス 私たちは、この調査システムが全てのMFIの調査に勝るとは考えていない。私たちが提供したいのは、最高のコストパフォーマンスを有するMFIの調査システムである。現在、MFIへの投資において、事前の財務・ソーシャルパフォーマンスの調査は、全て高コスト・高(ときに中)パフォーマンスであるが、私たちはその限定された状況を変えたいと考えている。圧倒的な低コストで、中程度以上のパフォーマンスを達成するのが、私たちの選択するポジショニングである。 2010年にもLiving in Peaceは多くのMFIの調査を行う予定である。今後3年間は現地調査をしっかりと行いつつ、試作版のモデルと現実とのギャップを埋めていく予定である。LinuxやWikipediaと同様の、金銭的報酬ではなく活動意義や仲間の魅力に惹かれた人々が作り上げるシステムの可能性を模索したい。 CGAP 2009 MIV Survey Dexia Micro-Credit Fund November 2009 Investors’ Update responsAbility Global Microfinance Fund Monthly report November 2009 LIP Report No.2 投資対象としてのマイクロファイナンス
2010年2月17日掲載
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