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国連フォーラム主催
「みんなでつくる」スリランカ・スタディ・プログラム(SSP)




第2節 渡航前に立てた仮説の検証


<後半>
第4項 教育という切り口から考えるスリランカ
第5項 環境から考える持続可能性
第6項 「脆弱な人々」の観点からみたスリランカの現状と対策


第4項 教育という切り口から考えるスリランカ
仮説1 民族間・地域間格差について:

スリランカの教育においては民族間格差と地域間格差が存在している。


<問題意識>

スリランカは多民族国家であり、民族によって使用言語や住む地域の範囲などに差異がある。また、北部の紛争影響地域と都市部の間では受けられる教育にも差があり、各関連機関の事業内容は異なっている。スリランカにおける潜在的な教育課題は、民族間あるいは地域間で受けられる教育の格差ではないかという問題意識を持ち、以下のような仮説を立てた。



<当初仮説>

スリランカの教育においては、民族格差が存在する
・教育施設の建設や教員育成、言語教育といった対策は行われていない。
・従来はタミル系、シンハラ系のように民族の種類によって通う学校も分かれていたが、民族融和への理解が進んだ現在は民族混合の学校も存在する。
・歴史教育はほぼ行われていない。

スリランカの教育においては、地域間格差が存在する
・北部のような紛争影響地域と都市部には教育施設、教員数、教員の質など差がある。
・インフラが未整備な場所では、通学可能な学校が限定される。

<仮説検証結果>

民族格差は存在し、格差是正に取り組んでいる

・民族が融和していくために積極的に言語教育が行われている。
-就学前教育では母国語および英語教育を実施
-小学校と中学校では母国語、他民族の言語(シンハラ語もしくはタミル語)および英語教育を実施

・歴史教育は世界史しか行われておらず、内戦についての教育はなされていない(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンにて)。ただ今後は、自国の歴史の教科書への取り込みや、内戦について教えられる先生の拡充を行う予定(スリランカ国立教育研究所にて)。


地域間格差は存在する
・北部は貧困層が多く、学校の数もあまり充実していない。


<積み残し・継続課題等>

・あるべき民族間格差および地域間格差是正対策を考える
・言語教育を実施する上で各関係機関が工夫すべき点を検討する。
・民族混合の学校作りという案も含め、民族融和への対策を検討する。
・歴史の教科書にはどのような内容を盛り込むべきかを検討する。
・北部の学校の施設の状態や数を充実させるための必要な対策を検討する。
・都市部の教育の現状についてもより深く検討する。(北部の教育機関は訪問できたが、都市部の教育機関は直接の訪問ができなかったため。)


第5項 環境から考える持続可能性

仮説1 慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)の原因および対策について:

CDKの原因は、農業用水、飲料水として用いられる地下水に含まれるフッ素だと考えられ、CDK防止のための水質調査を専門家が行っている。



<問題意識>

当班ではスリランカにおけるCKDの蔓延に注目をした。CKDの蔓延は特にスリランカ北部地域に集中しているが、これはなぜだろうか。現地では病気の蔓延についてどのような問題意識を持っているのだろうか。当班は「水質」という視点からこれらの問題について取り組んだ。現地での調査内容は以下の通りである。

(1)CKDの原因は明らかになっていないが、一説では地下水が原因と言われている。この点について、現地ではどのように考えているのだろうか。
(2)CKDの原因が地下水の水質と考えられている場合、水質の調査(主に井戸水)は行われているのだろうか。
(3)地下水の使用状況はどのようになっているのだろうか。
※上記(1)〜(3)は、以下当初仮説、仮説検証結果の(1)〜(3)に対応


<当初仮説>

(1)慢性的な腎臓病の原因は北部地域の地下水に含まれるフッ素ではないだろうか。
(2)政府もしくは自治体が定期的に行っているのではないか。
(3)飲料水としても農業用水としても使用しているのではないか。

<仮説検証結果>

(1)農業に使う除草剤と硬水の摂取が原因と考えられる。地下水は硬水であり、且つ除草剤が地下水に紛れ込むことがあるので、地下水を飲むことがCKDを患う原因の一つである。
(2)地下水の水質について、専門家が定期的に検査を行っている。このことから、CKDの蔓延状況について問題意識があることが伺える。
(3)地下水は飲料としても、農業用としても使用している。飲料として使用することに対する危機感はあるが、農業用として使用することに問題意識はない。


<積み残し・継続課題等>

中南米、インド、バングラディッシュなど、CKDが同様に蔓延している国・地域を調査し、原因や対策状況からスリランカの今後の政策について考えたい。持続可能な社会の構築にはCKDの根絶(減少)が必要と考えられる。


仮説2 開発政策と環境保護のバランスについて:

経済効果の最大化が最優先であることから、環境への配慮は行われていないと考えられる。


<問題意識>

国連の事業が環境破壊につながることもあると考えられるが、環境への配慮はなされているのだろうか。国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations: FAO)が実施している、ため池修復事業を対象に調査を行った。

環境保護に関連して、生物多様性の保持について、どのような取り組みが行われているのかについても合わせて考察した。



<当初仮説>

上記の問題意識に対して、経済効果の最大化が最優先であることから、環境への配慮は行われていないと考えた。

<仮説検証結果>

環境への特別な配慮は行われていないものの、ため池は水をせき止めるだけなので、環境への悪影響は大きくない。また、ため池を改修することで地下水の利用が減り、その結果水質改善につながっている。

森林伐採については、(ため池事業は再構築が多いので)基本的には行っていない。ただし、森林伐採を伴うものもあり、その場合には政府との調整を行っている。

生物多様性の維持については、保存センターを設立し、絶滅危惧種の保護を行っていた。



<積み残し・継続課題等>

政府および国連が環境保護(特に水質保全)についてどのような問題意識を持っていて、どのような政策・プロジェクトがあるのだろうか。

環境保護のプロジェクトを行う場合に、専門機関同士の連携はあるのだろうか。



第6項 「脆弱な人々」の観点からみたスリランカの現状と対策

仮説1 子ども兵士への対応策について:

子ども兵士に対して心のケアを行うリソースが欠如している。
<問題意識>

・元子ども兵士に対する事業を実施する際には難点がある
・心理的ケアは十分行き届いているとは言えない
・子ども兵士、彼らの家族、そしてコミュニティ社会が平和を取り戻すためには、紛争の被害者である子どもたち自身が未来に希望を持つことと社会性を身につける必要がある


<当初仮説>

・子どもたちへ心のケアを行き届かせるリソースが欠如している

<仮説検証結果>

・子どもたちは、兵士時代に受けたストレスによって心に深い傷を負い、除隊した今でもなお、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状が出ている。その副次的効果として、学習に集中できない、学力低下、物事をネガティブに考えがちになるなどの症状が出ている。

・心のケアに関して、子ども一人一人にサルボダヤ職業訓練センター職員が寄り添い、本を読み聞かせたりして、世の中には素敵なことがたくさんあり、彼ら(子どもたち)の未来は希望で満ち溢れているということを伝え、ネガティブな考え方から抜け出させる活動をしている。

・社会復帰の最終段階である、「家族などコミュニティへの再統合」が上手くいかない場合があり、その時は新しい地で新しい人生を歩むことも促している。



<積み残し・継続課題等>

・前政権で心のケアが禁止だったが、新政権となった今、政府内で心のケアがどの程度進んでいるのかを継続して調べる必要がある。

・現在は、国連機関でもメンタルヘルスの重要性が高まっており、より詳しく調べる必要がある(国連児童基金(United Nations Children’s Fund: UNICEFなどの国際機関も一部取り組みを行っているが、手法・アプローチが統一されていない)。

・世界に視点を移した時に、サルボダヤの活動は、どの程度子どもたちに良い影響を及ぼしているかを相対的に比較して考えることが必要である。



仮説2 国連機関による事業の決定過程について:

国際機関が行う事業は、(1)政府の意向を受けて支援対象者のニーズを把握しようとするが、(2)効果は地域の事情や背景に左右される。


<問題意識>

・渡航前に検討したように、脆弱な人々には様々なカテゴリーが存在し、中には支援対象から疎外された人もいると考えられる。その中で、国際機関はどのように脆弱な人々を決定し、事業内容を決定するのか。

・加えて、脆弱な人々に対する国際機関の事業が、具体的にそのような人々の生活改善などに正の影響を及ぼしているのか。



<当初仮説>

・脆弱な人々に対して国際機関が行う事業は、(1)政府の意向を受けて、支援対象者の意向を聞いて決定されるが、(2)効果は地域の事情や背景に左右される。
1.政府の意向に背くことはできないが、その範囲内で自らの支援対象者に聞き取り調査を行って、ニーズを把握し、事業内容を決定する。
2.国連機関の能力(資金・ノウハウ)によって結果は様々である。また、支援対象とならなかった人々へのアフターケアが課題となる。


<仮説検証結果>

当初仮説1:国際機関は政府の意向を無視できない。特に、ラージャパクサ前大統領の影響は大きく、国連の意図していない結果を招いている(例:土地の接収によって国内避難民の自発的帰還が妨げられるなど)。ただし、事業地が決まれば、あとは国際機関が人々のニーズを十分な聞き取り調査を通して把握し、事業内容を決定している。

当初仮説2:多くの人々(特に女性)を意思決定過程に参画させることで、自分たちで生活改善を行おうとする意識を育てようとしている。また、マス・ミーティングを活用し、支援対象とならなかった人々に対して説明責任を果たそうとしている。しかし、ノウハウの不十分さによって効果的な支援が妨げられている事例も存在した。


マス・ミーティングが開かれる公民館にて



<積み残し・継続課題等>

・国連人間居住計画(United Nations Human Settlements Programme: UN-Habitat)によるコミュニティを主体にした取り組み(People’s Process)など、具体的取り組みの進行過程を追っていく必要がある。

・政府と国際機構の関係が、具体的な事業内容の決定や効果にどのような影響を及ぼすか。

・脆弱な人々が本当の意味で自立するために必要とされる「長期的な視点」は、どの程度考慮に入っているか。資金の問題など「長期的な視点」を組み込むためにどのような方策が必要かを検討する必要がある。



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<前半>
第1項 仮説のまとめ
第2項 紛争予防と平和構築の実現
第3項 後発開発地域にも配慮した持続可能な経済開発
<後半>
第4項 教育という切り口から考えるスリランカ
第5項 環境から考える持続可能性
第6項 「脆弱な人々」の観点からみたスリランカの現状と対策


 

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