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国連フォーラム主催
「みんなでつくる」スリランカ・スタディ・プログラム(SSP)




第2節 渡航前に立てた仮説の検証


<前半>
第1項 仮説のまとめ
第2項 紛争予防と平和構築の実現
第3項 後発開発地域にも配慮した持続可能な経済開発


第1項 仮説のまとめ

第2章で詳述したように、SSPでは、各勉強会チームに分かれて、渡航にあたって問題意識を明確化し、それに対する仮説を構築していた。それは、明確な目的意識をもって、現地事業訪問を行い、現地の人々、職員の方々に質問を投げかけるためであった。

本節では、実際の現地渡航(第3章)を踏まえて、渡航修了後に各勉強会チームで行った仮説検証結果をご紹介する。仮説検証結果を議論し合った勉強会には、東京大学より井筒節先生にお越しいただき、コメントを頂いたほか、国際社会におけるメンタルヘルスの役割についてもご教授頂くことができた。

勉強会の様子



東京会場にて、井筒先生と


<井筒節先生からのコメント>

「スリランカ・スタディ・プログラム」渡航後勉強会に寄せて

東京大学総合文化研究科・教養学部
教養教育高度化機構国際連携部門
 特任准教授 井筒 節

この度は、スリランカ・スタディ・プログラムのご成功をお祝い申し上げます。
本勉強会では、国連や政府関係者、市民社会組織(CSO)等のステークホルダーから現地で学んだ知識と体験に基づき、渡航前に立てた仮説の検証が行われました。平和構築、持続可能性、経済、教育、環境、脆弱性をめぐる6班に分かれ、専門的視点にたった検討と、班をまたいだ検証を行い、専門性と分野横断的な視点を確保する方法は、まさに人間の安全保障とこれからの持続可能な開発に欠かせないものであり、白熱した議論から多くを学ばせて頂きました。また、現場のリアリティと住民一人一人の気持ち、科学的エビデンス、地域や国の政策、国際の政策(国連主要機関における決定、計画・基金による実施、専門機関による支援等)についても、各レベルの状況とコンテクストに目を配った議論が印象的でした。このダイナミックな国際の現状を前に、若者の新しい視点やアイディアが次々と生まれる様子を拝見し、今後は、現地の若者と共に国際機関等の意思決定にもこのようなプロセスをフィードインすることの重要性を感じました。

このスタディ・プログラムでの貴重なご経験をもとに、参加者の皆さまが、人間の安全保障の重要な鍵である「人間の心のウェルビーイング」を活動の中心的指標に据えて、国際の平和と安全、開発、人道、人権の分野でご活躍されることをお祈り申し上げます。

<各チーム仮説一覧> ※クリックすると各仮説のページにジャンプします。
平和構築 1 和解について:
現在のスリランカは、事実究明がそもそも政府の非協力的な姿勢によって行われておらず、和解が成立している状態とは言えない。
2 格差について:
民族格差のみならず、教育や就職、信仰などの違いに伴う格差が生じている。また、国際機関の援助が格差を助長させている可能性がある。
3 移行期正義について:
処罰・不処罰どちらの手段をとるにせよ、何があったのか真実を明らかにすることが、紛争再発に寄与すると考えられる。
経済 1 国連が行う事業の選定方法・評価手法について:
世界食糧計画(United Nations World Food Programme: WFP)による学校給食ブログラムを事例とすれば、(1)職員による視察やアンケートを用いて、(2)定量的・定性的な基準を用いて決定する。
2 農業発展が経済に与えるミクロ・マクロレベルの影響について:
国連機関による支援は、地域レベルでの影響に留まり、国全体の格差の是正につながるほどの住民の生活の向上は見込めない。
3 スリランカにおける開発金融機関の役割について:
スリランカのGDP成長に鑑みれば、中進国としてみなされたうえで、開発金融機関は融資を行っていると考えられる。
教育 1 民族間・地域間格差について:
スリランカの教育においては民族間格差と地域間格差が存在している。
2 質の格差について:
スリランカの教育には「質」の格差が存在する。
3 高度人材の育成に向けた政府の方針について:
民族間・地域間で高等教育を受けられる機会の格差が存在し、その就学率も低いため、期待したほどの効果は表れていない。
環境 1 慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)の原因および対策について:
CDKの原因は、農業用水、飲料水として用いられる地下水に含まれるフッ素だと考えられ、CDK防止のための水質調査を専門家が行っている。
2 開発政策と環境保護のバランスについて:
経済効果の最大化が最優先であることから、環境への配慮は行われていないと考えられる。
脆弱者 1 子ども兵士への対応策について:
子ども兵士に対して心のケアを行うリソースが欠如している。
2 国連機関による事業の決定過程について:
国際機関が行う事業は、(1)政府の意向を受けて支援対象者のニーズを把握しようとするが、(2)効果は地域の事情や背景に左右される。



第2項 紛争予防と平和構築の実現

仮説1 和解について:

現在のスリランカは、事実究明がそもそも政府の非協力的な姿勢によって行われておらず、和解が成立している状態とは言えない。


<問題意識>

【スリランカにおいて和解は成立しているといえるのか】

和解をどのように進めていくのかという点は、どの国においても紛争後の課題として残るものである。スリランカの場合、2009年に紛争が終結し、タミル・イーラム解放のトラ(Liberation Tiger of Tamil Eelam: LTTE)のみが“悪”として捉えられているが、はたしてそのような状態で和解は成立しているといえるのだろうか。



<当初仮説>

スリランカにおける和解を考える場合、「誰と誰の和解なのか」という問題がある。紛争の始まりは民族同士の争いであったが、次第に戦うのは「政府」と「LTTE」という構造に変化していったためだ。さらに、闘争関係にあった当事者のみでなく、それらをとりまくシンハラ人、タミル人、そしてムスリムすべてが和解には関係しているため、事態は複雑を極めている。

そのため、本班では民族という枠にこだわらず、どの関係性においても、(1)紛争中に戦争犯罪と呼ばれるものが、どのように、だれによって行われたのか(事実究明)、(2)それをどう思うのか(気持ちの共有)、(3)今後どうするのか(リスク低減)を考え、相互理解を深めることを和解として考えることにした。

その観点から考えると、現在のスリランカは(1)の事実究明がそもそも政府の非協力的な姿勢によって行われておらず、和解が成立している状態とは言えないだろう。また、政府以外に中心的存在となる人物がおらず、少数派のタミル人は自分たちが経験したことについて話せない環境にある。そのため、タミル人からそのような動きは起こしづらい。

また、シンハラ人もLTTEとの戦いと考えていたため、タミル人との和解はそもそも見当違いであり、必要性はないと考えている可能性がある。



<仮説検証結果>

当初の仮説で考えた(1)〜(3)に当てはめて考えると、未だに(1)の課題がのこるものの、国際移住機関(International Organization for Migration: IOM)の支援している村のように、和解が成立している場所もあるため、和解が成立しているかどうかは、地域やコミュニティによるところが大きいといえる。ただし、現状ではシンハラ人とタミル人、そしてムスリムの生活地域が分かれているため、相互理解を行う機会がそもそも少ないことが伺える。

また、予想と異なり和解を進める中心的存在としてサルボダヤ職業訓練センターが存在していたものの、取り組んでいる内容は理想論に近く、多くの人を巻き込んでいくには課題があると考えられる。


<積み残し・継続課題等>

・誰が、どのように和解を進めていくことができるのか
中心的人物の不在や、民族紛争ではなく、テロとの戦いと捉えられている傾向も強いなか、シンハラ人、タミル人、ムスリムによる和解をどのように進めていくのかなど、根本的な課題が未だに残っている。理想論ではなく、現実的な問題解決になるような取り組みが、今後誰によって、どのように進められていくのか見守っていきたい。

・民族同士が接触する機会がない地域では、互いの存在に対し恐怖心などはあるのだろうか
IOMの支援している村では、紛争後であってもお互いの民族に恐怖心はないと言っていた。しかし、それ以外の接触機会のない地域では、未だに恐怖心が残っている可能性も考えられる。生活地域が違うという、物理的な壁をどのように乗り越えていくのかという点も重要な課題といえる。


仮説2 格差について:

民族格差のみならず、教育や就職、信仰などの違いに伴う格差が生じている。また、国際機関の援助が格差を助長させている可能性がある。


<問題意識>

格差は平和の定着を妨げる一つの要因となると考えられるが、スリランカの格差はなぜ発生したのか、どうすればゼロに近づけることができるのか。また、格差是正のために国際機関や政府ができることは何か。

スリランカにおける格差に関連する項目として、以下のような事項が考えられる。

1.紛争が終わった後、難民・国内避難民が帰還したとき彼ら彼女らは歓迎されたのか否か。
2.就職格差(特に地方部)について政府や国連機関は危機感を持っているのか。貧困層のエンパワーメントは今後どのように行われるのか。高学歴者が就職できない現状をどのように改善するか。
3.信仰の違いによって起こる格差とはなにか。
4.タミル人・シンハラ人で通う学校が異なる中で、タミル人とシンハラ人が互いの文化を理解できるような取り組みは行われているのか。
5.社会的弱者に対する就労支援の受け手は支援を受けることについてどのように感じているのか。
※以下の当初仮説と仮説検証結果は、上記の1〜5に対応


<当初仮説>

1.土地に戻ったとき、違う民族(土地を奪った民族)が既に定住しており戻れないことや、住み辛さを感じることがあるのではないか 。
2.教育を受けたのにもかかわらず就職先がないという状況は南北格差・貧富の格差を拡大させ、社会不安を招くだけでなく、新たな紛争の火種になる可能性があるのではないか。
3.スリランカにおける少数派であるイスラム教徒は、ムスリムコミュニティ外でのモスク建設の際シンハラ人の仏教徒から反対されるなど宗教の違いによる差別がある。その差別が、ムスリムの居住、就職を困難にし、格差につながっているのではないか。
4.民族格差がおこる原因のひとつに幼い頃から互いの文化を受け入れられるような教育が行われていないということが挙げられる。現在はまだ少数派のアイデンティティを守る取り組みが優先されており民族融和を導く教育は行われていないのではないか。
5.国際社会の押し付けになっていないだろうか。国連機関は支援される側が受動的ではなく、能動的に実施事業に参加するようになるために、現地の状況についての理解を深める方策が行われているのではないか。
→紛争時や植民地時代の二重政策だけではなく、国際機関の援助が格差を助長させている可能性がある。


<仮説検証結果>

1.戻って来たときに家やインフラが破壊されているなどの物理的な住み辛さはあった。しかし精神的な住み辛さはなかった。
2.国際機関は政府に政策提言などを行っているが、そもそも職がないため失業率は高い。
3.直接的な答えは得られなかった。しかしサルボダヤでは、仏教徒もキリスト教徒もムスリムもヒンドゥー教徒も共に参加できる方法を用いて宗教を超えて和解する事業を行っていた。
4.第一言語を母国語、第二言語をタミルもしくはシンハラに設定し、お互いの文化を理解できるように助けている。特に北部では就職に有利になるよう母語のタミル語に加えシンハラ語を早い段階から勉強している。
5.明確な答えは得られなかったが、国際労働機関(International Labour Organization: ILO)の事業を訪問した際、村人が積極的であり「やらされている」という様子はなかった。

<積み残し・継続課題等>

・これからスリランカが成長していくにつれて、格差はさらに広がると考えられる。その際、政府や国際機関はどこまで支援するべきなのか。

・今回訪問した事業は成功例のため、想定していたような格差を目の当たりにする機会はあまりなかった。しかし、それ以外の事業や、国際機関の支援が入っていないところで、声すらあげられない人たちがいるのではないか。

・失業問題の改善と、経済成長のバランスを政府がどのようにとっていくのか。

・タミル語もシンハラ語も教育課程に含まれるのが理想だが、現状地方では人材不足などもあり実現できていない。どうすればこの課題は解決するのか。


仮説3 移行期正義について:

処罰・不処罰どちらの手段をとるにせよ、何があったのか真実を明らかにすることが、紛争再発に寄与すると考えられる。


<問題意識>

スリランカにおける「和解」のために、戦争犯罪に対する正義の追求は必要なのか。また、必要な場合どのようにして行われるべきか。


<当初仮説>

紛争時に誰がどのような犯罪行為を行ったのかの調査、および処罰が行われない場合、主にタミル側に不満・不安がのこり、紛争再発の危険性があるため、中長期的に考えれば正義の追求は必要といえる。手法に関しては処罰・不処罰どちらも可能性があるが、何があったのか真実を明らかにすることは欠かせないだろう。


<仮説検証結果>

調査を行うことは正義を追求するための第一歩といえるが、政府の姿勢に左右される部分が大きい。しかし、ラージャパクサ氏からシリセナ氏へ政権が変わったことで、真実究明が進むことが期待される。一方、現地では「過去の事はぶり返しても仕方がない。」 という声もあるように、すでに一般市民の間では過去の出来事になりつつある。また、和解、真実追求などの「正義」よりも、自分の生活に直結する「経済発展」を優先すべきと考える人が多いのも事実だ。正義の追求が他人事にならないよう、いかに国民を巻き込んで真摯に行えるかが重要な点といえるだろう

また、スリランカ国内と国外で真実究明をどの程度重要視するかという、度合いに大きな差があると考えられる。それはスリランカの人々だけでなく、国際協力機構( Japan International Cooperation Agency: JICA)、日本大使館の方にお話を伺った際も、真実が明らかになっていないことはそこまで重要視されていなかった。また、真実を明らかにすることで政府、LTTE以外の一般人の罪も明らかになる可能性があり、状況がさらに混乱することも想定されるため、そもそもあえてそこに取り組むことで、「誰に」「どんな」良いことが起きるのかを再考する必要がある。(取り組まないほうが「和解」につながるのではないか。ということも考えられる。)


<積み残し・継続課題等>

・シリセナ政権下での移行期正義への動き
→ラージャパクサ政権に比べ、調査を行うことに前向きであり、人権理事会でもスリランカ政府が中心となって調査を行うことに支持を示したが、今度どのように進められていくのか。移行期正義や真実究明に必要な機関・しくみの設置、 国際社会の監視体制をどう置くのか。

・いかに地域や 民族間の安定を図りつつ真実究明を進めていくか
→検証結果にも記載した通り、真実追求を行うことが必ずしも「良い」結果を生むとは限らない。進めていくのであれば、地域や民族に配慮した方法が求められる。

・そもそも国民(特にシンハラ)が真実究明の重要性についてどのように考えているのか。
→テロとの戦いという声や、過去の出来事という声も多く、現時点ではあまり重要視されていない可能性も高い。調査を行うのであれば、どのようにその意識を高めていくかも課題といえる。


第3項 後発開発地域にも配慮した持続可能な経済開発

仮説1 国連が行う事業の選定方法・評価手法について:

世界食糧計画(United Nations World Food Programme: WFP)による学校給食ブログラムを事例とすれば、(1)職員による視察やアンケートを用いて、(2)定量的・定性的な基準を用いて決定する。


<問題意識>

WFPの学校給食プログラムにおける成果評価手法・学校選定方法はどのようなものか。
WFPの成果報告書によれば、スリランカでは958の学校、16万人に毎日給食を配っている、という記載があった。
(1)どのような基準で学校を選んで配っているのか。
(2)どのような基準で成果を測っているのか。



<当初仮説>

(1)職員が視察に入り、定性的な評価や教師との面談によって選定されると考えた。
(2)身体測定値(定量的基準)・生徒の活発さについて教師からのアンケート(定性的基準)によって成果が想定されると考えた。


<仮説検証結果>

(1)各々の学校を脆弱性の指標で測定して、北部の95%の学校に配布している。
(2)栄養失調率、児童の退学率など定量的な成果評価指標を活用しているという回答を得た。

<積み残し・継続課題等>

・2020年に撤退することを目標にしているのにもかかわらず、給食支給量が増加しているため、実際に撤退が可能なのか疑問である。

・給食を運営しているのが生徒の母親のボランティアとのことであったが、持続可能な仕組みにするならば、母親達を雇用して運営するべきではないのか、という新たな論点が出た。


仮説2 農業発展が経済に与えるミクロ・マクロレベルの影響について:

国連機関による支援は、地域レベルでの影響に留まり、国全体の格差の是正につながるほどの住民の生活の向上は見込めない。


<問題意識>

GDPの1割を占める農業に労働人口3割が張り付いている状況から、農業技術支援にどれだけの潜在的な価値があるのかを検討したい。農業を発展させることでどこまでミクロレベルで生活を、マクロレベルで国を向上・発展させることができるか。


<当初仮説>

国連機関の支援により被益者の生活が劇的に変わるほどの効果はないだろう。また、地域レベルでの支援に留まり、国全体の格差の是正につながるほどの住民の生活の向上は見込めないであろう。


<仮説検証結果>

・具体的に収入が15,000から25,000ルピーに上昇したという例を、国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations: FAO)の事業地で伺い、所得は実際に向上している印象を受けた。要因は間作による農作物の種類の増加や高付加価値作物の新規栽培である。また、SSP参加者からは、地域レベルの活動も、国レベルの事業と同様に大事であり、規模の大小で比較できる問題ではないという意見があった。

・より高付加価値の製品を適切な市場と価格で販売できるような仕組みが整えば、長期的な視点での生活向上が望めるようになるのでは、という意見が出た。


<積み残し・継続課題等>

・スリランカ国全体の経済というマクロの観点から見たときに、農業を活性化させることが、どの程度国全体の経済成長に貢献するか調べたい。

・農業におけるイノベーションを生み出すには、それを教育できる人材が必要だが、そのような人材をどのように確保するかという戦略が必要である。


仮説3 スリランカにおける開発金融機関の役割について:

スリランカのGDP成長に鑑みれば、中進国としてみなされたうえで、開発金融機関は融資を行っていると考えられる。


<問題意識>

開発金融におけるスリランカ特有の問題、および普遍的な課題などは何か。最貧国ではない国での援助手法の特徴は何か。


<当初仮説>

一人あたりGDPが3,000ドルを超えたスリランカでは、最貧国を対象とする国際開発協会(International Development Association: IDA)ではなく、貧困国から中進国を中心とする国際復興開発銀行(International Bank for Reconstruction and Development: IBRD)が融資の主流ではないか。


<仮説検証結果>

・2014年の情報では、IDAの融資額はIBRDの2倍である。地方では特にIDAが主流で、所得や貧困レベルによる業務棲み分けを実施している。

・世界銀行やアジア開発銀行は技術協力を含めた銀行業務を中心に行っており、国連機関は現場に入って活動する棲み分けを再認識した。

・世界銀行などは、政府の成長戦略に沿って融資案件を決定している。実現可能性を勘案しつつ、政府の意向を重視していることがわかった。

・日本の技術は大いに役立っているが、時に高額で過剰品質という観点から入札段階で不採用となることもある。

・開発金融機関は大型案件に注力したいのではないかという考え方をしている参加者もいる一方で、規模の小さな案件も重要であるという意見もあり、価値観の違いを感じた。政府が中長期での戦略を持ち、投資案件を選択していくことが重要であると考えた。


<積み残し・継続課題等>

・各案件に関して、開発金融機関といわゆる国連機関との対立や軋轢があるのか、それが具体的にどのような問題を生じさせているのかについて更に調査していきたい。

・NGOによるマイクロファイナンスと世界銀行などの開発金融機関との協調体制があるのか、相乗効果が生まれる余地はないかを調べたい。


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第1項 仮説のまとめ
第2項 紛争予防と平和構築の実現
第3項 後発開発地域にも配慮した持続可能な経済開発
<後半>
第4項 教育という切り口から考えるスリランカ
第5項 環境から考える持続可能性
第6項 「脆弱な人々」の観点からみたスリランカの現状と対策


 

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