ネパール・スタディ・プログラム

第9節 国連人間居住計画(UN-Habitat)

2016年11月23日
午前8時 ブリーフィング(Hotel Araniko)
午後1時 サイト訪問(Sindupalchowk)

執筆担当者:伴ちひろ、藤井理緒

概要
国際連合人間居住計画は1978年に「国際連合人間居住センター」として設立された。2002年の改組でその地位と機能が強化され、国連総会に直結する機関のひとつとして現在の名称となる。人間居住に関するスラム問題、都市の過密、農村の過疎、都市計画、土地・住宅問題、上下水道、交通、廃棄物処理、建築資材、住宅融資等広範な問題に対し、問題解決のための研究、指針の作成、各国・各国際機関との情報交換、広報活動、研修、専門家派遣、パイロット・プロジェクトの実施等の活動を行っている(参考:外務省ホームページ)。福岡市にアジア太平洋地域本部がある。ネパールでは、2015年に起きた大地震に対する緊急支援、社会的弱者のためのモンスーンに備えるシェルター提供などを行なっている。

主要な論点

  1. プロジェクト概要
    ネパールで2015年4月25日に発生したマグニチュート7.8の地震により、家屋の600,000棟が全壊、300,000棟が半壊する被害を受けた(UN-Habitat, 2016)。そのため多くの人がブルーシートのみで天井を覆った仮設住宅で起居しており、6月後半から始まるモンスーンまでに雨風が凌げる緊急シェルターが必要であった。この課題に対するUN-Habitatのプロジェクトが「社会的弱者のためのモンスーンに備えるシェルター提供(Shelter Provision for the Most Vulnerable Households Before and During the Monsoon)」で、2015年6月から2016年2月にわたって実施されている。主な対象地域は特に被害の大きかった Kathmandu、Lalitpur、Bhakapur、Sindupalchowk、Dolakhaの5郡である。特筆すべきは支援対象とする世帯の選定を地域コミュニティとの話し合いで進め、女性が世帯主である、老人・妊娠中の人・障害者などがいる世帯を支援したことである。

所感
午前は簡単にブリーフィングを受けた後Chautaraの中心地から20-30分ほど離れた村にあるUN-Habitatが提供するシェルターを見学したが、そのサイトを訪れるまでの道のりが険しく、災害時の支援の行き届きにくさを体感した。支援しているUN-Habitatは「仮設住宅」として提供しているのに対し、シェルターに実際に住んでいる方々は「10〜20年住むつもりである」とお話してくださり、住居一つとっても支援者と受益者の価値観が異なることに驚くと同時に、支援がどれだけ必要とされているかを痛感することができ、UN-Habitatに感謝しているということを真摯に話す女性の受益者の話に感銘を受けた。