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第45回
「日本のアフリカ開発へ向けた取り組みと国連外交」
森 美樹夫さん
国連代表部経済部公使
第44回
「日本とアジア~世界の平和構築に如何に貢献すべきか
−現場での取組、知的貢献、そして人材育成−」
紀谷 昌彦さん
外務省総合外交政策局国際平和協力室長 
第43回
自然災害に対する国連人道支援−インド洋津波の教訓
猪又忠徳さん 
国際連合諸機構合同監査団 監査官

第42回
世界銀行と脆弱国家
黒田 和秀さん 
世界銀行 脆弱・紛争影響国ユニット 上級社会開発専門家 

第41回
難民救援から平和定着へ-現場でみた国連の活動
水野孝昭さん 
朝日新聞NY支局長

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「第52回婦人の地位委員会と日本女性監視機構(JAWW)報告」

原 ひろ子さん
JAWW代表、城西国際大学客員教授、お茶の水女子大学名誉教

2008年3月3日開催
於:ニューヨーク日本政府国連代表部会議室
国連日本政府代表部/国連フォーラム共催 合同勉強会

 

質疑応答


■Q■ 北京会議当時に比べると、ずいぶん議論が進んできたという感じがする。しかし、女性の活躍が増えてきた一方で、優秀な女性は外国へと仕事の場を求めているようだ。未だに、国家公務員の男性ですら育児に参加できず、また女性も家事の兼ね合いが難しいというのが現状である。なお、報告書のp. 40の「育児・介護休業への所得保障を充実し、休業取得者の生涯所得にペナルティを科すような処遇を見直すこと」とあるが、「ペナルティを科す」とは何を意味するのか。

■A■  依然として数は少ないが、国家公務員は企業に比べ、育児休業が比較的浸透している。とりわけ内閣府男女共同参画局に勤めている方の中には、まだ短いが1ヶ月ほどの育児休暇をとるケースもある。育児休暇のとり方には、様々なパターンがあるが、多くの人が英気を養って職場に復帰してくるようだ。また、そのような方たちが、育児休暇をとりたいと考える人の相談相手にもなっているようである。

(独)産業技術総合研究所、(独)物質・材料研究機構、(独)森林総合研究所などでは、文部科学省から「科学技術振興調整費プロジェクト」「応援します!家族責任を持つ女性研究者」として助成金が出されて、女性研究者が育児をしながら研究を続けられるよう工夫することが求められている。このような研究所では、自己資金の中から男性への育児休業・休暇および保育の資金をサポートしている例もある。ペナルティを科さないということは、このように、育児休業などによって研究費を稼ぐ機会を減らさない、また育児休暇に入ることが、給与決定の評価に影響を及ぼさないということを意味している。また、中小企業でも男性に育児休暇を与える会社が出てきている。事例として、青森県に県外の人が育児設備が整っている工場を作り、近隣の人を育児施設の働き手として雇うなどして、育児と就業を支えることに成功している小さな企業もある。経営者の柔軟性と想像力により、中小企業でもこのような環境を整えている例もある。

■Q■ 政府において、未だ政策決定の場に立つ女性が少ないが、その背景と解決策は。

■A■ 日本には、女性が物事を決めるような頭を持っていないという意識、女性は表に出て色々なことをこなす力がないという意識が未だ強いのではないだろうか。男女雇用機会均等法成立後でも、働き方の問題で、上手く機能していないのが現状である。今の日本では、家事・育児、そして特に介護の負担が女性にかかることが多く、それが政策決定者としての地位に女性が就くことを妨げている。

■Q■ ディーセント・ワークとは。

■A■ ディーセント・ワークとは、仕事の質に対して、それに見合った賃金を払うとことである。女性にとっては、事業を起こすときに銀行から融資を受けるのが難しい。特に、農家の女性が起業する際は、まず夫の名義で借金をし、その借金を返してから自分の名義で借りる、という二段構えの段取りが用いられている。他方、経営が安定している環境で、東京で起業する女性は、簡単に銀行から融資を受けることができたという例もある。ある一定の財力を持っているとみなされる女性に対しては、女性の着実な事業の展開の仕方が評価を得ており、安心してお金を貸せると考えられていることもあるようだ。なお、報告書のp. 26の第二段落にILOによる定義(注にはその原典である英語の定義)があるのであわせて参考にしていただきたい。

■Q■ 日本の女性団体の移り変わりの最近の流れ、特に、国際的な観点からはどのような流れなのか。また、女性団体は日本にどのような貢献を成し得るのか。

■A■ 戦後初期、全国的に組織された女性団体は60ほど存在していた。例として、戦争で夫を亡くした女性が、生涯独身で過ごすことになり結成した独身婦人連盟が挙げられる。独婦連は1999年から2000年にかけて解体した。高齢化などにより、徐々にメンバーが減ってしまったことが主な理由である。現在は33団体存在し、国際婦人年連絡会など、政府にロビイングする団体として依然として重要である。

高齢社会をよくする女性の会は国連婦人年連絡会に所属していない新しい団体であり、全都道府県に支部がある。以前のピラミッド型とは違う体系で活動しており、今後ともこのような新しい形が必要なのではないだろうか。優秀な男性・女性が、日本のNGOで活躍しているが、活動を維持するためにも資金面や働く環境を見直す必要がある。

■Q■ 男女雇用機会均等法の改正がなされたが、実際の影響力は少ないと感じる。それを規定する処罰規定などは作られないのか。

■A■ 経営者側の考え方が変わらなければ実現は難しい。しかし、労働組合に関しても、男性が代表であることが多く、経営者側と同じく、労働組合側も女性の権利に関しては意識が低いようだ。処罰規定を作りたいと政府は考えているが、抜本的な改革を行うとすれと抵抗を受け、実現は難しい。ジェンダー平等とは男女両方の参画を意味する。粘り強く取り組まなければならない。



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議事録担当:田辺



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