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第39回
「小型武器問題−国連行動計画の履行と日本の取組み」
益子 崇さん
国連軍縮部
プロジェクト調整官
第38回
国連平和構築委員会の現状と展望
〜議長国に就任して

星野 俊也さん
国連日本政府代表部 公使参事官
ピースビルダーのための寺子屋とは
〜広島平和構築人材育成センターの挑戦

上杉 勇司さん
広島大学大学院国際協力研究科准教授

第37回
国連アフガニスタン支援ミッション
(UNAMA)の現状と課題
川上 隆久さん 
UNAMA官房長(Chief of Staff)

第36回
緊急援助における公衆衛生の役割
國井 修さん
国連児童基金(UNICEF)
保健戦略上級アドバイザー
第35回
障害者の権利条約--その意義、
条約策定過程、今後の課題

伊東 亜紀子さん 
国連経済社会局(UN/DESA)

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「気候変動の影響と、アジアそして日本の取り組み」
三村 信男さん
茨城大学地球変動適応科学研究機関


2007年7月31日開催
於:ニューヨーク日本政府国連代表部会議室
国連日本政府代表部/国連フォーラム共催 合同勉強会

質疑応答

 

■Q■ IPCCの報告書の作成プロセスには政府の関与がどのくらいあったか? 

■A■ 執筆責任者を選ぶ段階では政府の思惑がほとんど入らない。IPCC総会の参加国の政府が執筆責任者を全部で数千人推薦する。その中から、専門家は、章ごとに(報告書には全部で20章がある)最適な人を選ぶために、候補者の資格や研究実績を検討しながら、決めていく。専門家が指名した科学者のリストをIPCCの事務局に出し、先進国の研究者に固まっているか、ひとつの国が多くなりすぎているか、ぜんぜん入っていない国があるか、地域的なバランスを勘案し、最終的にリストを決める。そのリストについては、IPCCの総会から了承を求めるが、内容が大きく変わるということはない。

報告書のドラフトの段階では、政府の思惑がコメントという形で反映される。各国政府は自由にコメントができるので、同じ文書に対してコメントが幅広く付される。執筆責任者は、コメントを取り上げるかどうかを判断するが、その判断には政治的な関与がなく、科学的な基礎があるかどうかが決め手となる。

■Q■ 日本の海岸を海面上昇から守るために、護岸壁の工事費用にはどれくらいかかるか。

■A■ 私は10年以上前に昔の運輸省の方と一緒に試算したことがある。日本の海岸線(港にくっついている海岸も含め)全てを1メートルの海面上昇から守ろうとすると、私の試算では費用が11兆5000円かかる。更に、自然の海岸を護岸壁で守るために、昔の建設省が試算した金額では6兆円かかる。

日本を全て構造物を作って守る必要があるかというと、そうではないと思う。人口が密集して、非常に危険な海岸に集まっている3大都市圏は、絶対に構造物を作ってしっかり守らなければいけない例である。しかし、今後、人口が減少する社会になるので、人口の密度が少なくなっている場所では、護岸壁を作る代わりに住民が後ろに下がるという対策も考えられる。日本ではそうならないだろうが、今後、世界的にこの二つの対応策を検討する必要があると思う。

■Q■ 7月に中国の温家宝首相の声明で気候変動問題に緊急の対策を講じる必要があると発表されたが、その声明では具体的なコミットメントを示さなかったことについてどう考えているか?

■A■ ポスト京都議定書において、ぜひ越えなければいけない問題は、まだアメリカと途上国が参加を拒否しているということだ。高い目標を掲げ、全部の国がそれに参加し、認定するのは理想的だが、その方向に行くかどうかは交渉ごとだし、それぞれの国のスタンスがあるので、大変だと思う。

今まで中国は、京都議定書の承認について議論すること自体消極的だと思った。ところが、去年の秋くらいから世界の潮流が変わり始め、今年に入って、IPCCの総会では中国の反対意見の発言回数が少々減った。そして、中国の温家宝首相が新しい政策を発表する2週間くらい前に、驚くことに、サステイナビリティの会合で、中国の研究者と政府の関係者が環境保全について、きわめて積極的な発言をした。

今から中国は世界で一番大きな二酸化炭素ガス排出国になるので、排出そのものを抑えると言わなかったのは不十分だという見方もある。しかし、中国が、それぞれの立場や到達地点を確認しながら、温暖化問題を解決するために努力をしなければいけない、という姿勢で声明を発表したということについては、今までにない変化だったと思う。

■Q■ IR3Sは日本政府のサポートがどのくらいあるか?その研究に基づいて、日本政府に対しての助言や具体的な貢献があるか?

■A■ IR3Sは文部科学省の管轄下で5年間のサポートがある予定で、今年は2年目になる。3年後に政府のサポートがなくなっても、このプロジェクトをわれわれの運営のもとで継続したい。研究費は助成金で続けられるかもしれないが、他の資金については民間企業と一緒に組むことで調達しようと考えている。

IR3Sはサステインナビリティ学の研究と教育を推進、創生するのが目標なので、基本的に直接政府に何かを提言するということはない。ただし、IR3Sのメンバーの中に、いろいろなシンクタンクに所属している人やIPCCの執筆責任者が何人もいるので、そういう人たちを通じて、われわれの考え方を発信していきたい。

■Q■ 一般の人々が、アル・ゴアの映画、「不都合な真実」を見て、環境問題について関心を持つようになった。日本でもゴア氏と同じように、プレゼンテーション能力を持って、環境問題について語れる若者や研究者をトレーニングしているか。

■A■ IR3Sではそういうトレーニングを行っていないが、アウトリーチを非常に重視している。例えば、毎年2月に東京大学主催の一般公開シンポジウムを開き、1500人くらいの聴衆がいたので、非常に効果的だった。今年は「資源と環境が支える地球と人類との未来」というテーマについて、トヨタ自動車の名誉会長の奥田碩さんや、元外務大臣の川口順子さんがお話をされた。今後とも、ハイレベルな形で社会に対して、環境問題に関する情報を発信できるように努めていきたい。

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議事録担当:穴井



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