サイト内検索



第26回
安全保障理事会の役割と課題
川端 清隆さん
国連政治局安全保障理事会部


第25回
平和構築の時代
星野 俊也さん
国連日本政府代表部

第24回
安保理における政治力学
松浦 博司さん
国連日本政府代表部

第23回
ジョグジャカルタ地震
とスマトラ沖地震

中村 俊裕さん
国連開発計画
インドネシア
事務所

第22回
紛争後およびPKOにおける国連の選挙支援
宮村 浩子さん
国連政務局選挙支援部(EAD/DPA)

全タイトルを見る⇒
HOME勉強会 > 第27回


第27回 「国際開発研修」

藤村 建夫さん 国際技術研究所(ITI)上級経済研究員 
兼 国連開発計画(UNDP)南南協力部特別顧問
久木田 純さん 国連児童基金(UNICEF) 事業資金本部 上級事業資金担当官
田瀬 和夫さん 国連人道問題調整部(OCHA)主査
須永 和男さん 国連日本政府代表部公使
黒田 和秀さん 世界銀行上級社会開発専門家 
小松原 茂樹さん 国連開発計画(UNDP)カントリー・プログラム・アドバイザー

 


2006年11月3日開催
於・UNDP
JASID/国連フォーラム 合同勉強会


 はじめに-藤村 (敬称略、以下同)
JASID活動紹介−JASID ニューヨーク支部院生部会幹事 −河村
国連フォーラム活動紹介及びインターンについて −久木田
■1■ 人間の安全保障 −田瀬
■2■ 国連の開発戦略と日本 −須永
■3■ 紛争と開発 −黒田
■4■ アフリカにおける開発 −小松原
■5■国際競争力を持った援助人材育成戦略 −藤村

■ はじめに

1)JASIDの説明およびニューヨーク支部ホームページ開設予定(情報交換、課題別資料の提供-e library-など)−藤村
●JASIDの良い点は研究を行うことによって知識と能力の向上を図り、成果を蓄積することにある。今後、ニューヨーク支部では、「国際競争力を持った援助人材育成戦略」について研究プロジェクトを立ち上げたい。

2)JASID 院生部会活動説明ー河村

3)国連フォーラム及びインターンの説明 −久木田
●インターンの意義:国連の活動に関心のある人が、それまでの経験、学業に加え、国連で働くためのcompetency(能力)を効果的に身につけるための機会。問題の文脈を捉え、本質に触れることが出来る。知識だけでなく感情レベルでの動機付けが必要。(本サイト内 国連でインターン を参照)

■1■ 人間の安全保障 −田瀬

人間の安全保障-なぜ生まれたのか 冷戦の終結後、2つの大きな変化 
1) 国家があり国民を守るという前提が崩れ、内戦や民族紛争が増加 
2) グローバリゼーションにより、国家があっても無くても防げない課題が増加(例:地球温暖化、アジア通貨危機)
 - 従来とは異なる概念による対応が必要
 - 1994年人間開発報告で特集。2000年のミレニアムサミットで人間の安全保障委員会を設置して検討
 - 供給側の論理からの発想の転換

●個人の安全は、身体の安全や紛争が無いことだけでなく、教育、保健、雇用、精神的な安定などとも関連(interlink)している。包括的な理解と対応が必要
●90年代のpost conflict gap(紛争後の支援において、担当機関が停戦監視、PKO、緊急人道援助などの業務をそれぞれ終えた後、開発に移行することなく撤退したため、支援のギャップが生じた。5年以内に50%以上が紛争状態に逆戻りしたこと)の反省
●人間の安全保障とは、支援する国際社会(供給側)の論理に拠るのではなく、危険な状態に居る人々の視点から必要な支援を組み立てていくdemand side securityである
"人間に国際社会が合わせていく"という意味で、国連改革を根底から考え直すロジックにもなる
●国際的にもFreedom from fear and freedom from want (恐怖と欠乏からの自由 注: General Assembly resolution 60/1, paragraph 143. The UN 2005 World Summit)と開発をつなげる概念であるとの理解が高まってきている
●実践:人間の安全保障基金によるプロジェクト(累計で300億円、約160件。1件あたり1-4億円、期間1-3年、現在動いているのは約140件)。コミュニティのニーズを特定してから、必要な資源を持ち込むという形で展開。

Human Security for All 写真展 2006年10月19日〜12月3日まで 於・国連本部ロビー

■2■ 国連の開発戦略と日本 ―須永

1)収斂する国連と世銀の戦略
− ワシントン・コンセンサスからMDGs(Millennium Development Goals) へ:
世銀は新古典派経済学的なアプローチ(ワシントン・コンセンサス)から、貧困に焦点を当てた包括的アプローチへ転換する。国連の復権、世銀の国連化。
− 国際社会が共通の開発目標をもつことでグローバルパートナーシップ形成:援助の重複を防ぐため援助協調が重要。

国連の取り組み:
●ミレニアムサミット(2000)、持続可能な開発に関する世界首脳会議(2002)、モンテレー開発資金国際会議(2002)、ミレニアムプロジェクト、世界首脳会議(2005)、国連システムの一貫性に関するハイレベル・パネル(2006)・・・目標から実施面へ移ってきている。
●総会、経社理、基金計画の執行理事会-途上国も一様ではない。例)ある程度発展した中進国はMDGsの議論に熱心ではない
●国連では十分対応できない問題-国際金融、債務、貿易など。例)貿易問題はWTO主導、債務問題は世銀、IMF、G8主導。
●国連しか対応できない問題は政治的な問題。例)安全保障理事会

2) 日本の開発政策
●援助量で見るとどうなるか:ODA量、国際機関への拠出、ともに減。革新的資金メカニズム(innovative funding mechanism)には消極的。
●援助のやり方で見るとどうか:ほとんどプロジェクト支援。プログラム支援や財政支援はまだ少ない。
●援助の考え方はどうか:日本の戦後の経験をもとに貧困削減とインフラ支援。ガバナンス(物事を管理する手法の総体のこと。ここでは政府が自分の国の政治や経済をきちんと運営できるか)とオーナーシップ(押し付けでなく自ら主体的に運営できるか)については、欧米諸国のドナーに比べ日本はあまり口を出さない。人間の安全保障。日本は概念レベルでの国際貢献が少ない。
●援助の分野で見ると:平和構築、持続的開発、ジェンダー、感染症、教育、災害予防など。今一番力を入れているのが平和構築。
●地理的配分を見ると:アジアの割合は少しずつ減、その分増えているのは中近東(イラクとアフガン)。
●日本の課題は何か、やるべきことは?:国内でのサポートをどう得ていくかも重要。中国はOECDに加盟しておらず、DACガイドラインと関係なく支援を行っている。新興ドナーを含めた対話の枠組が必要。


■3■ 紛争と開発 −黒田

紛争の数は減りつつあるが、起こっている紛争はなかなか終わらない。紛争の定義:一年に死者千人以上(スウェーデンの研究所SIPRIによる)

1) Overview
紛争はどの社会にも起こりうる。特徴:国内紛争、低所得国で特にアフリカに多い。

2) Evolving conflict/development agenda
ひとつひとつの紛争も、国連や世銀の対応も全て異なる
NGOも含めた援助側の国際協調、包括的な対応が必要
開発と紛争予防:operational prevention(政治・軍事), structural prevention(経済構造・社会構造), systemic prevention(グローバルな紛争予防)
Paul Collier (オックスフォード大学教授) による研究 内戦の経済的側面 紛争の発生は、天然資源のマネジメントや若年層の失業率等と深く関連している

3) Issues, actions and challenges
平和構築委員会: 2005年安保理決議で設立されたが、具体的行動は?
セキュリティーと開発:治安が悪化していても紛争ではない場合もある セキュリティーについての概念整理が必要
Conflict sensitive development:紛争予防の側面を考えた開発 コンフリクト分析

4) 紛争/開発の課題と世銀
1. 世銀加盟国のうち4分の1が紛争の影響を受けている-従来のように紛争が終わってから開発を始めるのではなく、できる地域から始めるなど、新しい取り組みが必要
2. 他援助機関との協力が必要-従来の相手国との1対1での業務とは異なる 世銀職員の姿勢も変えていく必要
3. "Not business as usual" 従来の時間をかけて案件を作るやり方からの転換
4. 工夫して新しい政策を作る 無償資金協力など 
5. 脆弱国家fragile stateへの対応 世銀内に新しいユニット設立。アフガン、ソマリアのような国が国際テロの温床になったことの反省による

参考)
Global issues for global citizens: An introduction to key development challenges (Bhargava, K., 2006)
戦乱下の開発政策(世界銀行[編], 2004)


■4■ アフリカにおける開発 −小松原

UNDPの役割
1) 開発援助の調整 resident coordinating function
2) UNDPによる開発援助:専門とする開発援助の5分野はガバナンス、貧困削減、エネルギーと環境、紛争解決及び復興、HIV/AIDS  5分野全てにまたがる課題としてジェンダー、ICT

● ガバナンス:国の発展段階、対象(選挙支援、政府、司法、警察、軍等)などによって様々なガバナンスがある 中所得国であれば経済・産業政策のキャパシティビルディング

● 貧困削減:ガバナンスの改善によって貧困削減を目指すという側面もある 天然資源が豊富でも貧困がなくならないケースもある-天然資源管理と貧困削減

● 紛争予防及び復興:UNDPの中でも重要性が増している分野 復興と予防が同時に行われる地域も 開発への移行が緊急の課題(例:小型武器回収、コミュニティ復興) 紛争予防は、長い目で見ると貧困削減、ガバナンスの課題につながる

● エネルギーと環境(天然資源・水資源管理、燃料の効率化など)
UNDPは全ての国に事務所がありネットワークが構築されている
政策アドバイスから能力育成まで一貫した支援-中長期的に開発計画を考える
現場レベルの施策も重要(効率的な燃料の導入→女性が健康に→子供の健康、教育)
環境では、地球規模の気候変動が環境に与える影響を開発に組み込む必要

● HIV/AIDS
南部アフリカで大きな脅威 途上国政府の能力育成が課題 UNDPが直接指導する例も
社会全体のキャパシティーギャップが課題 国が機能を果たしつつ同時に能力育成できるよう支援する必要
その他、アフリカへの投資を呼び込む取り組みも必要 民間企業との連携 農業問題も重要


■5■ 国際競争力を持った援助人材育成戦略 −藤村

開発援助の分野で以下のような日本人援助人材の不足に鑑み、特に国際機関のシニア・マネージャー レベルの人材をいかに増やしていくかについて、日本の研究者と協力して戦略的研究を立ち上げたい。
問題意識
1. 国際機関のシニア・マネジメントやトップ・マネジメントを占める日本人職員が少ない
2. 開発援助政策の実務経験を持った開発専門家が少ない
3. 開発援助政策の実務経験をもった開発研究者が少ない
4. 開発理論・援助戦略を世界的にリードする研究者少ない
5. 開発援助を世界的にリードする政治家が少ない
6. 開発援助を世界的にリードする国際的NGOのプロフェッショナルが少ない
このような問題意識にもとづき、特に国際機関のシニア・マネジメント人材育成戦略に焦点をあてて、人材育成と雇用制度をリンクさせた国家戦略を研究し、日本政府に提案する。予算12万ドル、2007年12月まで。


担当:谷、朝居



HOME勉強会 > 第27回