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第18回 2006年2月24日開催
於・世界銀行ニューヨークオフィス 26階

「紛争と開発」
黒田 和秀さん
世界銀行 社会開発局紛争予防復興ユニット 上級社会開発専門家

 

質疑応答・コメント

 

Q■ ビデオでは、貧困と紛争の関係が描かれ、論点はわかりやすかった。但し、貧困を経済面からだけではなく、環境や人口増加の面からも検討するべき。また、ダイアモンドやコカイン、石油などHigh profit productsに紛争はつきものだ、という観点もある。

人の心の問題は重要だ。Psycho-socialな面に光をあてるのは大事で、それが理解できなければ、何が原因になって紛争が起きるのかがわからない。解決策も、そこにあるのでは。非常に勉強になる良いビデオだったので、皆に薦めたい。

 

■Q■ 国連の人間の安全保障委員会で、アマルティア・センも述べていたが、貧困が紛争を引き起こすというテーゼはただちに証明はできない。紛争そのものが貧困の原因となる、というのは正しいが。紛争は、もっとAnthropologicalな原因で起こる。バルカン、ボスニアでの紛争が例だ。ほかにも、紛争の原因はMarginalizationや社会政策などがある。貧困は、若者が武器を取る温床にはなっても、紛争の直接の原因になるわけではない。

■ A ■ 貧困と紛争が、一対一の因果関係ではない、ということは気をつけなければならない。

 

■ Q ■ サックス教授はビデオの中で、貧困が紛争の一要因なることはあり得るし、その逆もしかりだ、と言っていた。貧困が原因のすべてではない、と言っている。

A■ 紛争は減るかもしれないが、治安が世界中で悪化しているという報告がある。「紛争と開発」だけでなく、「安全保障と開発(Security and Development)」というテーマで、どういう手を打つべきか、考えなければならない。

 

■ Q ■ 7年前、人類学を勉強したことがある。相対性という概念が、ビデオでは欠けていたのではないか。絶対的な貧困が紛争を呼ぶのではない。構造の中での格差や独裁者の存在などが、もともとの原因となる。バルカンでは、紛争が始まるきっかけ(トリガー)となったのは、選挙だった。

■ Q ■ 紛争後支援では、世銀、当事国のどちらがイニシアティブを取るのか。プロジェクトの内容やプロセスを教えてもらいたい。

A■ 世銀では、まず初めに、人口、GDPや汚職率などの指数をもとに各国を評価し、支援額を決める。低所得の国の場合、長年利子なしで、中所得の国の場合、他の銀行なみに利子をつけて貸す、など基準がある。次に、それに従って、国別援助戦略(Country Assistance Strategy) が、借り入れ国政府、IMFなどと協力して作成される。その中で、保健や教育、インフラ、雇用、財務省の予算支援など優先事項を決める。主には、世銀と借り入れ国の財務省とのやりとりだ。紛争後の国々への支援の場合、移行・暫定支援戦略を、もっと短いスパンでたてる。

低所得国にだけ貸していると、世銀は明日にでも終わってしまう。中国、インド、ブラジルなど中所得国に貸して、得た収入でまわしている。世銀のひとつの課題は、融資基準が高いことだ。最近、低所得国にだけ貸せばいいのではないか、という案も出ているが、その場合、世銀の収入はどうなるのか。財務削減などの問題も絡み、難しい。

 

■ Q ■ ビデオでは、武器の流通の問題が取り上げられていなかった。たとえば、Lord of Warという映画では、ロシアの崩壊が、ルワンダへの武器供給にどのように結びついたか、描いている。カラシニコフやAK47などの武器が流れていった。この大事は問題については、ビデオでは残念ながら取り上げられなかった。

 

■ Q ■ 「紛争と開発」の問題は、カンボジアから始まり、90年代に国連もアド・ホック的にやってきた。スーダン、DRCなど、最近の紛争に対しての世銀の反応を伺いたい。世銀はローンである限り、政府との合意が必要で、融資してしまう。コートジボアールでは、それで失敗したのでは。紛争直後の国に融資する場合、リスクは高いのではないか。どのようにアセスメントをしているのか。また、Conflict Sensitive Developmentは、平和構築の重要な柱ではあるが、政策と実施にGapがある。世銀とUNDP、UNDG用にPCNA(Post-Conflict Needs Assessment)が開発されたようだが、DPKOでは予算がper yearなので、うまくあてはまらない。具体的には、どのように調和させていくのか。

A■ スーダン、ハイチなどは先が見えていないので、どのように支援するかは国際社会の一番の課題だ。ここで成功すれば、国連や世銀の自信になるだろうし、失敗すればバッシングされるであろう。これまでとは違うチャレンジがある。一方で、世銀は支援から撤退することが可能だ。人道支援はその様な手を取ることは不可能だ。最後のご質問は、とても大きな課題です。

 

■ Q ■ ビデオのターゲット層は。国連と違う切り口などあるのか。

A■ 国際情勢に興味ある、一般の方々を対象にしている。だからBBCで放映してもらった。原本をもとに昨年1年間かけて製作し、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、ラテンアメリカと地域バランスを図った。これでFund Raisingをしよう、というわけではない。

 

■ Q ■ ビデオはシンプルでわかりやすかった。紛争が開発の成果をスポイルする、貧困が紛争を起こす、という点は、まだきちんと分析されていない。開発の紛争予防に対する位置づけという意味で、ユニークで面白い。ニーズ・アセスメント、どこからどうやって地域の真のニーズを図るのか、破綻国家は国民のニーズを代表しているのか、という問題は常に難しい。私が勤めている機関(JICA)では"Peace Needs and Impact Assessment"を使って、平和へのニーズを、長期的に捉えようとしている。

 

以上

(担当:山岸、藤澤)

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