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第16回 2006年2月1日開催
於・UNDP 19階

「日本外交における人権」
鈴木 誉里子さん
外務省 大臣官房 国際社会協力部 人権人道課 首席事務官

 

質疑応答

 

■Q■ アジア、アフリカ、旧ソ連等の人権問題に対処するにあたり、具体的な調査方法と、外務省のコミットの程度。

■A■ 第一に、在外大使館での情報収集。その他現地ニュース、NGO、政府ほか議会関係者、シンクタンクなど。さらに他国の大使館から情報が入ることもあるし、国連の場でも情報収集。情報の取り扱いは一面的にはならないよう配慮。NGOからの情報のみならず、政府等への照会を含めて、信頼性を確認。当該人権侵害が、組織的・継続的で深刻である場合には、欧米、カナダなどとともに、注意を喚起し、是正を求めていく。さらに国際社会の注目があれば、人権委員会、第三委員会などで扱われる。あまりにひどければ安保理で扱われることもあろう。

 

■Q■ アメリカのような重要な外交相手国の人権侵害について、いかに対応するのか、又はしてきたのか。

■A■ 前述のとおり、それが組織的・継続的で深刻な場合については指摘する。日本は、人権問題については内政不干渉の原則はあてはまらないと明示的に言っている。アメリカや他の西側諸国に対しても、組織的・継続的、深刻であれば、言うべき。

(参加者)
 アルグレイブ収容所での虐待について日本は米国に明確に問題であることを指摘した。

 

■Q■ 日本外交の中で人権に光があたってきたのは進歩。20年前にようやく外務省に難民対策室ができ、人権難民課→人権人道課となった。鈴木さんを含めて、国際社会の中でのキャパシティが高まってきたので嬉しく思う。しかし7つの人権条約の中でまだ入っていないものがあるが、その理由は。

■A■ 入っていないのは移民に関する条約だけ。最近成立し、G7、あるいはロシアを含めG8は入っていないのが現状で、締約国はまだ少ない。基本的に日本は、A規約B規約をベースとして様々な条約に入り、これら規約に規定されている権利が国民に等しく保障されるべきという発想で国内法の対処。移民に関する条約は、途上国からの発案であり、結局、条約交渉の場で日本などの主張が通らなかったために、移民に対する権利が日本人に付与されている権利以上のものとなってしまう問題がある。では日本人の保障レベルを上げればよいかというと、年金などは今でも将来財政的にパンクすることが分かっているような状況であり、国民全体のレベルアップは財政的な議論を伴う。そのような国民的議論がないまま外国人にのみ手厚い保護を与えることはできない。

 

■Q■ 人権対話は、残念ながら成果があがっていないと言われかねない。経済的利益を考慮しているのではないかとの見方もあり原則が見えない。また、日本が作ったパイプが効果を上げていないという西側からの意見もあるのでは。

■A■ 一部の国について成果を上げていないと言われれば、そのような国もあり、外務省内部にも危機感がある。懐柔だけではうまくいかない。ただ、経済的な権益を守るためにそういう外交になっているという指摘については、疑問。

(参加者) 外務省を擁護するわけではないが、彼らの声を聞いて、孤立化の道を歩まないように、ただ単に叩くのではなく、裏からというか、引き留めておくメッセージを出し続けるのは重要だと思う。

(参加者) 人権難民課に勤務当時、日本大使館だけに入ってくるミャンマー情報も多かった。陰ながら相当、孤立しないよう引き留めているのは事実。ただ、結果的に実績になっていないのは確か。

 

■Q■ ビルマについて、経済的に結びついている国、特にASEAN諸国が物申すことは効果があると思う。日本はそういう国にどう対応していけるかが問われているのではないかと思うがどうか。

■A■ 昨年末、これまで内政不干渉を大原則としていたASEANがようやく腰を上げ、ミャンマーへの特使(ミッション)を派遣する(まだ実現はしていないが)と発表した。これは我々もバックアップしていきたい。

 

■Q■ 日本外交における人権主流化を、日本国益の枠内でどう位置づけていくか。例えば拉致事件の解決が国益の対象であることは論を待たないが、それではスーダンの人権侵害に日本がコミットしていくことを日本の国益の中でどう位置づけていくのか。国連では、日本が海外の人権侵害にも対応していることが評価の対象となるが、それと国益をどう結びつけるか。

■A■ 北朝鮮問題は関心が高いので外務省がやっていることについてはPRせずともメディアに流れ、かつ、成果が上がれば国民から支持もしてもらえる。一方でスーダンのような遠方の国となると国民の関心が低いのが事実。最近はパブリックフォーラムなど一般国民との対話の機会が増えているので、そのような場を通じてアピールしていきたい。また、国連で日本が評価されれば、ゆくゆくは、例えば日本の国民の関心が高い北朝鮮問題についても国際社会が協力してくれることに繋がる。そのようにして国民の目にもその効用が徐々に見えてくるのではないか。

 

■Q■ パブリックフォーラムについて、2月2日にも日本で行われるが、このようなNGOと省庁とが企画する意見交換の場の継続について。またNGOに期待することは。

■A■ 今回で終わりにはならないと思う。NGO、国民からの期待が大きく、おそらく続けていくことが望ましい。
NGOに期待することは、まずは現場の経験。人権にとどまらず開発NGOもそうだが、我々以上に現場に地に足をつけてやっているので、情報に価値があり、活用していきたい。また、一般の人の意見。一般国民からの政府施策への意見、方向性、国民がどう見ているのかの情報提供をしてもらえるとありがたい。

 

■Q■ 人権難民課に勤務していた当時は、業務の半分がディフェンシブであった。「従軍慰安婦」問題、在日韓国・朝鮮人、同和問題、アイヌ問題など。現状は、どういう感じを持っているか。このような問題で批判を受けた場合に、他省庁や外務省はどうとらえているか。

■A■ 列挙していただいた問題は、今でもディフェンシブであるが、比率は半分ではなく10分の2くらいではないか。その意味で、ディフェンシブからオフェンシブに変わったと言えるかもしれない。他の省庁の姿勢は、おそらく今までの対応に十分自信と誇りを持っていると思う。そこまで各国から批判されるものとは思っていないのではないか。外務省の姿勢については、個人的には、国内の人権制度を変えた方がよいと思う面が多々ある。例えば、差別禁止法案、人権オンブズマンの設置、障害者権利条約に関連する障害者に関する施策など。

(参加者)児童ポルノ法は議員立法だったが、法務省の動きは速かった。明らかに国際基準と違うことが認識された場合には、外務省よりも他の省庁がすばやく動くこともあると思った。

■A■ しかし、人身取引は逆で、外務省が引っ張ったと自負している。

(参加者) たしかに外務省が抱え込むのは無理で、内閣直属で、人権状況を全部おさらい、などのやり方をしないと難しいのではないか。

 

■Q■ 日本はB規約の第一回報告書で、日本に少数民族はいないというひどい報告書を書いた。しかし今は対応するようになっている。日本は人権条約に関する次の報告書をいつ出すのか。今はどういうプロセスで作っているのか。

■A■ B規約の報告書は、最終作業中(英訳中)。A規約の報告書は、今年の6月締め切りだったと思うが、急ぎ作成中。まだ自分は経験していないが、報告書作成のプロセスは、NGOと数回意見交換して聴取した上で、作成することになると思う。提出後、条約体が市民社会の意見を受ける旨公表し、NGOなどがコメントし、1年後、2年後の審査の際などには、それをふまえて委員が質問などする。勧告の中にかなりNGOのコメントが反映されていると思う。

 

■Q■ 日本国内の難民申請者の人権問題について、直接的には法務省が管轄と思うが、NGOや人権団体から申し入れなりがあると、外務省ではどう議論・対応するのか。

■A■ 担当していないので不明だが、おそらく人道支援室が法務省に伝えるのではないか。例えばUNHCRとかアムネスティが来れば、法務省の方に行ってもらうのではないか。

(参加者) 少なくとも私が人権難民課勤務当時は、外務省と法務省の難民関係の協議の場はなかった。仮に人権委員会などに議題として持ちこまれれば、外務省として政策協議することになると思うが、そうでない限り法務省の専権という感じ。

 

■Q■ 人権条約違反について、外務省が他省庁に意見を言うことはないのか?

■A■ 例えば、法務省から、外務省としての条約解釈を求められれば、答えることになろうが、一般に、それぞれの省庁にはそれぞれの解釈があるので、あまりそういうことにならない。すべての条約履行状況を外務省がモニターしているわけではない。

 

■Q■ 他国の人権侵害を指摘すると当該国との関係ではネガティブな効果がある。それを犠牲にしてまで訴えれば国際社会から尊敬されるかもしれないが、西側の多数が非難しているところに乗っかってもインパクトがなく、果たして尊敬されるのか(例えばスーダン)。今までの日本政府、あるいは他国の経験で、こうやったらうまくいった、というようなモデル、成功例は。

(参加者) カンボジア、ミャンマーでは、日本外交はうまく行っていると思う。カンボジアの人権状況はひどいと欧米は言うが、日本は「こうしたらどうですか」という言い方をする。それなりに、カンボジアやミャンマーには評価されているのではないか。スーダンは良く分からないが、日本は自分の得意な分野では、そういうことができるのではないか。

 

■Q■ 欧米のようにファンダメンタルに頭ごなしの非難はしないという考え方について、国際社会から「人権は原則の問題」との批判を受けないか。

(参加者) イランではそう言われている。

■A■ ミャンマー、カンボジアに関する対応で、欧米が日本に対して批判的とは思っていない。うまく橋渡しした結果、成果がゼロにならないようにしてきた。欧米は叩くばかりで、カンボジア、ミャンマーとは没交渉になっている。国連の場でも、彼らは主権国家である以上彼らがうんと言わなければ議論自体できないこともある。日本が橋渡しすることで少しでも議論できる下地を作っている、ゼロになる可能性のある欧米の姿勢に対して、日本は100ではないが、何かを作っている。

 

■Q■ 中国の人権問題に関してはどうか。

■A■ ここ数年、靖国参拝の問題が出てから人権問題は没交渉に近い。なお、人権決議が出てる国を一覧表にすると何故中国がないのという疑問が出されることがある。

 

■Q■ アメリカでは保守派のはずのボルトンが、人権理事会の常任委員として、中国・ロシアも入れるべきだと言った。日本政府はどういう立場、あるいは見通しを持っているのか。

(参加者) 安保理常任理事国が(人権理事会でも)特権を持つのは、日本外務省としてもいかがなものかと思っており、米国に対し伝えている。

(参加者) 実際は、これまで人権委員会でロシア・中国はずっとメンバーになってきた。したがってボルトンが言っているのは、今までメンバーだったのだからそれを続けるだけだという立場と理解している。

 

以上

(担当:北村)

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