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センパイ1

第1回キャリア企画 国際協力のセンパイと考えよう!「国際協力に携わる職業と役割~国際機関・民間組織・学術機関~」

第1回キャリア企画
国際協力のセンパイと考えよう!
「国際協力に携わる職業と役割
~国際機関・民間組織・学術機関~
開催報告



2020年8月8日 実施
国連フォーラム関西支部


目次

  1. 開催概要
  2. 開催報告
  3. 参加者の声

センパイ1


2020年8月8日(土)に、オンラインにて、「国際協力のセンパイと考えよう!国際協力に携わる職業と役割~国際機関・民間組織・学術機関~」を開催致しました。そのご報告をさせて頂きます。

1.イベント概要

(1)企画背景

国連フォーラム関西では、これまで国際協力の現場で活躍されている又はされていた実務家の方々や学者の方々などをお招きし、国際協力の場で議論されている様々なトピックに関して、参加者に学びの場や議論、情報共有の場を提供してきました。国連フォーラム関西では学生やユース層の会員が多く、これまでの勉強会・イベントの実施アンケートからも現場や専門領域でご活躍の方からお話を伺いたい旨の声を多数受けております。よって、この度国連フォーラム関西では、国際協力の分野における様々な議論を取り上げるとともに、国際協力のキャリアについて知る機会を設け、参加者のキャリア形成の一助となることを願って本シリーズ企画を開催致します。
本シリーズでは、国際協力業界においてご活躍又はその過程にある方をお招きし、ゲストの方のキャリアについて語って頂きます。さらに、キャリアについてお話頂く中で、現場で起こっている課題やそれに対する議論などにも触れて頂き、参加者にはアカデミックな部分と現場での実情とを繋げて考える機会を提供します。
 議論の題材となる国際社会における議題・問題について取り組む姿勢を見聞して初めて、自身が学んでいる分野のアカデミックな知識と現場でこれから経験するであろう課題を併せて理解することができ、参加者にとって、キャリアを考えるうえでのヒント・鍵になると考えます。参加者にとってのロールモデルを見つけ、また現場で活躍されている方の想いを聞くことで参加者の夢への後押しとなることを願って、本シリーズを企画します。
そして、シリーズの第1回は、国際機関や民間組織、学術機関など様々な関わり方や視点を学ぶという目的のもと、本勉強会を実施いたします。

(2)企画目的

対象:国連などの国際機関や国際協力のキャリアに関心のあるユース層

企画目的:以下の機会を提供することで、参加者のキャリアや夢を応援する。

  1. 各分野における近年重要視されている又は取り組まれている課題について学び、現場での状況や課題、また議論されていることなどについて理解する。
  2. ゲストより国際協力分野のキャリア形成についてご紹介いただき、参加者がどのように国際協力分野におけるキャリアを形成していくかという示唆を得、また参加者自身のキャリア構築について考える機会を提供する。
  3. 国際機関、民間組織、学術機関など国際協力の様々な関わり方について知るとともに、国際協力とは何かについて示唆を得る機会を提供する。

(3)内容

【日程】2020年8月8日 16:00~18:00
【場所】Zoomにて実施
【予定】16:00 ~ 16:10:オープニング
       16:10 ~ 17:10:ディスカッション・セッション
    17:10 ~ 17:20:クロージング
    17:30 ~ 18:00:ネットワーキングタイム  ※自由参加

(4)ゲスト

赤星 聖さん 関西学院大学法学部 准教授
大阪大学法学部卒業。神戸大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程後期課程単位取得満期退学。日本学術振興会特別研究員(PD)、ジョージタウン大学客員研究員を経て現職。博士(政治学)。専門は国際関係論、グローバル・ガバナンス論。研究テーマとして、国際人道システム、難民保護、国連研究、日本における国際関係論の特徴など。主な著作として、『国内避難民問題のグローバル・ガバナンス―多様化するアクターとガバナンスの変化』(有信堂高文社、2021年刊行予定)、「複合的なガバナンスにおける国際機構間関係―国内避難民支援を事例として」『国際政治』192巻(2018年)、”What Made IDPs a Separate Category from Refugees? The Change in Logic of IDP Treatment in the SARRED Conference” CDR Quarterly 7 (2013) など。

井上 良子さん Impact Hub Kyoto・プロジェクトマネージャー、京都市ソーシャルイノベーション研究所・イノベーションコーディネータ
九州大学法学部(国際公法専攻)・法科大学院修了後、東南アジアで社会起業家に出会ったことを機に法律の分野から転身、九州大学ユヌスセンターで研究員兼コーディネーターとして勤務。ソーシャルビジネス創出支援、教育プログラムの開発、日本企業のバングラデシュでの起業支援、ムハマド・ユヌス博士やグラミン・グループ、海外の教育機関等との連携を担当。その後NPO法人クロスフィールズで日本企業とアジアの社会的企業をつなぐプログラムやフィールドスタディ事業に従事。2020年4月より現職。国連フォーラムにはスタディプログラムや国連とビジネス班の幹事、2018年から事務局長を務める。

久木田 純さん 関西学院大学 SGU招聘客員教授、国連フォーラム共同代表
1978年西南学院大学文学部英語専攻卒業。シンガポール国立大学社会学部留学(ロータリー財団フェロー)を経て、九州大学大学院で教育心理学修士号取得、同博士課程進学。1985年外務省JPO試験に合格、翌年から国連職員としてユニセフ駐モルディブ事務所に派遣され、駐日事務所、駐ナミビア事務所、駐バングラディッシュ事務所、ニューヨーク本部を経て、駐東ティモール事務所代表、駐カザフスタン事務所代表を歴任。2015年1月国連退官。2003年に世界銀行総裁賞受賞。2011年に東ティモール共和国勲章を受勲。


2.開催報告

各組織が国際協力において果たす役割や意義

はじめに、ゲストの方々に「各組織が国際協力において果たす役割や意義は何か」をお伺いしました。

民間企業のサポートに携わっている井上さんは、国際協力という観点における企業の強みはリソースとスピードではないかと述べます。企業は、グローバルな問題解決に必要とされるネットワークや情報、資金を豊富に持っている点や他の組織に比べて迅速に動くことができる点を挙げ、これらが国際協力において求められるソリューション提供に有効に働く可能性について言及されました。また、近年特に増加している、社会問題に直接アプローチするビジネスについても触れ、経済価値と社会価値が融合したアプローチの強みや社会の期待についても述べられました。

アカデミアとして大学で准教授を務める赤星さんは、大学/アカデミックが果たしうる役割は人材育成と知の更新、の2つあると述べます。人材育成とは、大学という場において国際協力に携わりたいと考えている学生を後押しすること。そして知の更新においては、現在のCOVID-19の状況を例に挙げ、新しい知見やイノベーションを生み出していくことで国際的な問題の解決に貢献していることを述べられました。また、学者が果たす役割について、現場で行われているレガシーや課題についての客観的な分析ができる点も言及されました。

国際協力に関わる主体は、しばしば、大きくパブリックセクターとプライベートセクターに分類されます。これについても、赤星さんは「近年の動向に見られる自国第一主義などによって、公(パブリック)の役割や国際協調がうまく働かないときには、私(プライベート)の役割が重要になります。しかし、私(プライベート)の役割だけでは限界もあり、そのような場合には一定程度、公の役割が必要になってきます。そのような公私の循環する動きも興味深いテーマだと思います。」と述べられ、両セクターのバランスや関わりについて考えるための示唆を頂きました。

国連児童基金(UNICEF)で勤務経験を持つ久木田さんは、国連は国と国の協力を促進する国や国際レベルでの取組みを行う役割があると述べ、二国間協力との比較のなかで、国連の中立性・公平性について言及されました。また、そのような点から、国が介入できないところにも国連が入って支援をすることができるという強みにも言及されました。

一方、最近のWHOに対する状況に見られるように、各国間のパワーバランスを考慮に入れながら活動することの困難性や、政治を利用して国際協力を促進することの可能性についても言及されました。
赤星さんも、このような組織の中立性の問題について、政治的対立に巻き込まれてしまう危険性や、政治を上手く利用することの効果から、世界全体の利益に関する役割を担う一方で加盟国のバランスをどのように取るかという難しさについて言及されました。
また、これについて久木田さんは、政治と国連の難しい状況における対応について「長期的にそして戦略的に考えていかなければならない」と述べました。

また、久木田さんからは、国際協力における各組織の関わりについて、組織によって区分がされていた従来とは異なり、近年では企業と政府、企業と国際機関など組織区分を超えた協力が推進していることについても言及されました。
国連が定めた世界の目標であるSDGsに対する民間の在り方について、井上さんは、従来は経済的な利益の外に置かれていた環境・社会・人権の利益を、最初から統合した考え方や事業に組み込んでいく発想を行うことが企業に求められていることではないか、と見解を述べられました。

キャリア選択・キャリア構築について

国際協力をに携わるポストでしばしば必要とされる修士号。参加者をはじめ、国際協力に携わることを目指す方の中には、日本と海外どちらの大学院に行くのかを迷われる方が多くいらっしゃいます。そこで、ゲストの3人に大学院選びのポイントについてお聞きしました。

自分で考える力をつける―

国内の大学院を選択した井上さんは学生時代、発展途上国で法律の専門性を活かしたの仕事に就くことを目標に進学を目指されていたため、研究のための法学府ではなく、実務で活躍できるスキルを習得できる法科大学院を選択したと教えて頂きました。また、赤星さんは大学院選択にあたって指導教員を理由に挙げて、お話頂きました。

国内と海外の大学院のどちらを選択するのがよいかという点について、国内の大学院進学のメリットは母語で思考力を養うことができる点にあり、海外の大学院のメリットはネットワークや語学力の向上などが挙げられました。

その他、大学院進学のタイミングについても議題に挙がりました。大学卒業後の院進の場合、そのまま学生として進めるためモチベーションを保つことができる一方、自分のやりたいことが不明確な場合があると述べられました。社会経験後に進学する場合は、自身のやりたいことが明確になりやすい一方、仕事を辞めにくい点が挙げられました。

しかし、どの選択であっても一番重要なのは、自分で考える力をつけることであることを教えて頂きました。

また、大学や大学院での学びの他に、問題が起きている現場に行くことも重要である、とゲストの方々は述べます。赤星さんは、自分が支援するその先を知ることで活動や研究が血の通うものになるのではないか、と述べました。


キャリア構築で大事なこと―

大学院進学の他にも、キャリア構築にあたってのポイントについても伺いました。

赤星さんは、チャンスが来た時に掴めるよう準備することが大事なことの一つであると述べます。久木田さんも、チャンスが来た時に掴む力、そしてその力は何が必要なのか、自分の使命は何かを見極めることができるようにすることが良いのではないかと述べ、4つの軸を教えてくださいました。井上さんは、今ご自身のキャリアを振り返る中で、学生の時は組織ありきで考えていたことに気付いたと言います。一方、異なるキャリアを選択した今も変わらないものもありました。それは「使命感」だと言います。キャリア構築で大事なポイントの一つとして、諦めないこと、も挙がりました。赤星さんは、使命に対して諦めないことが重要であると述べます。使命を追い求める中では、視野が狭くなる懸念もあるため、広く視野を持つことも重要であると教えて頂きました。

このように、目的意識や使命感を持ちながら専門性を極めることの重要性について気付くことができました。

人生百年時代といわれる今日、「キャリアも家族も、人生の一部として長期的な視点で、今やるべきことを大切にバランスを取ってほしい」と久木田さんは述べます。


「自分の軸を定めながら多様な価値観に触れ、現場にも足を運びながら選択していくと、ライフチャートが出来上がってくるのではないでしょうか」(井上さん)

ネットワーキングタイム

ネットワーキングタイムでは、ゲストそれぞれ3つの部屋に分かれて、参加者との質疑応答を行いました。
今回は、オンラインということもあり、従来のような自由に参加者同士が話せる機会はどることができませんでしたが、よりクローズドな環境で、参加者は思い思いの質問や相談をゲストに尋ねることができました。
質問の一例:

  • 国際協力への熱意はどうやって保っているのか?
  • 成長によって貧困をなくそうという試みについてどう考えるか?
  • 研究を今までとは異なる分野に着目するようになった背景は何か?
  • ソーシャルビジネスをどのように考えるか

3.参加者の声

参加者の皆さまからのアンケート結果を抜粋してご紹介いたします。

  • 民間とアカデミア、国連という異なる立場から、それぞれの国際協力に向けた役割を知り、キャリア形成の参考になった。
  • プレゼンターの方々の人となり・現在に至るまでの過程について理解することが出来た。
  • 「自分で決める。失敗したらまた立ち上がればいい。」というメッセージが印象的でした。
  • 今後のキャリア形成について悩んでいたので今回、様々な方面でご活躍されている方々のお話を聞けて自分の人生設計について考えるいい機会になりました。
  • 今回が初めての勉強会参加でしたが、これまでのイベント等をFacebookで拝見しておりました。企画内容やゲストの方々のバックグラウンド等とても興味深いものばかりで国連フォーラム自体、素晴らしい活動だと思います。今後も時間が合えば勉強会に参加していきたいです。

この度は「国際協力のセンパイと考えよう!
国際協力に携わる職業と役割~国際機関・民間組織・学術機関~」
にご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。
今回残念ながらご参加頂けなかった皆さまも、
次回以降の勉強会のご参加をお待ちしております。
国連フォーラムは引き続き皆さまに有意義な「場」を提供できるよう努めて参ります。
今後とも、国連フォーラム関西支部をどうぞよろしくお願いいたします。

なお、国連フォーラム関西のFacebookグループでは、国連や国際協力に関する情報の共有や議論の場を提供しております。ぜひ、ご参加ください。また、本Webサイトでは過去の勉強会の開催報告のほか、国連フォーラムのWebサイトからはその他第一線でご活躍されている方々のインタビュー記事など有益な情報がたくさんご覧いただけます。ぜひご活用ください。

第14回SDGs勉強会 紛争後アフリカ地域社会で若者が紡ぐ未来

2020年11月7日実施 

国連フォーラム関西支部 第14回SDGs勉強会

紛争後アフリカ地域社会で若者が紡ぐ未来
~人間の安全保障と私たちの役割~

開催報告

2019年11月3日(日)に、関西学院大学梅田キャンパスにて、『紛争後アフリカ地域社会で若者が紡ぐ未来~人間の安全保障と私たちの役割~』を開催致しました。そのご報告をさせて頂きます。

【イベント概要】 

《企画背景》

 今年8月末に第7回アフリカ開発会議(TICAD VII)開催され、アフリカに関する様々な議論が行われました。最終日には、横浜宣言2019が採択され、人間中心のアプローチの重要性が確認されました。本企画は、TICADの議論の根底にある「人間の安全保障」について再度考え直し、私たちはどのように関わっていくことができるかを考える機会を提供するものであります。

 アフリカでは現在も紛争が継続している地域が複数存在します。そのような地域社会では、様々な不安定要素が存在し、安全が保障された状態であるとは言い難いです。そのような現実に際して、特にアフリカの将来を担っていく70%を占める若者にとって、安全が保証された状態とは何か。そして、人間の安全保障の確保のためには、市民組織から提出された要望書でも要請されていたように、私たち市民社会が協力していくことが重要となると考えます。

 アフリカの開発・国際協力に関わっていく上で、私たちは「人間の安全保障」とは何かという具体的なイメージを持ち、現地の地域社会との関わり方を考えることが重要であります。そこで、「人間の安全保障」とは何かを問い直し、NGOの紛争後アフリカ地域社会における支援活動を通じて、参加者が「人間の安全保障」の確保のために自身がどう関わることができるかを考えるため、本勉強会を企画致します。

《企画目的》

対象:アフリカ地域社会における人間の安全保障および紛争後平和構築に向けた取組みについて関心のある高校生、大学生、大学院生、社会人。

企画目的:

【企画目的】

  1. 「平和と安定の強化」に関するTICADの議論を背景に、アフリカの紛争後社会に対する具体的な支援活動と、現地の人々の「安全」とは何かを知る。
  2. 人間の安全保障の多面的な概念を整理し、アフリカ地域社会と自身との関わり方を考える上で、重要となる観点は何かを考える。
  3. アフリカ地域社会と参加者自身との関わり方を再考し、行動に結びつける。

 

 ※ 第13回勉強会で考えた「アフリカにおける国際協力と私の関わり」から一歩踏み込み、人間の安全保障という観点から関わり方を再考する。

 

《イベントプログラム》

【日程】2019年11月3日 13:00~17:00

【場所】関西学院大学 大阪梅田キャンパス 1004教室

【イベントプログラム】

1.オープニング

2.イントロダクション

3.第一部:秋葉氏による基調講演

4.第二部:栗栖氏による基調講演

5.第三部:グループディスカッション

6.クロージング

7.ネットワーキングタイム

《ゲスト》

・秋葉光恵 氏

NPO法人アクセプト・インターナショナル事務局長

London School of Economics and Political Science(LSE) 開発学修士課程修了。社会的弱者のエンパワメントはじめ心理学的アプローチによる社会変革と質的調査が専門。学生時代からWorld Summit of Nobel Peace Laureatesへの日本代表としての参加、バングラデシュ・グラミン銀行でのインターンなどに取り組む。新卒で独立行政法人 国際協力機構(JICA)に入構。学校現場における国際理解教育やSDGsの普及啓蒙活動にも携わる。2018年11月より現職。

 

栗栖 薫子

神戸大学大学院法学研究科教授

上智大学外国語学部(国際関係論副専攻)、カリフォルニア大学サンタクルーズ校で国際関係論を学ぶ。東京大学大学院総合文化研究科国際関係論専攻・修士課程修了、東京大学大学院総合文化研究科国際関係論専攻・博士課程単位取得退学、ケンブリッジ大学国際問題研究所・客員研究員。2006年に大阪大学より博士号(国際公共政策)。九州大学大学院比較社会文化研究科・助手、神戸大学国際文化学部准教授、大阪大学大学院国際公共政策研究科・准教授を経て、2009年10月より神戸大学大学院法学研究科教授。東京大学大学院総合文化研究科・客員教授。専門は国際関係論。研究テーマとして、人間の安全保障や非伝統的安全保障問題、防災や減災における企業の社会的責任、日本の国連外交、国際制度論など。

 


【開催報告】

《オープニング》
  • 久木田氏より開会のご挨拶
  • ゲスト紹介
  • 秋葉光恵氏
  • 栗栖薫子氏

▲ 司会は、国連フォーラム関西支部の纐纈が務めました。

  • イントロダクション(企画背景や目的について)

 冒頭のイントロダクションでは、国連フォーラム関西支部の岡崎が、「人間の安全保障」についての基礎知識の紹介をしました。

 「人間の安全保障(Human security)」とは、「人びと一人ひとりに焦点をあて、その安全を優先するとともに、人びと自らが安全と発展を推進することを重視する考え方」(緒方貞子氏)のことです。グローバル化・相互依存化が深まる現代において、従来の国家を中心に据えたアプローチでは不十分になってきており、「人間」に焦点をあて、様々な主体及び分野間の関係性により横断的・包括的に捉えることが必要です。  今年8月に開催されたTICAD7や、持続可能な開発目標(SDGs)においても、人間の安全保障の概念は反映されています。

《第1部 秋葉光恵氏の講演

第一部では、秋葉氏に所属するNPO法人アクセプト・インターナショナルの活動内容や、テロやギャングが発生する背景とその解決アプローチを「人間の安全保障」の観点に照らしてオンラインでご講演いただきました。

  •  「~テロと紛争の解決に向けて~ NPO法人アクセプト・インターナショナル  加害者とされる側を受入れる取り組み」 秋葉光恵氏

 

 世界で起きるテロのうち、90%以上が紛争地で発生していると言われ、過去20年間でテロの件数は約12倍、死傷者は約6倍に上っています。その背景として考えられるのは、1990年代以降のイスラム過激派組織の台頭です。ソマリアでは、イスラム過激派主義アルシャバーブの支配領域が拡大し、単発爆破テロ史上最悪の死者580名を出したテロが発生し、戦争宣言が出されました。

▲秋葉氏による講演の様子

 しかし、テロの解決は従来の政府軍対反政府軍という構図の対立よりも難しいとされています。その原因は、イデオロギー的なバックグラウンドの違いが大きいこと、徹底抗戦を望むのでグループのトップ同士の対話が困難であること、テロ組織は組織体制がアメーバ状に広がっているので、トップダウンアプローチの効果が限定的であること、などが挙げられます。これに対して国際社会は未だ有効なアプローチを見いだせておらず、取り組むNGO・NPOは少ないのが現状です。

 そのような状況の中、「排除するのではなく、受け入れる」をコンセプトにテロと紛争の解決に向け、活動しているのが、NPO法人アクセプト・インターナショナルです。①過激化させない(テロに参加する人を増やさない)②脱過激化・社会復帰をさせる(元々テロ組織に所属していた人が社会参加できるようにする)の二つの活動から、テロ組織の人的資源を減らしテロ解決のための好循環を生み出すことを狙いとしています。

 本日は、その中でもケニア事業部での活動を中心にご説明します。

 ケニア事業部では、「ギャングを社会改革のリーダーに」をコンセプトに活動しています。世界的難民受け入れ国であるケニアでは、隣国のソマリアから多くの難民が流入しており、現地で生計を立てています。しかし、イスラム過激派主義アルシャバーブの影響から、ソマリア人=テロ主導者であるとのレッテルを貼られ、地域社会から差別を受けており、怒りや孤独感からギャングとして活動している若者が多く見られ、薬物や強盗・窃盗を起こし、社会との不和が発生しています。

 これに対し、当団体では、カウンセリングや薬物更生プログラム、就労支援などさまざまな活動を通して、ギャングを脱過激化させ、平和構築のリーダーへと変えていこうとしています。中でも主軸においている活動が、「意識改革プログラム」です。ここでは、自らを取り巻く問題について解決策を議論し、どうしたらその問題が解決できたのか、アクションを通して考えます。

 また、差別や社会的断絶から生じる絶望や孤独感からギャングの集団に加入してしまう若者も多いことから、ギャング以外のアイデンティティを形成することが大切で、当会では、ギャング集団の解体式やフットボールチームの結成を行っています。

秋葉氏からご講演いただいたあと、国連フォーラム関西支部から二点質問をさせていただきました。

Q.ギャングの若者などのエンパワーメントを行う上で、気を付けていることは何ですか?

A.彼らに上からの更生を行うのではなく、あくまでも彼ら自身の自発的な気づきに基づく、内からの更生を行なうことを目指すことです

Q.私たちがテロと紛争を止めるためにできるアクションは何ですか?

A.今すぐにできることではないかもしれないが、問題分析をもっと行うことです。紛争と一口にいっても、一つ一つの紛争で背景は異なりますし、そこに暮らしている一人一人の事情は異なるものです。机上の空論で議論せず、しっかりと内情を分析することが大切です。また、実行できる具体的なアクションとしては、NPOへの協力などがあります。当会においても、ボランティアやメンバー、アンバサダーといった制度が存在しています。

会場からの質疑応答では、ギャングの構成員における男女の差が指摘されました。秋葉氏はギャング集団に女性の構成員はほとんど存在せず、表立って活動している人の99.9%以上が男性であると回答し、同世代の女性はおそらく家の稼業を行なっており、インフォーマルな形式での雇用が行われていると言及されました。また、就労支援活動を行っているが、プログラム修了後はどのような就職先で働いているのか、という質問も上がりました。秋葉氏は、ケニアの就労率は6割と、元ギャングでなくても職を得るのが難しい状況の中で、元ギャングの方が初めの職に就き、違法な手段をとらずに生活ができるようにするのを意識していると踏まえた上で、生計を立てるための具体例として、地域の商工会議所のような場所やスマ―トフォンの修理の職(アクセプト・インターナショナルの就労支援にスマートフォンの修理スキル講習がある)などが挙げられました。

《第2部 栗栖薫子氏の講演

第二部では、神戸大学大学院法学研究科教授である栗栖氏より「人間の安全保障」の理論的概念と、実際の国際協力の現場において、どのように人間の安全保障の考え方に基づいたアプローチが行われているかついてご講演いただきました。

  • 人間の安全保障の概念について」 栗栖薫子氏

 はじめに、人間の安全保障と人間開発の関係について説明します。人間開発において、人の成長志向というのは、右肩上がりに上がっていくものでありますが、成長志向が下がってしまう局面というのが存在します。そうしたダウンサイドのリスクに対して、どのようにアプローチをするのかが、人間の安全保障であり、コインの両面として、人間開発を下支えするものなのです。

 1990年代半ば、旧ソ連地域、アフリカなど世界で紛争が多く発生しました。その際になぜ武力紛争が起きてしまうのかといった議論や、それに対応するためには開発アプローチが大切であり、”人々”に焦点をあてて考えることが必要であるとの主張がなされました。そのような考え方のもと、1994年に国連開発計画から出されたのが、「人間開発報告書」です。ここでは、人間の安全保障の7つの側面が示され、これ以後、多くの研究者や政府などが人間の安全保障という言葉を使うようになりました。

                             

▲栗栖氏による講演の様子    

 2003年には、日本のイニシアティブで「人間の安全保障委員会報告書」が提出されました。そこでは人間の安全保障とは、「人間の生にとってかけがえのない中核部分を守り、すべての人の自由と可能性を実現すること」と定めています。人間の安全保障については三つの重要な観点があります。一つ目は、「欠乏からの自由」です。これは、職業があることや最低限の食料があることです。二つ目は、「恐怖からの自由」です。これは武力紛争下での人道的サポートや、迫害を受けないことなどが該当します。三つめは、近年重要であると言われている「尊厳を持っていきる自由」です。文化や宗教、多様な側面からの尊厳をもっていることがこれに当たります。「尊厳を」の解釈は、Caring and waitingという立場もあり多様な考え方があります

 人々の「保護」と「エンパワーメント」のためには、上記で述べた3要素を考慮して、状況が悪化する危険性にきめ細やかく配慮する必要があります。さらに”人々”を中心に安全問題を捉え政策的考慮の対象とすること、「最も脆弱な人々」に焦点を当てること、個人だけでなくコミュニティーも対象とすることに加え、分野横断的な対応をすることが重要です。

 この報告書を受けて、日本では、ガイドラインを策定し、人間の安全保障の考え方を政策レベルに落とし込んでいきました。その一つが2005年の日本のODA中期政策です。ここでは、”人々”を中心に据え、”人々”に確実に届く援助をする、地域社会を強化する、人々の能力開発を重視するなどが定められています。

 2012年には国連総会において人間の安全保障決議が取られ、人間の安全保障の定義について、包括的で、文脈に応じた予防的な対応をすること、平和、開発及び人権の相互関連性をもつものであること、政府の第一義的責任があるものであること、などで加盟国間での共通理解が図られました。現状、国連において各国政府がそれぞれの政策として人間の安全保障を履行することを強制する力はなく、NGOを含め他のアクターも同決議に拘束されるわけではありません。これからの報告書を参考に、それぞれの組織や個人にとって、どのような行動指針につながるのかを検討する必要があります。

 NGOの活動とは、現地の人々に直接届く活動であり、人間の安全保障の考え方は、NGOにとって当たり前であることが多く含まれます。しかし、JICA研究所プロジェクトによるあるNGOへの聞き取り調査においては、「NGOsは普段は特定の問題に取り組んでいる。人間の安全保障は包括的なアイディアであり、それまで個別に扱われてきたような。本来は関連するすべての問題をあわせて考え直す機会を与えている」と人間の安全保障の考え方がNGOに及ぼす有益性を示唆しました。

 国際紛争やテロなどの解決には、アクターの動機や国家の政治・経済・社会、グローバルな構造など、複雑な要因とプロセスの理解が必要であり、非常に複雑で重層的に重なり合っています。

 会場からの質疑応答では、人間の安全保障の概念をめぐり国家間で論争が行われた際、カナダは発信力が強く、ネットワーク構築も上手だったが、日本は発信力が弱かった。という説明があったが、その背景にはどのような違いがあるか、という質問がなされました。栗栖氏は、「カナダは関心を持ちそうな諸国に働きかけて、一緒にアジェンダを掲げて世界的にアピールするのが上手です。対して日本は、近年は力が上がってきたように思われますが、市民社会との連携が弱いです。日本語中心の社会であり、日本の中で意見が完結してしまい、国際社会へのアピール力が足りなかったと思われます。」と述べられました。

続いて、他国では尊厳をもって生きる自由は、法の分野でどのように定められているのか、他国ではどのような政策的アプローチがなされているのか、という質問がなされました。それに対して栗栖氏は、「尊厳をもって生きる自由をどう捉えるかにもよるが、社会でどのように実現していくのかという点では、それぞれの社会に根ざした安全保障の形があります。必要なのは人間の安全保障という言葉ではなく,人間の生活がどのように保障されているのかというのが重要であります」と指摘されました。

《グループディスカッション》

今回のグループディスカッションでは、参加者がさらに理解を深め、自分たちの関心分野において、どのように人間の安全保障の観点を取り込んで実践するかについて再考し、今後の行動指針に役立てることを目的にワークを行いました。まず初めに、参加者の方に一つご自身の問題関心のあるテーマを選んでいただき、その問題に対して、どのような”個人”の脅威があるのか、人間の安全保障の多角的な視点から分析していただきました。その後、現在ご自身が抱いている問題に対するアプローチについて、4人程度のグループで共有していただき、そのアプローチについて、人間の安全保障の「恐怖からの自由」「欠乏からの自由」「尊厳を持って生きる自由」の観点から分析していただき、参加者の挙げたアプローチをさらに深めたり、今まで見落としていた観点はないか議論しました。そして最後に、各グループから代表者一人が、グループディスカッションをする中で、人間の安全保障の観点で意識した点や新たな気づき、感想などを全体に共有していただきました。以下に参加者の声として各グループの代表からの発表を報告させていただきます。              

▼グループディスカッションの様子

A班

 グループディスカッションを通して、自分の抱いていたアプローチがさらに深まったので良かったです。私は、紛争地域でのジェンダーにおける経済的脅威について興味があり、紛争地域には力仕事が多く、女性は職に就くのが難しいのではないかという疑問を抱いていました。班の中で議論し、女性が職に就くには、スキルトレーニングが必要ではないか、という意見が出ました。また、このスキルトレーニングを国家レベルでのプロジェクトにすることもできるし、スキルトレーニングをする以前に、もっと教育が必要な人もいるかもしれないので、そこにアプローチすることも可能です。職を得るという点で色々なアプローチ法があることが分かりました。

B班

私は、アフリカについてあまり知らなかったが、B班では子ども兵や紛争地区での教育・いじめの問題について話し合いました。日本ではいじめが発生しているが、逆にアフリカではみんなが団結していていじめなどは少ないのではないかという意見も出て、日本とアフリカの違いが見えてきました。また、NGOの活動がロールモデルとなって、国連の活動につなげられるのではないかと思いました。

C班

 C班では、アイデンティティに焦点をおいた話合いをしました。ネガティブなアイデンティティをいかに、ポジティブなアイデンティティに変換していくかという話で、社会に認められる、というのが大きな効果をもつのではないかと思いました。また、ギャングが自分自身の意見を政府や社会に届けることができる環境を整備することも、”社会に認める”という過程のなかで重要なアプローチではないかと思いました。

《クロージング》

講評

最後に、講演やグループディスカッション、その後の意見共有を踏まえ、国連フォーラム共同代表の久木田氏とゲストの栗栖氏より講評を頂きました。

 久木田氏は、「今回は、加害者と言われるギャングの尊厳について考え、イノベイティブな活動を行っているアクセプト・インターナショナルさんの話に加え、栗栖先生による先端な人間の安全保障の話があり、とても良い内容だったと思います。なぜソマリアのような地域ができてしまったか、その背景には、世界的な経済構造である資本主義の影響があります。資本主義のしわ寄せとして、ものが奪われた難民が発生し、そうした脆弱な環境にある人々は、今の社会や豊かな世界に対して憎しみを抱き、そのような社会を壊そうとしてテロという行為を取ります。複雑に絡み合う問題がグローバルな視点で議論されていて良かったです。」と述べられました。

 また、栗栖氏は、「ソマリアは世界から最も見放された国です。そうした社会の中でギャングは生まれ、彼らもまた地域から見放された人たちです。人間の安全保障について考えるとき、加害者の保護も考えるというのは、とても良い話であったと思います。社会復帰にはやはり、一人の人間として認められることが重要であると考えています。また、テロ組織に所属する末端の人たちは、単身者であったり、祖国から離れて暮らしていて、周りに友人がいなかったりと、社会から疎外されている人たちがとても多く、友達を求めて加入してする人もいます。いかにして疎外感をなくし、社会復帰させるのかが重要であると思いました。」と述べられました。

 

《参加者の声》

本勉強会にお越し下さった皆様からは、多くのご満足いただいた意見を頂きました。本報告で、一部をご紹介させていただきます。

・たくさんの人のアフリカ・貧困などに対する価値観や考え方を聞けたので良かった。

・具体的な事例を知ることでケニアにおけるソマリア人の現状を知ることができた。また、問題構造を分析することが重要だと学んだ。

・人間の安全保障について新たな視点が学べた。

・あまり学校では、人間の安全保障について学ぶ機会がないので、今回で自分の人間の安全保障に関する知識をより深められたから良かった。

・とても貴重なお話を聞かせていただいた上に、ゲストスピーカーの先生方や参加者の方と話す機会がとても勉強になった。

 

 


この度「国連フォーラム関西主催『紛争後アフリカ地域社会で若者が紡ぐ未来
~人間の安全保障と私たちの役割~』にご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。

今回残念ながらご参加頂けなかった皆さまも、次回以降の勉強会のご参加をお待ちしております。

国連フォーラムは引き続き皆さまに有意義な「場」を提供できるよう努めて参ります。今後とも、国連フォーラム関西支部をどうぞよろしくお願いいたします。

最後に、多くの方のご協力で、今回のイベントを開催することが出来ました。ご協力してくださったゲストの方、参加者の方に厚く御礼をお申し上げます。

 

国連フォーラム関西支部のFacebookグループページホームページでは、国連や国際協力に関する情報共有を行っております。関心のある方はぜひチェックしてみてください!

国連フォーラム関西支部 特別企画 「『人』の視点で見るシリア ~シリア紛争と人間の安全保障~」

2018年12月22日実施 

国連フォーラム関西支部 特別企画

「『人』の視点で見るシリア

~シリア紛争と人間の安全保障~」

 

2018年12月22日(土)に、関西学院大学梅田キャンパスにて、特別企画「『人』の視点で見るシリア~シリア紛争と人間の安全保障~」を開催致しました。そのご報告をさせて頂きます。

【イベント概要】 

《企画背景と目的》

当勉強会は、国連フォーラム関西として、これまで開発分野、特にSDGsをテーマとした議論を中心に扱ってきたことを踏まえ、安全保障問題に関する議論に対する機運が高まっていたことを背景に発案されました。その中でも、日本の視点からは、「今世紀最大の人道危機」とされながらも、国際社会の一員として当事者意識を感じにくい「シリア紛争」をテーマとして取り上げています。
当イベントは、「多角的にシリア紛争について考える機会を提供することにより、一人ひとりが当事者意識と共に意見形成することを促し、更には、議論に参画する等、シリア市民のためになる行動を促進させること」を目的としました。

《イベントプログラム》
【第1部】
◆講演
概要:
研究者から活動家まで、シリアを知り尽くした登壇者を予定しています。人道危機の現状や、それを取り巻く背景。支援の現実や、今、私たちにできることまで、様々な観点での議論をしていただきました。
【第2部】
◆パネルディスカッション
概要:
イベントの最後には、登壇者が会場の質問に答える形でのパネルディスカッションをしました。講演を通して気になった点や、もっと知りたいポイントを事前配布の質問票に記入していただき、それをもとに、登壇者によるディスカッションを行いました。
《ゲスト》

– 独立行政法人国際協力機構 JICA研究所主任研究員 武藤亜子氏

– 特定非営利活動法人 難民を助ける会(AAR Japan) 小田隆子氏

– シリア支援団体「サダーカ」田村雅文氏

– シリア支援団体 Piece of Syria 代表 中野貴行氏


【開催報告】

《第1部 講演》

1.「人間の安全保障」(JICA研究所 武藤 亜子 氏)

タイトル:「人間の安全保障とシリア紛争」

第一部初めの講演では、武藤氏より以下3点についてお話しいただきました。

1.「人間の安全保障」の歴史的経緯

2.「人間の安全保障」とはどのような概念か

3.シリア紛争にみる「人間の安全保障」の現状と課題

2.「シリア難民支援」(AAR Japan小田 隆子 氏)

タイトル:「シリアにおける人道危機の現状―トルコにおける難民支援から見えることー」

日本の難民支援NGOのなかでも特に有名なAARより、小田氏から以下3点についてお話しいただきました。

1.AAR Japan「難民を助ける会」について

2.トルコにおけるシリア難民の概況

3.AARトルコにおける活動のあゆみ

3.「シリア市民」(難民支援団体サダーカ田村 雅文 氏)

タイトル:「なぜ 紛争を止めなければならないのか―シリアの人たちの声を聴き続けて-」

最後に、田村氏より、紛争が起こる前後の写真の提示とシリア紛争の当事者の家庭訪問をした経験をもとに紛争が起こす個々人への影響についてお話しいただきました。

《第2部 パネルディスカッション》

〇パネリスト

-武藤亜子氏(武)

-小田隆子氏(小)

-田村雅文氏(田)

-中野氏(Piece of Syria)(中)

〇モデレーター

-久木田純氏(久)

〇質問:シリア紛争の原因に気候変動があるという議論はいかなるものか?

田:紛争前、2005年、2008年、2010年、干ばつが発生。

ダマスカス郊外に違法入国、定住化。テントの数が増加。水や電気など、インフラを無許可に使用されること。

〇質問:アイデンティティの問題。アイデンティティの差異を際立たせることによって、紛争の火種を蒔くという論点に関していかなるものか?

武:アイデンティティの細分化・差異を認識するようになった。

  紛争勃発の経緯に、「水平的不平等」がある。同一のエスニシティ内での差異(教育機会や雇用機会)が争いの引き金になるという論がある。

〇質問:シリア支援(トルコ)において、「言語」はどのような役割を果たすのか?「トルコ語が話せる/話せない」場合、中東支援に携わることができないのか?

小:トルコ国内においても、言語的多様性がある。家庭内でクルド語、アラビア語を話すなど。しかし、言語文化を超えると、コミュニケーションが困難。

現在、スタッフの雇用に際して、シリア人の雇用に重点を置く。アラビア語以外にも、クルド語、英語などの言語が話せる人を採用

 さらに現在、トルコ語教育を行っている。トルコ語学校に就学するシリア人の学費の支援(言語の支援自体は政府の規制により困難であるため)。

〇質問:

中野さんの活動について紹介

中:「Piece of Syria」という名は、「欠片」になってしまったシリアを、「平和(Peace)」のシリアにしたいという思いから。

 -活動内容:

①現在と過去のシリアを伝える(写真や動画で)

②難民を訪問することで、難民の暮らしの現状を聞き取り

③反政府組織がコントロールする地域の教育・幼児教育施設のサポート(政府の許可がないとシリア国内でのサポートができないが、個人での支援が受け入れられるため。毎年100人の子どもたちが通えるように)

久:「シリアの人達の顔が輝くのは、故郷の話をするとき」とありましたが、実際にそうでしたか?

中:昔のシリアを知っているということで、シリアの人々に一気に受け入れてもらえる。

〇質問:なぜ彼らは故郷を離れなければならなかったのか?彼らの目線にたって、なぜ紛争が起こったのか?

武:気候変動、干ばつが発生し、紛争の1つの原因となった(干ばつと都市への流入)

2011年にデモが発生したのは、アサド政権を倒すためではなく、「生活の改善」を求めていたという説もある。

-デモを政権が弾圧したことで、人々からの反発が高まった

-2011年3月に海外から人々が流入し、人々を煽っていったという説

-平和的なデモに対して、様々な外的圧力がかかった

 (紛争のルート・cause)

-prolong cause:欧米諸国が介入しなければ、ここまで長期化しなかった

中:シリア紛争に対して、様々な見方がある。そのため、紛争の原因を特定するような発言をしてこなかった。

 Wiki leaksが、シリアの市民デモの結果、市民よりも軍隊や警察の死者が多かったなどの報道もある。本当に市民だったのか?

そのため、「こうに違いない」という断言は非常に危険だと考える。

〇質問:ISが非人道的な行為を行ってきた。ISは実際、どうだったのか?

中:マンベジに駐在。ISの占領下におかれる。ISから、保釈金を支払えば、人質が解放されるという話があったものの、保釈されなかった。

 ISによって、教育が浸食されていた(教育が重要であるが、そこでどんな教育が行われるかが重要)。

久:カザフスタン駐在経験、カザフスタンからも多くの人々がISに賛同

 暴力を直接目の当たりに、取り残されてきた子どもや女性たちのケアが重要

〇質問:これから平和になるために、何が必要か、

田:一番重要なのは、対話の場を作っていくこと。家族同士でも考え方の相違、友人同士の関係が崩れている現状。「シリアに帰って、やっていけるだろうか」という不安と、「今までやってきただろうか」という揺らぎ。

これまで、殺戮や暴力を見てきた人々が成長していく

→敵同士であった元兵士たちがとにかく話をする、共に生きていくための対話のプロセスが必要。

しかし、難しいのは、「人」に焦点を当てる場合、「どの人に焦点を当てるか」が重要。

 例えば、反体制派、家族を守る人(家族を守るために、元通りの生活がしたい)

 *丁寧にナラティブを立ち上げる必要。

 

武:アメリカが撤退し、アサド政権が優位である現状は揺らがない。政権優位が揺らがないことを見通した上で、いかに人々が平和づくりに参加できるようにするのか?

 市民社会や政府が支えていくのか?

 しかし、現状の構造において一番困難な問題である。

 

小:反政府と見なされてきた人がシリアに帰国した際に、どのような扱いを受けるのか?

 それぞれの人々が相互理解・他者理解、1つの事象について見方が様々にあること

 

中:足元から変えていくために教育支援が重要であると考える。100人というまとまりで見ることと、一人ひとりの固有名詞で捉えること。

一人ひとりの成長を支えることが、不可欠

《参加者の声》

本勉強会にお越し下さった皆様からは、多くのご満足いただいた意見を頂きました。本報告で、一部をご紹介させていただきます。

・普段調べたり学んだりするとき、「民族」や「派閥」など一括りで考えがちですが、「人」がどのような思いを持っているかというのに触れられてよかったです。多角的な視野を増やせるようもっと学ぼうと思えました。

・多くについて知り、考える機会になり参加して良かったと思った。 同時に、自分に何ができるのかも考えさせられた。自分のフィールドとの交わりを、もっと学んでいきたいと思わされた。

・普段の関心分野とは違う分野であったので、非常に有意義でした。


この度「国連フォーラム関西主催『特別企画「『人』の視点で見るシリア~シリア紛争と人間の安全保障~」』にご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。

今回残念ながらご参加頂けなかった皆さまも、次回以降の勉強会のご参加をお待ちしております。

国連フォーラムは引き続き皆さまに有意義な「場」を提供できるよう努めて参ります。今後とも、国連フォーラム関西支部をどうぞよろしくお願いいたします。

最後に、多くの方のご協力で、今回のイベントを開催することが出来ました。ご協力してくださったゲストの方、参加者の方に厚く御礼をお申し上げます。

 

国連フォーラム関西支部のFacebookグループページホームページでは、国連や国際協力に関する情報共有を行っております。関心のある方はぜひチェックしてみてください!

第12回SDGs勉強会

第12回SDGs勉強会「途上国の教育を『非認知能力』から考える」

2018年10月28日実施 

国連フォーラム関西支部 第12回SDGs勉強会

『途上国の教育を「非認知能力」から考える』

開催報告

文責:矢野 泰雅

2018年10月28日(日)に、公文教育会館にて、国連フォーラム関西支部第12回SDGs勉強会『途上国の教育を「非認知能力」から考える』を開催いたしました。そのご報告をさせていただきます。

【イベント概要】 

《企画背景》

 国連フォーラム関西支部における2回目の教育企画となる今回は、SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」「学習者の能力の向上」という視点から捉えました。

 質の高い教育を行うことができれば、知識や創造性、読み書き計算の基礎的スキルのみならず、分析や課題解決といった高次の認知機能や、対人関係スキル及びソーシャルスキルの獲得が期待されます。これらの能力は、人々が健康で充実した生活、十分な情報を得た上での意思決定、地域や世界の様々な課題解決に取り組むことを可能とするような市民としての能力や価値観、態度の形成にも寄与すると考えられています(【仮訳】仁川宣言Incheon Declaration)。中でもとりわけ、子どもたちの「粘り強さ」や「動機付け」、「忍耐強さ」などの「非認知能力」が、人々の幸福や社会の発展に貢献することが明らかにされつつあり、認知能力と非認知能力の双方を育む教育の重要性が強調されています(国立教育政策研究所、2017)。しかしながら、現状として教育や政策に関する議論においても、非認知能力は認知能力に比して過小評価されがちであるという見方があります(同上論文)。

 以上を背景に、本勉強会では「質の高い教育」を学習者の能力の向上の視点から、特に「非認知能力」をいかに向上するのかという点に焦点を合わせて考える機会を創ることを目指した勉強会の開催に至りました。

 

《企画目的と到達目標》

 本企画はSDGsシリーズとして「目標 4:質の高い教育をみんなに」に焦点を当て、以下の内容を目的および到達目標として開催しました。

  1. 非認知・認知能力とは何かを知る。
  2. 非認知・認知能力をどのように身につけるかを考える。
  3. 国際教育協力の一つとして「官民連携」を知る。

 

《イベントプログラム》

➢ オープニング

―ゲスト紹介: KUMONのミッションと国連・SDGsとの整合性について

―国際教育協力の歴史的な変遷

―非認知・認知能力の定義づけ

➢ 第1部

―講演① 井上勝之氏 (㈱KUMON執行役員 経営統括本部長)

       ・SDGsの達成に向けてのKUMONの貢献

-バングラデシュでのNGOとの協業に焦点を合わせて-

   ・KUMONを経験した子どもたちの変化

          -非認知能力の向上への貢献に関連して-

 

―講演② 久木田純氏 (関西学院大学教授(学長直属SGU招聘客員教員)、国連フォーラム共同代表)

       ・UNICEFによる教育の質向上のアプローチ

・バングラデシュにおけるBRACの役割とその特徴

・教育分野の民間企業が国際機関と連携することの意義と課題

       ・KUMONのBRACとの連携事業に対する講評

➢ 第2部

― 事例紹介

・国内外の公文式教室における取り組みの中で、非認知能力の向上に寄与していると考えられる事例の紹介(KUMON、JICA民間連携事業等)

 

― ワークショップ

       ・参加型ワークショップ

       ・ゲストからの講評

➢ 閉会の挨拶

-ゲストによる総評

 


【開催報告】

《オープニング》
  • ゲスト紹介:KUMONのミッションと国連・SDGsとの整合性について
    • 公文教育研究会は、発展途上国を含む50ヶ国に個人別、学力別学習を共通のメソッドで展開をしております。独自の公文メソッドでの教室事業や、福祉施設、学校、企業への施設導入などの様々な事業形態を通して、生徒の認知、非認知能力向上への取り組みを行なっております。
    • SDGsでは4番目の目標として、「質の高い教育をみんなに」が掲げられています。SDGsでは教育の「質」に着目し、学校に通うことを保障するだけでなく、子どもたちが身につける教育の内容に焦点を当てています。国連やSDGsにおいて議論される「教育の質」に、「認知能力」と「非認知能力」が含まれています。
  • 国際教育協力の歴史的な変遷
    • 第二次世界大戦後、国際教育協力は人権の1つとして教育を提供しよう、という意図のもと始まりました。1970年代以降、主にアフリカにおいて、教育は国造りに取り組むことのできるエリートを要請するために用いられ、教育の初期段階以上に、高等教育や大学教育に予算・人材が集中しました。
    • しかし、1990年代に転機が訪れます。日本をはじめとした、天然資源などが存在しない東アジア各国が大きく発展し始めたのです。理由の1つとして考えられたのが、初等教育などの教育の初期段階の普及率でした。日本は資源による輸出ではなく、人を資源として成長したことを各国が倣う潮流が生まれました。
    • そこで、2000年代に入ると、2015年まで取り組まれていたMDGsのもと、教育の「量」に着目した目標が掲げられていました。結果として、すべての地域において教育の初期段階の普及は急激に改善されました。しかし、MDGs後に浮き彫りになった新たな問題が、教育の「質」でした。教員の能力が低かったり、教科書の内容が不十分であったりするために、子どもたちが学校に通っていても学び取っていない状況が明らかになりました。
  • 認知・非認知能力の定義づけ
    • 「質の高い教育」とはどのような教育を指すのでしょうか。本イベントでは認知能力・非認知能力と定義しました。
    • 認知能力とは、文字の読み書きができる、計算ができるなどを自分で使うことができる能力に加えて、複雑な話や課題を解決したり、思考をもとに問題を解決する能力も含まれます。
    • 非認知能力とは、知識ではなく、その人自身の態度や振る舞いのことを指します。例えば、自分で目標を掲げて努力する姿勢や、他人とより良い関係を築きながら問題に取り組む能力などです。近年の研究においてBig Five(外向性・協調性・経験への開放性・自律性・まじめさ)という概念をもとに研究が進められてきました。
《第1部》
  • 講演① 井上勝之氏
    • SDGsに対するKUMONのアプローチをバングラデシュの事業例(BRACとの協業)を踏まえ、ご説明していただきました。また、教育の質は多くの視点で考えることができますが、非認知能力に焦点を当てた教育についてお話していただいたことで、非認知能力の測定方法や学習者への効果を理解することが出来ました。
    • KUMONは2015年から、バングラデシュ最大のNGOであるBRAC(Bangladesh Rural Advancement Committee)と協業している。BRACは、世界最大の非政府組織(NGO)としてマイクロファイナンスのみならず、医療、教育、職業訓練などさまざまな貧困者支援を行なっています。
    • 公文式学習法の算数教材が、バングラデシュ最大の NGO である BRAC がダッカと周辺地域で運営する小学校の生徒の認知・非認知能力に与える影響を検証した。その結果、公文式を学習した群には授業自体の出席、算数の授業への積極的な参加・意欲にポジティブな変化が見られました。
      • 講演資料はこちらからご覧いただけます。

  • 講演② 久木田純氏
    • バングラデシュにおけるUNICEFの教育課題に対するアプローチや21世紀に必要なグローバルコンピテンシーについてお話ししていただき、これからどのような教育や企業のあり方、人材が求められているのかをイメージすることが出来ました。

 

《第2部》
  • 事例紹介
    • 第2部ではワークショップで「教育の質」を向上を目指し、子どもたちの「非認知能力」を“いかに”高めるのかを考えます。“いかに”高めるのかについて、明確な答えはなく、今なお子どもたちの様子や取り巻く環境に合わせて試行錯誤が行われているのです。今回は議論の参考として、すでに取り組まれている事例を紹介しました。
    • 〈学習活動の目標〉〈学習活動の場所〉〈学習活動の方法〉の多様な選択肢に着目し、次の2つの事例を紹介しました。
    • KUMON 公文式を児童養護施設 日本水上学園に導入した事例:

児童養護施設で生活する子どもたちが公文式を活用し自学自習をすることを通して、学習の達成感や意欲、成功体験を通じた自尊感情の高まりといった変化が見受けられるようになった事例です。

紹介動画

KUMON Now!「児童養護施設でのKUMON-日本水上学園」Ⅴol.097

    • JICA 「学びの質向上のための環境整備プロジェクト」:

エジプトで、児童の他の人と協力して取り組む力や感情をコントロールする力を向上するため、学級会や掃除、日直などの「特別活動(トッカツ)」の導入が行われている事例です。

紹介動画

JICA(2018/10/4)「『エジプト・日本学校』35校が開校:日本式教育をエジプトへ本格導入」

 

  • ワークショップ
    • A国B村という架空の地域の公立初等学校のケースをもとに、「教育の質」が低い原因を分析し、問題を解決するためのプロジェクトを立案するという問題解決型ワークショップを行いました。
      • 当日使用したケースはこちら(*ケースの国、学校などは実在しません。図表は参考資料をもとに一部改編しています。)
    • 今回は、「非認知能力」に着目するため、就学率や中退率といった量的な側面だけでなく、「仲間と協力して何かに取り組む機会の不足」といった内容や方法の側面に特に着目して問題分析を行いました。
      • 参加者のみなさんの間では、ご自身の学校での学習経験や途上国を訪問した経験を振り返りながら、教員同士の連携の不足や地域社会との関係などに着目して議論が行われました。
    • プロジェクト立案では、人やモノが不足する途上国の学校の限界も考慮し、学校が持つポテンシャルや学校以外の様々な教育の機会や資源を取り入れた提案が行われました。
      • 提案されたプロジェクト名の例
        • 「教員再教育プロジェクト」
        • 「多様性を身につけるための作文・グループ活動導入プロジェクト」
        • 「全員で卒業しよう」プロジェクト など
  • ワークショップの風景

①問題分析・目標設定に取り組む様子

②プロジェクト発表の様子

➢ 講評・表彰

  • グループ発表を受けて、ゲストの久木田氏と井上氏からご講評をいただきました。
  • 今回は、問題への着眼点やプロジェクトのアイディアの新規性・創意工夫に着目して、「ポテンシャル賞」「グッドアイディア賞」の表彰を行いました。児童生徒が協力して「理想の家をつくる」という学習活動を提案したチームや、次世代の教員を育成するために教員が相互に支える仕組みを提案したチーム、少数民族やジェンダーなどの多様性に関する問題に対して、作文を通して互いの思いを打ち明ける活動を提案したチームが賞を受賞しました。

➢ 講評の風景

ゲストによる講評の様子

表彰の様子

《ゲストからの総評》
  • イベントの最後に、ゲストから本日の総評をいただきました。
    • 井上氏から、今年9月にバングラデシュを訪問した際のエピソードをお話しいただきました。KUMONとBRACとの今日の協力関係は一朝一夕に出来上がったものではなく、その背後に、2度の事業の中断や、信頼関係を築くための弛まぬ努力がありました。さらには、バングラデシュが独立国家として承認される過程で日本の先人たちがかつて果たした貢献への、バングラデシュの人々からの感謝の思いがありました。
    • このような先人の途上国の発展への努力の積み重ねがあったからこそ、今の関係があり、それと同じように、私たちも将来をつくる役割を担っているということ。だからこそ、参加者のみなさんも、長い将来に得られることを願って、世界に関わってほしいというエールをいただきました。

 

《参加者の声》

参加者の皆様からのアンケート結果を一部抜粋してご紹介致します。

  • 高校生から社会人まで幅広い年代の人とディスカッションができて楽しかったです。
  • 公文の話もUNICEFの話も情報量があり、情熱的な講演で新しいことが十分知れたので楽しかったです。
  • ワークショップでは、はじめに問題があって、それを深く考察してから問題解決について考えたので、より実践的で楽しくできました。
  • 参加前は漠然とした意識でしたが、どのように国際協力に民間企業を巻き込んでいくかを考えるきっかけになりました。

 

《今回のテーマについてもっと知りたい方へ》

今回のテーマについてさらに深く知りたい方は、ぜひ以下のサイトなどをご参照ください。

国連フォーラムの担当幹事が、勉強会の内容をもとに下記のリンク先を選定しました。

 


『途上国の教育を「非認知能力」から考える』にお越しくださった皆様、誠にありがとうございました。今回残念ながら参加ができなかった方も、次回以降のご参加をお待ちしております。今後とも、国連フォーラム関西支部をどうぞよろしくお願いいたします!

また、国連フォーラム関西支部のFacebookグループページホームページでは、国連や国際協力に関する情報共有を行っております。関心のある方はぜひチェックしてみてください!

第11回勉強会

第11回SDGs勉強会「『法と開発』を考える」

2018年7月22日 実施

国連フォーラム関西支部 第11回SDGs勉強会

『「法と開発」を考える

開催報告

文責:黒﨑 野絵海

2018年7月22日に、関西学院大学梅田キャンパスにて、国連フォーラム関西支部際11回SDGs勉強会『「法と開発」を考える』を開催いたしました。そのご報告をします。

【イベント概要】 

《企画背景》

 1990年代以降の開発援助政策の展開と共に、開発途上国における法制度改革に焦点があたるようになり約30年が経ちます。今となっては、「法と開発」は日本でもソフト面での支援の代表格として、「法整備支援」という名称で行われています。しかし、関西において「法と開発」の議論をしている場は殆どなく、学生自身も知る機会が少ないです。そのため、「法と開発」の重要性を幅広い観点で知る機会をつくるために企画しました。

《イベントプログラム》

オープニング

  国連フォーラム紹介、タイムライン説明

第1部 法と開発の系譜、法整備支援主体を学ぶ

第2部 ケーススタディ

閉会

- ゲストによる講評

- クロージング

《ゲスト》
金子 由芳 神戸大学大学院国際協力研究科教授
アジア地域の民事・経済法制を主対象として、開発に伴う法制度の自律的発展の問題を、比較法的知見と地域研究とを融合する方法で研究している。
東京大学法学部卒業。法学修士 (ジョージタウン大学)、法学博士 (九州大学)、日本輸出入銀行 (現国際協力銀行)、広島大学を経て現職。

【開催報告】

《第1部》

◆法と開発の系譜、法整備支援主体を学ぶ


国連フォーラム関西支部運営メンバーの黒﨑より、開発援助の歴史的変遷とともに、「法と開発」における目的・手段の変化を説明。

以下発表資料を掲載いたします。

https://docs.google.com/presentation/d/1vEkVyIgqK63xdvVls_5N4h1lwI-Hmq_AFTEHDPvnv4Y/edit?usp=sharing

《第2部》

◆ ケーススタディで考える。
ゲストの金子由芳氏より、「法と開発」に関する日本の法整備支援の課題に関しての説明いただいたのち、ミャンマーを事例に日本の法整備支援の課題を参加者同士でディスカッションをしました。

【日本の法整備支援の課題】

①寄添い型支援?~現地ニーズといかに整合化?

②ドナー間のモデル対立をどう整合化すべきか?

③人材育成重視のグッド・ガバナンス支援? ~法曹や行政官をどう育てていくべきか

【ディスカッションの内容】

寄添い型支援?~現地ニーズといかに整合化?

[経済外交と人権外交の両立]
・経済外交+人権外交はできるのか?
人権外交を押し出すとしても経済外交がないと相手国のメリットにならない
・向こう側に寄り添うとは、どういうことなのか?
経済面、人権面の開発をバランスよく行うこととする。

[開発独裁という障壁]
開発独裁によって日本的にも開発がしにくいのかもしれない。

・憲法的な課題を放置しながら経済外交重視でいいのか?
経済が進むと出てくる問題(不正雇用など)が出てくる可能性がある。しかし、憲法に対する干渉は、内政干渉になりかねない。

[結論]
相手国のニーズがあるので経済政策をやり、内政干渉にならない程度の私法や行政の改革を行っていくことがベスト。

人材育成重視のグッド・ガバナンス支援? ~法曹や行政官をどう育てていくべきか

[試験制度]

現状:試験の点数で学部が決まる。

→希望通りの学問が学べるように(教育を平等に)

→日本が試験を監視

[賄賂]

内部から変えていくのは難しい

外部から変える

→・厳しく取り締まる

 ・メディアを通し、賄賂は御法度であると認識させる。

→ただ、取り締まる主体も省庁のため、自分たちが汚職をしてきたのにそれを変えようと頑張るのだろうか。

[結論]

留学生の規範意識を正す

法整備支援とは違ってくるが、

・日本が監視

・日本が企業の技術(IT)で平等な試験を履行する制度を整えるよう促す。

《参加者の声》

参加者の皆様からのアンケート結果を一部抜粋してご紹介いたします。

・「全く知らない分野だったが、1つの国家が別の国の開発・発展を支援していく方法の1つとしてもっと学んでいきたいと思った。」
・「法整備の種類やニーズがあること、日本がどのように行っているかがわかった。」
・「参加する前は、講義が主体の内容かと思ったが、ディスカッションも含まれていて、能動的にものを考えることができたと思った。」
・「元々、経済団体での産業振興をメインにした民間経験を通して大学院で平和構築・開発政治を研究したいと思っていた。この講演に参加してみて、開発をより学問として追求したいと思うようになった。」
・「自身の不勉強な分野である「法」に対する関心が高まった。「政治」と「法」と「開発」の連関性をもっと意識していこうと決意した。」


お越しくださった皆様、誠にありがとうございました。今回残念ながらご参加頂けなかった皆さまも、次回以降の勉強会のご参加をお待ちしております。

国連フォーラムは引き続き皆さまに有意義な「場」を提供できるよう努めて参ります。今後とも、国連フォーラム関西支部をどうぞよろしくお願いいたします。

また、国連フォーラム関西支部のFacebookグループページホームページでは、国連や国際協力に関する情報共有を行っております。関心のある方はぜひチェックしてみてください!

国連フォーラム関西第1回高校生フォーラム「未来(さき)の話をせえへん?~地球規模課題と私たちの関わり~」

2017年7月16日実施 

「未来(さき)の話をせえへん?~地球規模課題と私たちの関わり~」

開催報告

 

【イベント概要】 

日時 2017年7月16日(日)12:00~15:30
場所 関西学院大学梅田キャンパス1405教室
ゲスト

久木田純氏(関西学院大学教授、国連フォーラム共同代表)

鷲巣仁美氏(手術室看護師)

有廣悠乃氏(神戸大学大学院国際協力研究科・株式会社ワンピース・NPO法人EN Lab. 理事)

参加者 高校生 23人
コンテンツ

・オープニング

・講演

・パネルディスカッション

・ワークショップ

 

《オープニング》
  1. 国連フォーラムの紹介

・国連フォーラムの目的

・メーリスの紹介

・国連フォーラムの歴史、背景

・イベントや勉強会、ネットワークの構築など

2. 代表によるお話

    1. 自己紹介(国際協力に興味をもったきっかけ、背景など)
    2. 高校生企画の説明:「いろんな人のいろんな意見を聞いて、今後将来を考えていく上でのイメージや、視野を広げる機会になれば」
    3. 高校生フォーラムチームの紹介
《講演》
  1. 久木田純 氏「未来にはどんな課題が待ち受けているのか」

人生は自分でデザインできる

・人生100年計画の作成で自分は何故生きているのか、世界とは、を考える。

・自己保存と種の保存、という地球の過程から、自己実現と人類の存続進化を生き方としようと決めた。

・梵我一如というガンジーの言葉

・自分の能力を最大に高める(自己保存)、世界に出て子どもの発育と教育(人類の存続進化)を両立させようと決める。

・国連での活動・活躍について

世界は変えられる

・20世紀のパラダイムが作り出した問題について振り返る

  • エネルギー問題
  • 貧富の差・・・富が先進国と富裕層に吸い上げられた結果、現在の人口構造が出来上がった

    

差別や紛争、人権侵害にさらされることに=>人類のポテンシャルが活用されていない

・みなさんが生きるのは、21世紀ミレニアル世代:100歳くらい生きられる

 →シンギュラリティの到来

・まず、世界に出て、戻ってきて、自分たちの立ち位置を確認してほしい。

  1. 問題解決しなければ地球の未来は危ない
  2. 大切なのは、問題解決能力
  3. 求める世界へ、ライフスタイルから変えよう

 

2. 鷲津仁美 氏

看護師として働きながら、海外にも足を運び、世界の生死にかかわっている

JAPAN HEART

「短期」「ボランティア」で医療のないところに医療を届ける

診療ミッション・手術ミッション

カンボジアでの手術ミッション

・カンボジアの紹介

ポルポト政権…知識者が大量虐殺され、医療者が40人に減少。派遣時も設備はあるが、それを使える人がいない状況

・現地の医療者を育てよう教育しながら手術を進める

・世界でも頑張っている子の紹介

 JAPANHERATの里親制度を利用して勉強している

「エンパワーメントする」

・皆さんに考えていただきたい課題

・求める人材…鷲津さんからは、「ストレスに耐えられる力」を。自分自身の身体と心を大切にする

 

3. 有廣悠乃 氏

  1. 自己紹介:教育免許を取得し、大学院で研究者を目指しながら、株式会社ワンピースで仕事をしている
  2. 教育に関心「社会を教育から変えたい」小学校の先生になって世界を変えてやろう、と立命に進学
  3. ケニア、フィンランド、ミャンマーなどいろんな国に行ってみたものの…まだまだ世界には深刻な貧困地域がある

本当に他国の途上国だけが問題なのか?日本にも問題があるのでは?ということを考えてほしい

  1. ファシリテーション・ワークショップの手法に大学2回生で出会う
  2. 大学3回生の時に、まちづくり、という仕事に出会うことで、そこにいる人たちの価値観や考え方を大切にしながら、対話し合うことを学ぶ。目の前にいる人たちに対して真剣に考えることの大切さ、相手に寄り添い自分を変えていくことで周りが変わることを学ぶ。

持続可能な社会を作る ―お互いを大切にすることができれば、きっとできるのではないか

みなさんに考えてほしいこと「あなたはどうしたいの?」ということ

国際協力をやりたい、だけでなく自分の幸せや、世界にどうなってほしいかを考えてほしい。結果、何を得たいのか、人生の目的などを考えてほしい。

 

《パネルディスカッション》

久木田さん:く

鷲津さん:わ

有廣さん:あ

 

Q: 偉人と一般人のちがいとは?

A: 

く:長い期間、あきらめずに、つまり自分の目的や価値観が明確で、ぶれず強い意志でやってきた人たちだと思う。

 

Q:国際協力をするうえで、高校生の間につけておくべきスキルとは?

 

A: 

く:まず、自分は何を大切だと思っていて、何をしたいのかを考えてほしい。まず、アイデアを出してみて、勉強してほしい。

わ:自分のことをよく知り、自分の考えを明確にしてほしい。自分の健康を大切にしつつ、世界のことに目を向けて。問題解決に向けて、考えて動いて、と努力をして思いがあれば、いずれ見えてきます。どう受け止めて、どのように生かしていくかが大切。

く:1.内発的動機付け:自分自身でやりたいことを見つけて進んでいく、

 2.レジリエンス:負けない、ぶれない、失敗してもそこから学んで進んでいけること、

 3.セレンディピティ:人生の様々な選択を、自ら進んでやっているうちにやってくる幸福・機会、

 4:インテグリティ:首尾一貫、言っていることとやっていることが一貫している。これらが大切。

あ:スキルは後からついてくるものだと思うので、思いが大切。「思い」を出し、伝えられるようになってほしい。そうすると、やっていくべきものが見えてくる。

 

Q:どのようにしたら世界は協力的になれるのか?

A: 

あ:地域の現状を知ることから始まり、問題解決ができる。

 

Q: 2050年にどのような仕事が生まれ、どのような仕事がなくなっていくか?(ナガハマさん)

A: 

く: AIは人間の考えを出す、つまり感動を生み出すのが苦手。地球の問題を解決する仕事は生まれてくるのでは。

あ:仕事がなければ作ってしまえばよい。自分が楽しく仕事できるものを作ってしまえばよいのではないか。

 

Q: コミュニケーションの取りづらい人はいるか、またどのように接するか?その時の対処法とは?

A: 

く:必ずその国の言葉を覚えてきたが、発音できないものもあった。でも、あきらめることはない。努力し続けて理解しようとすると、相手も理解しようとしてくれる。

わ:様々なツールを駆使する(翻訳者や、助けてくれる人)。デザイン力は誰にでも通じることができる大きなツール。

あ:意外とコミュニケーションが取りづらい子がたくさんいる。その人のことを知ろうとすることが大切。あきらめずに、寄り添いながら理解しようとすること。

《ワークショップ》
  1. 自己紹介
  2. ルイスの物語を朗読して、内容を把握しよう
  3. ウェブチャートで掘り下げる 

ルイスがなぜ死んでしまったのか、「原因」を考えてみよう

  1.  付箋に「原因」を書き出す
  2.  真ん中に「ルイスの死」と書く
  3.  「原因」を真ん中に張り付ける
  4.  洗い出した「原因」を整理し、さらに掘り下げる

 

4.ワークショップ、スタート

5. 2050年はどうなっているか? 

気候変動によって、干ばつが激しく食糧難や、水不足、またこれらによる感染症

災害や紛争による難民問題や人口移動

職を都市に出稼ぎに行くなどがあれば、児童労働など労働問題や貧困の悪化、児童婚なども

6. ワークショップ2

Q1: これからの世界はどうなってほしい?

Q2: あなたの望む世界を実現するためにあなたは何ができるか、また何がしたいか?

7. 講評

:問題意識の高い高校生たちは、学校で話し合えなくても、このような場では思いっきり話ができる。そうすると様々な意見が出てきて、知識も増える。

様々なことを学ぶ中で大切なのは、構造的に理解すること。世界の問題がどのようにつながっているのか。まずは、状況分析をすることができることが、スキル。どのように解決するべきかBest Practiceを探し出す。そのためには、Communicateする必要があり、自分たちもやろうと促す。

現場での経験を増やすことも大切。原因構造をみつける中で、直接原因や間接要因などがあることがわかりましたね。このように構造的に状況を理解していきます。マインドマップは手でやったほうがいい。

自分たちがやっていく、またはやっているところに参加していってください。

近い将来の話だけでなく、生涯の話をしてほしい。

:自分でもどんどん考えを発していってほしい。問題解決のために、項目ごとにやらなきゃいけないことを挙げて優先順位を考えていく。

:複合的な問題の根本をいろんな視点からアプローチしてほしい。問題解決にもいろんな視点を持つ目を養ってほしい。目の前のものや人、人の気持ちを大切にしてほしい。

8. ワークショップ3

「自分がやりたいと思っていること。自分が迷っているものを言葉にする」

《参加者の声》
最後に参加者アンケートから参加者の声を一部抜粋してご紹介します。
「学校ではできないような議論ができた。」
「立場・年齢が違う人たちと意見交換できて嬉しかった。」
「人の話を聴くのも自分のこと話すのもとても勉強になりました。」
「色んな考えや目標を持った同世代の人と意見を聞きあえて良かった。」
「色んな職を経験している方々の話が聞けた。」
「自分の夢のぼやっとしていた部分が明確になった。」
ー*ー*ー*ー
みなさまと共にこのような場を作ることが出来たことを、とても嬉しく思います。
これからも国連フォーラム関西支部をどうぞ宜しくお願い申し上げます。

また、国連フォーラム関西支部のFacebookグループページホームページでは、国連や国際協力に関する情報共有を行っております。関心のある方はぜひチェックしてみてください!

第7回

第7回SDGs勉強会「持続可能なまちづくりとは?~世界に潜む災害の危機~」

2017年3月25日実施 

国連フォーラム関西支部 第7回SDGs勉強会

「持続可能なまちづくりとは?

~世界に潜む災害の危機~」

開催報告

 

2017年3月25日(土)に、関西学院大学梅田キャンパスにて、『第7回SDGs勉強『「持続可能なまちづくりとは?~世界に潜む災害の危機~」』を開催致しました。そのご報告をさせて頂きます。

【イベント概要】 

《企画背景》

①SDGsと都市
SDGs#11「住み続けられるまちづくりを~都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする」において、「都市は多くの地球規模の諸問題の根源であるとともに解決策でもある」と述べられています。一体、都市はどのような問題を抱え、いかにそれらの問題解決に取り組むことができるのでしょうか。このような疑問からこの企画が立ち上がりました。

②都市と防災
 都市の急成長は農村部から都市部への急速な人口移動、そして巨大都市の台頭をもたらしてきました。(現在、世界人口の半分以上が都市部に暮らしており、2050年までに都市人口は全人口の3分の2にあたる65億人に達することが見込まれています。) 人口の密集に伴い、都市は知識や資源、資本、交通の主要な結節点となった一方で、極度の貧困世帯が集中し、環境問題の発生源となっています。このような地域は、ひとたび災害に見舞われると人命や生活、種々の産業に甚大な被害を及ぼすことが予想されます。したがって、今回は特に防災に焦点を当て、SDGs#11「住み続けられるまちづくり」を実現するために何が必要であるのかを考える機会としました。

③ 私たちはいかに関わることができるか
持続可能な社会の実現に向けて、様々な災害を経験してきた日本は、いかにその教訓を活かすことができるのでしょうか。「兵庫行動枠組2005-2015」から「仙台防災枠組2015-2030」への変遷、また「持続可能な開発目標(SDGs)」における「強靭なまちづくり」の重要性を認識した上で、私たちが「住み続けられるまちづくり」にいかに関与していけるかについて創造的な議論ができる場をつくりました。

《企画目的》

(1)持続可能な開発と「まちづくり」「防災」の関係とは?:

SDGs#11「住み続けられるまちづくりを」の内容を理解する。今回は特に、「防災」に焦点を当てて、災害に強靭なまちづくりの重要性を認識する。

(2) いかに日本の教訓を「災害に強靭なまちづくり」に活かせるか?:

防災・減災に向けて行動を始めることが合意された「兵庫行動枠組2005-2015」や防災・減災への具体的な行動計画が記された「仙台防災枠組2015-2030」の内容、関わる策定過程を辿り、日本の教訓が果たしうる役割について知る。

(3) 枠組を適用する上で何が課題となるか?:

各国・各地域の多様性に合わせて枠組を適用する必要性、さらに、実行する上で必要な要素について知る。

(4) 私たちはいかに「災害に強靭なまちづくり」に関わることができるか?: 

「災害に強靭なまちづくり」実現の難しさを感じながらも、それぞれの専門分野や興味関心を活かし、いかに防災にかかわることができるかを考える。

 

《イベントプログラム》
◆概要
日程: 2017年03月25日(土)
時間: 18:20~21:00 (18:00 開場)
場所: 関西学院大学梅田キャンパス1004教室
◆スケジュール
18:00~18:20:開場
18:20~18:30:オープニング
第1部
18:30~19:00:講演①(松岡 由季 氏)
       「SDGs#11 仙台防災枠組の策定過程における議論 」
19:00~19:30:講演②(河田 惠昭 氏)
       「日本の教訓を復興と将来の防災に生かすには」
第2部
19:35~20:15:パネルディスカッション
  「『枠組』から『命を救う計画』へ〜地域の多様性に添う施策・実行とは〜」
20:15~20:25:国連職員キャリアフォーラム
第3部
21:00〜 :懇親会
《ゲスト》
河田 惠昭 氏 人と防災未来センター所長、関西大学社会安全学部・社会安全研究センター長・特別任命教授

専門は防災・減災。現在、阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター長(兼務)のほか、京大防災研究所長を歴任。京都大学名誉教授。2007年国連SASAKAWA防災賞、09年防災功労者内閣総理大臣表彰、10年兵庫県社会賞受賞、14年兵

庫県功労者表彰、16年土木学会功績賞。現在、中央防災会議防災対策実行会議委員。日本自然災害学会および日本災害情報学会会長を歴任。

松岡 由季 氏 国連国際防災戦略事務局 駐日事務所代表

在ジュネーブ国連日本政府代表部(外務省)勤務などを経て、2004年に国連国際防災戦略事務局(UNISDR)に入職。本部(ジュネーブ)にて、プログラム・オフィサー、事務局長特別補佐官を務めた後、2009年UNISDR駐日事務所代表に就任し、現在に至る。「仙台防災枠組」を採択した第三回国連防災世界会議に係るプロセスに中心的に携わった。

久木田 純 氏 関西学院大学教授、国連フォーラム共同代表

1978年西南学院大学文学部英語専攻卒業、シンガポール国立大学社会学部留学(ロータリー財団フェロー)を経て、九州大学大学院で教育心理学修士号取得,同博士課程進学。1985年外務省JPO試験に合格、翌年から国連職員としてユニセフ駐モルディブ事務所に派遣され、駐日事務所、駐ナミビア事務所、駐バングラデッシュ事務所、ニューヨーク本部を経て、駐東ティモール事務所代表、駐カザフスタン事務所代表を歴任。2015年1月国連退官。2003年に世界銀行総裁賞受賞、2011年に東ティモール共和国勲章を受勲


【開催報告】

勉強会当日は、ゲストの方の講演とパネルディスカッションの2部構成で行いました。第1部のご講演で、国際枠組や防災・復興の現場の状況について触れたのち、第2部のパネルディスカッションでは枠組およびそれを実行していく行政と、実際に防災・減災・復興に携わる現場がどのように協働し、災害に強いまちづくりを実現していくのかについて、それぞれのお立場から議論していただきました。

《オープニング》

弊団体の浅川より、本勉強会の企画趣旨の説明が行われました。

《第1部 ゲストによるご講演》

松岡 由季 氏より「SDGs#11 仙台防災枠組の策定過程における議論」についてご講演いただきました。

河田 惠昭 氏より「日本の教訓を復興と将来の防災に生かすには」についてご講演いただきました。

《第2部 パネルディスカッション》

ご講演いただいたゲストのお二方と関西学院大学の久木田教授より「『枠組』から『命を救う計画』へ〜地域の多様性に添う施策・実行とは〜」をテーマにパネルディスカッションを実施しました。

 

《参加者の声》

参加者の皆さまからの感想、コメント本日の学びに関して、アンケート結果を抜粋してご紹介いたします。

  • 「防災の主流化」を通じ可能な限りの備えを怠らない。このことがとても重要でありもっと多くの方に聞いて欲しい話だった。
  • 防災意識を高める必要性に気づいた。
  • 防災にもっと本腰を入れないと!
  • レジリエンスを高めるということは, 持続可能な発展を可能にする ということと同じである。

この度「第7回SDGs勉強『「持続可能なまちづくりとは?~世界に潜む災害の危機~」」にご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。

今回残念ながらご参加頂けなかった皆さまも、次回以降の勉強会のご参加をお待ちしております。

国連フォーラムは引き続き皆さまに有意義な「場」を提供できるよう努めて参ります。今後とも、国連フォーラム関西支部をどうぞよろしくお願いいたします。

 

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第6回

第6回SDGs勉強会「アフリカの将来とビジネス~TICAD VIを経た今、日本の果たす役割とは~」

2016年12月9日実施

国連フォーラム関西支部 第6回勉強会

SDGsとアフリカ開発

開催報告

国連フォーラム関西です。2016年8月下旬、ケニアにおいてTICAD VI(第6回アフリカ開発会議)が開催されました。1993年以降日本政府が主導する形で開催されてきたTICADが、今回初めてアフリカでの開催となり注目を浴びました。
「日本はこれまでどのようにアフリカと関わってきたのだろう?」「アフリカが抱える問題は、今どうなっているのだろう?」今回のTICADをきっかけに、このような疑問を抱かれた方もいると思います。アフリカの開発、そして日本とアフリカの関係について、ゲストの方々、参加者の皆さまで一緒に考え、学びました。

【イベント概要】

《企画概要》

イベント名:SDGsとアフリカ開発

日時 :2016年12月9日 18:30~21:00

場所 :関西学院大学大阪梅田キャンパス1004教室

ゲスト :

  • 田瀬 和夫氏
    国連フォーラム共同代表。デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 執行役員・ディレクター。2016年5月1日より同社CSR・SDGs推進室長に就任。
    1992年外務省に入省し、国連政策・人権人道・アフリカ開発・国際機関拠出金・人間の安全保障などを担当したのち、2004年に国際連合人道問題調整部人間の安全保障ユニット課長。大阪大学招聘教授。
  • 大豊 盛重氏
    公益社団法人 日本国際民間協力会NICCO 本部部長/NGO相談員
    放送局・テレビ番組制作会社での勤務を経て2010年NICCOの職員となる。マラウイでの飢餓の起きない村づくりのほか、東日本大震災、パレスチナオリーブ農家支援などで現地担当。現在は京都本部にて広報・チャリティイベントを担当。
  • 久木田 純氏
    国連フォーラム共同代表。関西学院大学教授(学長直属SGU招聘客員教員)。
    ユニセフ駐モルディブ事務所、駐日事務所、駐ナミビア事務所、駐バングラデッシュ事務所、ニューヨーク本部を経て、駐東ティモール事務所代表、駐カザフスタン事務所代表を歴任。2003年に 世界銀行総裁賞受賞、2011年に東ティモール共和国勲章を受勲。
  • 大林 稔氏
    龍谷大学経済学部名誉教授。早稲田大学経済学研究科博士課程満期退学。博報堂、外務省、国連開発計画などを経て龍谷大学へ。
    アフリカの政治経済および開発援助について研究を進めるとともに、実践的にアフリカの発展に関わり、第四回TICADの際はTICAD市民社会フォーラムの代表として、アフリカと日本の市民社会の参加に努力した。

【開催報告】

第1部》講演
「アフリカの開発とTICAD」(大林氏)
「アフリカにおける国際協力とNGOの実例」(大豊氏)
「ビジネスは格差を解消できるのか」(田瀬氏)

《第2部》パネルディスカッション
「アフリカ×SDGs×ビジネス」

《第3部》座談会

当日の内容を記録致しました議事録は以下のURLからご覧いただけます。
https://docs.google.com/…/1vwAKj0t-zY0uoF4XlrqAZSXfbX-cU9nL…


多くの参加者の皆様と共に、ゲストの方々を交え充実した議論を行うことができ、運営メンバー一同とても嬉しく思います。
これからも国連フォーラム関西支部をどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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第5回SDGs勉強会 「人権を守ってこそ持続可能な開発に」

2016年9月30日実施

国連フォーラム関西支部 第5回SDGs勉強会

人権を守ってこそ持続可能な開発に

開催報告

すべての人間が生まれながらにして持っている権利、「人権(Human Rights)」。
ジェンダー、マイノリティの権利等々、様々な分野で語られているこの概念ですが、「重要なのはわかるけど、具体的に何を指すのかはいまひとつよく分からない・・・」そんな風に感じたことがある方も少なくないはずです。
しかし、そんな「人権」、実はSDGsの原則にその考え方が反映されているなど、現在開発政策や実践の場においても重要視されつつあります。
「人権」とは何なのか、そして人権はSDGs、ひいては国際社会にどのように関わっているのか、秋の夜長に素敵なゲストの皆さまと共に考えてみました。

 

【イベント概要】

《企画概要》

イベント名:人権を守ってこそ持続可能な開発に

日時 :2016年9月30日 18:00~20:00

場所 :関西学院大学大阪梅田キャンパス1408教室

タイムテーブル:

18:00 – 18:05 国連フォーラムの説明
第一部
18:05-18:35 伊藤氏 「ヒューマンライツ・ナウの人権擁護活動から『人権』を考える」
18:40-19:00 久木田氏「子どもの権利条約とユニセフのプログラム」
19:00-19:20 パネルディスカッション
 議題:「SDGs×Human Rights~人権がSDGsに組み込まれることによる現実の変化~」
第二部
19:25-19:45 グループディスカッション/質疑応答
20:00 終了予定

ゲスト :

  • 伊藤和子(いとう かずこ)氏
    弁護士 国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長
    1994年に弁護士登録。女性、子どもの権利、えん罪事件など、人権問題に関わって活動。2004年、ニューヨーク大学ロースクール客員研究員。2005年、国連人権小委員会インターン、米国NGOインターンを経て2006年に帰国。2006年に国境を越えて世界の人権問題に取り組む日本発の国際人権NGO・ヒューマンライツ・ナウの立ち上げに関わり、事務局長として国内外で現在進行形の人権侵害の解決を求めて活動中。ヒューマンライツ・ナウは2012年以降国連特別協議□を付与された国連NGOとして活動中。
    同時に、弁護士として、女性をはじめ、権利の実現を求める市民の法的問題の解決のために日々活動している。ミモザの森法律事務所(東京)代表。
  • 久木田純(くきた じゅん)氏
    関西学院大学教授、国連フォーラム共同代表(unforum.org)。
    1978年西南学院大学文学部英語専攻卒業、シンガポール国立大学社会学部留学(ロータリー財団フェロー)を経て、九州大学大学院で教育心理学修士号取 得、同博士課程進学。1985年外務省JPO試験に合格、翌年から国連職員としてユニセフ駐モルディブ事務所に派遣され、駐日事務所、駐ナミビア事務所、 駐バングラデッシュ事務所、ニューヨーク本部を経て、駐東ティモール事務所代表、駐カザフスタン事務所代表を歴任。2015年1月国連退官。2003年に 世界銀行総裁賞受賞、2011年に東ティモール共和国勲章を受勲。

【開催報告】

《第1部》講演

「日本初国境を超える国際人権活動」(伊藤氏)
「子どもの権利条約とユニセフのプログラム」(久木田氏)

 

《第2部》パネルディスカッション

SDGs×Human Rights ~人権がSDGsに組み込まれることによる現実の変化~

《第3部》グループディスカッション

当日の内容を記録致しました議事録は以下のURLからご覧いただけます。
https://docs.google.com/…/1JOkYZpWCLdlsuCHeSR6EtVI6jm7…/edit


みなさまと共にこのような場を作ることが出来たことを、とても嬉しく思います。
これからも国連フォーラム関西支部をどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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第3回SDGs勉強会 「幸せの指標化への挑戦~これからの開発を考える」

2016年7月15日実施

国連フォーラム関西支部 第3回SDGs勉強会

幸せの指標化への挑戦

~これからの開発を考える~

開催報告

テーマは、開発分野で永遠のジレンマであり続ける、”幸せ”の指標化。経済成長率、教育普及率・・・人間の豊かさとは、本当に客観的に指標化できるものだけなのでしょうか。もし本当に大切なのはもっと主観的な”幸せ”なら、それを開発プロジェクトに落とすためには、主観的な幸せをどのようにして指標化しうるのでしょうか。開発分野に少しでも足を踏み入れたことがある人なら誰でも直面したことのあるその問いの答えを、豪華ゲストの皆さんと贅沢な企画で、一緒に考えてみました。

【イベント概要】

《企画概要》

イベント名:幸せの指標化への挑戦 ~これからの開発を考える~

日時 :2016年7月15日 18:30~21:15

場所 :関西学院大学大阪梅田キャンパス 1408教室

タイムテーブル:

18:00~18:30:開場
18:30~18:40:オープニング、国連フォーラム紹介
18:40~19:20:講演~幸せの指標化への挑戦~
19:20~21:00:ワークショップ
  ~あなたがUNHDP(国連幸福開発計画)の職員だったら?
21:00~21:15:クロージング

ゲストの皆さま:

久木田純教授(関西学院大学教授、国連フォーラム共同代表)
村田俊一教授(関西学院大学総合政策学部教授、前国連アジア太平洋経済社会委員会事務局次長)
NGO光の音符(HP:  http://hikari-no-onpu.com/ )
 西村ゆり氏(NGO「光の音符」設立者、同志社女子大学嘱託講師、京都府医師会看護専門学校講師)
 後藤聡美さん(「光の音符」学生スタッフ、神戸大学人間発達環境学研究科修士1年)
NPO法人D.Live
 得津秀頼氏(「D.Live」副代表理事、元小学校教員)


【開催報告】

《第1部》

講演「持続可能な開発に向けた「質的」アプローチの重要性と実現への課題」(村田氏)

グローバル化が進み、経済発展が豊かさの象徴となりつつある現状に対して、SDGsやGNH(国民総幸福量)といった質的な開発アプローチの重要性を説明していただきました。一人一人の多様性を認め合い、時間に追われるような生活を見直し、自分にとって何が本当に幸福なのか問い直すことが、これからの時代を生きていく人々にとって大切であると教えていただきました。

《第2部》

ワークショップ「あなたがUNHDP(国連幸福開発計画)の職員だったら?」

ワークショップでは、指標化できない価値にそれぞれのフィールドで取り組んでいるNGO光の音符様、D.Live様の両ゲストの事例をもとに、①参加者がその事例の抱える課題を発見し、問題解決のためのプロジェクトを立案する ②プロジェクト立案を通して感じた、指標化できないものの指標化の長所と短所について議論する という二部構成でグループに分かれて話し合っていただきました。

 

 

その後、ゲストの方々から活動紹介とご講評をいただき、自尊感情や地域の人々とのつながりなど、量的に測ることのできない価値の大切さを実務経験の中からお話ししていただきました。

 

《参加者の声》

最後に参加者アンケートから一部参加者の声を抜粋してご紹介します。

  • 幸せという指標化が難しいテーマについて議論したり考えるということが初めてだったので、出てくる意見や内容が全て新鮮でとても勉強になった。より一層このテーマに興味を持てた。
  • 勉強会の主要テーマである、”幸せの指標化”について議論する時間や参加者との交流の時間がもうすこしほしかった。
  • 自分の研究に関して重要な知見が得られた。

みなさまと共にこのような場を作ることが出来たことを、とても嬉しく思います。

これからも国連フォーラム関西支部をどうぞ宜しくお願い申し上げます。


また、国連フォーラム関西支部のFacebookグループページホームページでは、国連や国際協力に関する情報共有を行っております。関心のある方はぜひチェックしてみてください!