国連フォーラム 国連でインターン・ボランティア

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服部真衣さん(写真79-1 GED同僚とIDAHO Day 国際反ホモフォビア・トランスフォビアの日イベントにてPhoto: ILO GED)

 

第79回:服部真衣(はっとり まい)さん
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカルサイエンス

社会政策学部 社会政策と計画 修了
インターン先:国際労働機関 (ILO) ジュネーブ本部
インターン期間:2018年2月~2018年7月(6ヶ月)

 

■インターンの応募と獲得まで■

私は、高校生の頃、児童労働のドキュメンタリーを観たことをきっかけに国連、特に国際労働機関(ILO)に興味を持ちました。しかし、周りに国連機関で働く人がいなかったこと、インターンシップは無給というイメージが強かったこともあり、国連はとても遠い存在で、自分の就職先として考えることはありませんでした。そんな私でしたが、イギリスの大学院在学中に国連機関での勤務経験があるクラスメイトやインターンシップに積極的に応募する友人たちに刺激され、私も挑戦してみようと思うようになりました。その年の冬、外務省と英国開発学勉強会(IDDP)共催の国際機関就職ガイダンスに参加しました。ガイダンスでは、外務省在ジュネーブ代表部の方や国連機関でご活躍されている日本人職員の方が、国連機関の採用のしくみやキャリアプランの立て方などを丁寧に説明くださり、応募書類の書き方やJPO(Junior Professional Officer)派遣制度への応募に向けたアドバイスなど、とても勉強になりました。その年の講演者は、大変幸運なことに、私が一番関心のあったILOの方でした。ガイダンス後の懇親会で、その方は初対面の私や他の参加者の話をとても熱心に聞いてくだり、「あなたのように熱心な日本人にぜひILOで働いてもらいたい」「応募しないと何も始まらない、迷ったら応募するべき」と力強い言葉で背中を押していただいたことをとても鮮明に覚えています。その後、2度、HPの公募で見つけたILOのインターンシップに応募しました。結果は惨敗で、書類審査を通過することもできませんでした。

修士論文を提出後、ロンドンの研究機関に就職し、日本に帰国後は、別の国際機関のインターンシップ(無給)をはじめました。しかし、ILOで働きたいという思いをどうしても諦めきれず、ILOインターン募集の時期がやってきた7月、3度目の正直を信じて応募しました。4ヵ月後、応募したことを忘れていた頃に、応募先のILO ジェンダー・平等・ダイバーシティ・ILOエイズ部署(Gender Equality Diversity & ILOAIDS Branch:GED)から、書類選考を通過したとの連絡を受け取りました。その後は、インタビュー(1時間程度)、筆記試験(2時間エッセイ形式)、インタビュー(1時間程度)と、3段階にわたる選考が短期間にすすみ、数週間後に合格の連絡をいただきました。

労働者の権利を大切にするILOらしいなと感じたことがありました。それは、合格通知後、業務内容について、スーパーバイザーと話し合う時間を設けてくれたことです。ILO GEDが私に期待することと私がこのインターンシップの経験から学びたいこと等をお互いしっかり理解し、合意をしてインターンシップをはじめられたことは、その先6ヶ月の充実度を左右するとても重要なプロセスだったと、インターンシップを終える頃に実感しました。(詳しいインターンシップ応募のプロセスについては、ILOホームページ[1]や国連でインターン第63回斉藤由美さんの記事[2]をご覧ください。)

■インターンシップの内容■

業務内容

私はインターンとして、労働条件局 ジェンダー・平等・ダイバーシティ・ILOエイズ部署(Gender Equality Diversity & ILOAIDS Branch:GED)の配属になりました。GEDには、ジェンダー、障がい、原住民、HIV・エイズ、暴力・ハラスメント、それぞれにフォーカスした5つのチームがあります。私は、原住民の権利を主に扱うチームに配属になり、3月の国際女性デーイベント(2018年のメインテーマは原住民、農村・漁村における女性)の企画と運営を担当しました。イベントは、Rural Women at Work: Bridging the gapsをテーマに、女性のエンパワーメントに貢献するスリナムのマルーン系民族女性[3]やILO事務局長を招待し、パネルディスカッションを開催しました。ディスカッションの中で、彼女が「原住民や農村・漁村で暮らす人々の人権について話し合う際に、私たち(原住民女性)をもっと話し合いの場に呼んでください。意思決定の場に呼んでください」と訴えていたことが印象に残っています。原住民女性は、原住民でない人々や原住民男性に比べて、気候変動による影響がこと大きいことや、暴力・ハラスメント、搾取の対象になりやすいことなど、今まであまり学ぶ機会のなかった原住民女性が直面する社会問題を勉強する大変よい機会となりました。

(写真79-2 ILO International Women’s Day 2018 イベントにて Photo: Marcel Crozet / ILO)

イベント後は、私の希望でジェンダーチームに配属になり、ジェンダースペシャリストのもとでの勤務がはじまりました。最初の仕事は、The Care Work and Care Jobs for the Future of Work[4]

というケア労働に関するレポートの作成です。私はその中の、気候変動がもたらすケア労働・ケア労働者に対する影響、移民への影響、ケア労働における日本のロボット技術の活用についてのセクションを担当し、リサーチとドラフトの作成をしました。ケア労働は大学院修士論文で扱ったトピックであったこと、また、ロボット技術の活用はとてもユニークだと考え、自分から書かせてくださいとお願いしました。インターンシップは”learning experience”なので、このように自分が興味のあることはやらせてくださいと、自ら積極的に上司にお願いするようにしていました。

 その後は、G20やBRICSの開催に合わせて、社会政策(特に産前産後休業、育児休業、女性のエンパワーメント、ディーセントワーク[5]へのアクセス、移民、貧困、LGBTsに関する政策)について参加国からの情報提供をもとに、各国の良い取り組みや改善が期待できる点等を調査し、ジェンダースペシャリストとともにレポートの作成をしました。また、同一賃金国際連合[6](EPIC)の運営委員会や事務局会議の企画と運営、そのために必要な書類・レポート、コミュニケーション資料の作成を担当しました。EPICパンフレットは、ILO日本事務所の皆さまと協力して、日本語版[7]を作成しました。

服部真衣さん:Mai Hattori(写真79-3 ILOジェンダー平等・ダイバーシティキャンペーンにて、ジェンダーチームの同僚と)

活動を通しての学び

インターンシップの6ヵ月間、通常業務やGED同僚との会話を通して、ジェンダー平等やダイバーシティ、インクルージョンについて理解を深めることができました。例えば、日本ではジェンダー平等の話をする際、多くの場合に男女平等や女性のエンパワーメントだけが強調されることがあります。ILO GEDでは前述した通り、ジェンダー、障がい、原住民、HIV・エイズ、暴力・ハラスメントと幅広い視点で考え、「すべての人が平等にディーセントワークへのアクセスを持ち、性、ジェンダー、人種、民族、皮膚の色、障がい、HIVのステータス等によって差別されるべきではない」という理念が、活動の基になっています。ジェンダー平等への取り組みにおいて、男女平等や女性のためのものという考え方ではなく、常に幅広い視点で物事をみることができるようになりました。

また、自分の今までの働き方を見直す機会にもなりました。ILOでは目や耳の不自由な同僚と働くことがよくありました。今まで当たり前だった働き方では、彼/彼女らと効率よく働くことはできません。会議で「こちらのパワーポイントのグラフをご覧ください」と言っても、「ちょっとこれを確認してください」と自分のパソコン画面を指さしても、目の不自由な同僚には伝わりません。耳の不自由な同僚には、電話で話すより、メールや手書きで説明したほうがスムーズに伝わります。色の識別が難しい同僚やレポートの読者のためにも、グラフや表を色だけで区別するのではなくパターンや柄を使用するようにしました。ILO GEDでの経験を通して、どんな人にもできるだけわかりやすく伝わる話し方、書類、Web、パワーポイントの作り方を学び、どんな仕事をする時にも、インクルーシブかどうか、すべての人がアクセスできるかどうかということに注意を払えるようになりました。

業務外の活動

ILOには、インターンの権利を尊重しインターンシップがよりよい経験になるよう活動する、インターンボード[8](The ILO Intern Board :IB)という委員会があります。IBはインターンの代表により運営されており、各オフィサーが様々な分野でインターンをサポートしています。例えば、Small Talk Officerは、毎月数回、ILOのスペシャリストを招いて短時間の講義を開催し、インターンに学びの場を提供します。Social Welfare Officerは、新人のインターンにスーパーバイザーや同僚とのコミュニケーションのアドバイスをしたり、カウンセラーなどILOが提供するサポートを紹介してくれます。Gender Equality and Diversity Officerは、ILO Staff UnionやGEDのスペシャリストと共同でジェンダーやダイバーシティに関しての意識向上のためのワークショップを開催していまいす。私はIBのSocial Officerとして、毎週Coffee and Cake(コーヒーとお菓子で休憩タイム)やILO Intern Apero(懇親会)、BBQなど、部署の垣根を越えてインターン同士で交流を深めるためのイベントを開催しました。通常業務とIBを兼務するのが大変なこともありましたが、様々なバックグラウンドをもつインターンと交流を深めることができ、IBに関わることができ本当に良かったです。

 

服部真衣さん:Mai Hattori(写真79-4 インターンの仲間とPhoto: Renzo Costa)

■ジュネーブでの生活について■

インターンシップが始まる前に、仕事についていけるかということの他に私が一番心配していたのは生活費のことでした。ILOインターンシップは有給で、ILOから生活と保険のための手当てが支給されます(2018年インターンシップでは月額約26万円の手当)。結論から申し上げると、ILOからの手当てで生活できます。私は、シェアフラットに住んだり、ランチはお弁当を持参したりして節約しました(大半のインターンがそうしていました)。インターンシップ最初の1ヵ月間(最初の手当て支給までの間)の生活費は、準備していく必要があります。また、渡航費、保険はインターンシップが始まる前に加入するため、そのための費用、家の契約時にデポジットを払う必要がある場合が多いので、その分の費用を準備しておくことも大切です。

ジュネーブは、家探しが簡単ではありません。契約が決まるとすぐに、ILOインターンシップチームが家探しに役立つ情報提供をしてくれます。私も含め多くのインターンは、SNSやローカルネットワークを頼りに家をみつけていました。ジュネーブに知り合いがいる場合は、ぜひいろいろアドバイスをもらいながら家探しをしてみてください。家探しを始めるのは早いに越したことはありません。

その後の展望

インターンシップ後のキャリアは人それぞれ違います。仕事が評価され、タイミングよくスタッフとして短期契約を獲得する人もいれば、別の国連機関に就職する人もいます。博士課程に進む人もいれば、民間企業に就職する人もいます。ILO邦人職員の皆さまのお話をお伺いすると、お一人おひとり全く違うバックグラウンドをお持ちで、色々なキャリアパスを進んで来られておりました。国際機関の就職において、1つの決まったキャリアパスがあるわけではないようで、自分の専門性、ライフステージ国際機関の空席状況など様々なものに左右されることも事実です。邦人職員の皆さまや、上司、同僚から学んだことは、国連機関に残る以上は常に就活なのだということです。いつも空席情報にアンテナを張り、更新されたCVを準備しておき、自分のバックグラウンドや専門性、どんな仕事をしたいのかを簡潔に人に伝えられるように練習しておくことが大切なのだと学びました。

■最後に■

私にとってこの6カ月は、今後自分がどんな人材になりたいのか、どんな経験を積み、どんなスキルを身に着ける必要があるのかを明確にするとても貴重な機会となりました。また、世界中から集まる、様々なバックグラウンドや経験をもつ素敵な方々に会うことができました。もしインターンシップに応募するかどうか迷っている方がいらっしゃれば、まずは応募してみてください。そして、インターンシップが決まった際には、ぜひたくさんの方々に会ってお話を聞いてみてください。ネットワーキングのためだけではなく、ILOで働くまでは想像もできないようなお仕事をされている方々の興味深いお話が聞けるかもしれません。

拙い文章ではありましたが、1人でも多くの方にILOのインターンシップについて知っていただき、ILOインターンシップを目指している方のお役に立てると幸いです。

 


[1]ILO: Internship Prrogramme, https://jobs.ilo.org/content/Internships/?locale=en_GB 
[2]国連フォーラム: 国連でインターン第63回斎藤由美さん, http://unforum.org/internships/63.html#2
[3]Ms Fidelia Graand-Galon, Honorary Chair of the Maroon Women’s Network in Suriname. 
詳細はMaroon Women’s Network- Suriname の紹介ページ()をご覧ください。
[4]ILO: The Care Work and Care Jobs for the Future of Work, 2018, https://www.ilo.org/global/publications/books/WCMS_633135/lang–en/index.htm
[5]ILO日本事務所: ディーセントワーク, https://www.ilo.org/tokyo/about-ilo/decent-work/lang–ja/index.htm                                 |
[6]Equal Pay International Coalition: https://www.equalpayinternationalcoalition.org/|
[7]ILO日本事務所: 同一賃金国際連合, 2018, https://www.ilo.org/tokyo/information/publications/WCMS_656735/lang–ja/index.htm
[8]ILOIntern Board: https://internboard.wixsite.com/internboardilo