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第44回
大原理代さん
インターン先:
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インターン先:
国際連合開発計画サモア事務所(UNDP Samoa) - Programme Management Support Unit


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インターン先:
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岡崎 詩織さん
インターン先:
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仲上 睦美さん
インターン先:
UNDP ニューヨーク本部
アフリカ局アフリカ開発会議部


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サUNコンパウンド内でUNESCOサモア事務所のスタッフと。

第45回 脇本拓哉(わきもと たくや)さん

関西学院大学 総合政策学部 国際政策学科4年
インターン先:ユネスコ・サモア事務所(UNESCO Samoa) Intersectoral担当
インターン期間:2011年10月〜2012年1月


■はじめに■

関西学院大学(以下、関学)3年(当時)の脇本拓哉と申します。南太平洋にあるサモア独立国のユネスコ事務所で4ヶ月間国連学生ボランティアとして働かせていただきました。国連ボランティア計画(UNV)を通して応募したため、学生ボランティアとして派遣されました。ポジションとしてはインターンと変わらないためここで報告させて頂きます。

将来的に国際社会で働ける実力をつけたかった私は、サモア派遣1年前にカナダのマギル大学に1年間交換留学をしていました。そして、次は国際的な現場で職務を経験し、いまの自分の能力がどれだけ通用するのか、試してみたいと考えインターン派遣へ申し込みました。学部では国際関係、国際開発を中心に幅広く学び、いずれは国際機関で働きたいと考えています。

所属
私のインターン先はUNESCOでしたが、UNVの学生ボランティアとしてUNESCOのサモア事務所へ派遣されたため、公式の在籍事務所は国連ボランティア計画(UNV)でした。ました。UNESCOでは、5つあるUNESCOのセクターのいずれにも所属せず、Intersectoral(セクター間業務)担当として活動し、主にDirectorが担当している事務所全体に関係する仕事のサポート業務を行いました。


■インターン派遣までのプロセス■

関学は2004年よりUNVと協力し、定期的に学部生・大学院生を途上国のNGOや政府機関、UN機関に派遣しています。私の場合は学部生ですが、同プログラムを利用し、UNESCOにてインターンではなく学生ボランティアとして働く機会を得ることが出来ました。同プログラムを通してこれまでにマラウイ、ケニア、ネパール、フィリピンなど12の国々への派遣が行われています。



UNESCOサモア事務所ののローカルスタッフと。


大学のプログラムということで、特異なケースではあると思いますが、参考までに参加までのプロセスをご紹介させていただきます。

大学の国連学生ボランティアというプログラムに、志望動機や将来設計を記入した応募用紙と英語力証明書を提出します。その後担当教官複数名と英語あるいは第三言語で面接を行い、合格をした者が派遣登録生となって、集中的なトレーニングを受けることになります。派遣までには、最短でも約半年間の訓練が必要で、主に のスキル、国際機関の知識、言語力アップなどを中心に準備をします。長い場合には2年間訓練をしての派遣ということもあり、派遣までに多くの訓練が待ち構えています。これらの訓練の後、CVをUNV本部(ドイツ・Bonn)に送り、受け入れ先を見つけ、電話インタビューを経て、最終的な派遣となります。私の場合、サモアに前任の学生が派遣されていたので、その入れ替えという形で比較的スムーズに受け入れてもらうことができました。

■インターンシップの内容■

私は、Directorの業務サポートとして、2つの大きなタスクに取り組んでいました。一つはUNDAF資料作成の補助で、もう一つはUCPDのレビューと作成補助です。以下、簡単に業務内容を紹介させていただきます。

国連が作成する国連開発支援枠組みUnited Nations Development Assistance Framework (UNDAF)というものがあり、南太平洋地域にはPacific Multi-country UNDAFとPapua New Guinea UNDAF(PNG UNDAF)という2種類があります。前者は2013年より、後者は2012年より刷新されるため、UNESCOサモア事務所もこの資料作成に貢献しなければなりませんでした。私は、特にPNG UNDAFに対してUNESCOの業務マトリックスを作成する業務に取り組み、オーストラリアの開発機関であるAusAIDやパプアニューギニア政府の開発目標、UNESCOのパプアニューギニアにおける開発計画などを加味した計画表の作成に注力しました。

UNESCOのサモア事務所は、南太平洋各国に対する開発計画UNESCO Country Programme Document (UCPD)を独自に作成しており、私はこの計画を洗練しよりよいものへするという作業に貢献しました。具体的には、UNDAFと南太平洋各国政府の開発計画とUCPDとを照らし合わせながら、UNESCOサモア事務所が各国にどのよう貢献できるかを探り、UCPDをより良いものにすることを目指して、アイデアを提案しながら計画表作成にあたりました。

サモアのUNコンパウンド前にて。UNV東京へ広報用の写真をUNV日本人スタッフと撮影。


これら2つのタスクで困難だったのは、各国政府の目標、国連全体の目標、UNESCOサモア事務所の目標、過去の成果と現在の課題、他の機関・団体と恊働できるかなどを考慮に入れ、実現可能かつ効率的で効果的な計画表を提案する事でした。計画表作成のためには膨大な量の資料を読まなくてはならず、はじめの1ヶ月は関係資料を読みあさる事だけで過ぎてしまいました。しかし、この作業を通じて、資料の多くは文字によって内容が複雑になっており、重要な情報だけを得ることが難しくなっているということに気がつきました。一方で、日々の業務に忙しい職員たちはこれら長い文章にしっかり目を通す時間がなかなかとれないことにも気づきました。これではせっかくの資料が無駄になると思い、この問題を解消すべく、必要な情報を選別洗練し、UNESCOの職員をはじめ他の機関の職員が一目でUNESCOサモア事務所の活動が理解できるような表をデザインしました。

私の業務はデスクワークが主で、根気のいる業務でした。しかし、上司に質問するにしても回答を理解するだけの知識がこちらに必要ですし、なにより「こんなことも知らないのか」というようなことを言われる事がつらく、必死で勉強しました。結果、はじめは後追いで資料を研究していましたが、会議のテーマを聞いただけで必要な資料を判断し事前に研究が出来るほどの予備知識が身に付きました。それからは、私の業務スピードは格段に上がり、ここで働けるという自信がでてきました。

任務を終えて振り返ると、UNDAF関連の業務が与えられた事は私にとって幸いであったと考えます。UNDAFは国連と政府が掲げる大きな枠組みであり、これにUNESCOサモア事務所の業務マトリックスを作成するにはUNESCOを組織として理解しないといけません。勉強不足であった私はこの業務を通してUNESCOがどういう機関であるか理解する事ができ、また一方で国連のできる開発に関してもある程度理解できるようになりました。将来国際機関で働く事が現実味を帯びてきたとき、どの場所・フィールドで働きたいかを理解して選択することができるようになったと考えます。

■今後と将来の展望■

UNESCOでのインターン経験から、政治の重要性を改めて感じました。以前までの私は、草の根での開発活動に最も意味があると考え、草の根で働く事を将来希望していました。しかし、政府レベルでの協議がなされないと草の根レベルでの活動さえ満足に行えないという実態を学びました。もちろん、NGO例外で、状況や案件によって異なると思います。しかし、私は途上国に対する国際政治の影響(ちょうどパレスチナのUNESCO加盟によって米国からの拠出金が滞った時期でした)や政府の役割を知り、政策レベルで仕事ができる機関を選択するのも今後の可能性の1つとして考えるようになりました。

また、業務を遂行する上で自分の知識の無さを嘆く機会に多く直面しました。働く者としての常識はもとより、自分の知識に深さがない。そのため、十分な意見や提案ができない。仕事をするには、最低限の知識の深さが必要であるということを痛感し、修士課程程度の勉強は早い段階でしたいと強くようになりました。

今回の経験は私にとってはじめての「働く」経験でしたが、就職活動中の私はこの働く経験を通じて、自分にあった職場環境は自分でつくるものだと考えるようになりました。同僚とのコミュニケーション、名前を覚える事、仕事を行うスピード等の重要性やその他様々な事をサモアで学びました。結論として、多くのことを施してくれる大きな会社よりも、 働きたい業務の内容で就職先を選びたいと考えるようになりました。



サモアのUNVが、サモアのある村で行ったイベントの風景。
UNのスタッフ、JICAのスタッフ、赤十字、村の人々などが集まっています。


■費用・環境など■

生活費としてかかるのは食費のみです。食材はものによってはとても高価で、日本で定価で購入する程度の値段でした。例えば、輸入品のみであるパプリカ、マッシュルーム、ブロッコリーなどは日本の倍以上するなど、基本的に高いものは輸入品でした。外食の場合は、平均20タラ(約700円〜1500円)かかりました。食事の質を考えると高いですが、味は意外と良い物が多くありました。

私の住居は、仮設住宅のようなものでした。小さなコンパウンドに10部屋ほどあり、キッチン・トイレ・シャワーが共同でした。各部屋に扇風機はあるのですが、建物としての質が低く、日中は室内にいられないほど暑かったです。しかし、同じコンパウンドに住んでいた、UNでインターンをしていたベルギー人、オーストラリア人、日本人とは楽しく過ごせました 。また、UNオフィスから歩いて3分という立地条件は良かったです。

水道は住む地域によって差が大きく、水が頻繁に止まる地区もあります。しかし私の住んでいたエリアでは止まった事はありませんでした。 交通費は主にタクシー代ですが、初乗りが3タラ(約100円)からなので、頻繁に利用しました。バスは50セネ(約20円)で乗れ、頻繁に走っているので便利でした。

蚊が多いのは仕方ないですが、マラリアなどの感染症はサモアではほとんどないので痒いだけです。ただ野犬が多くいるので、特に夜間はかまれないように注意しなくてはなりませんでした。

海外インターンシップを希望する方へのメッセージ インターンに必要なのは根気だと考えます。語学力がゼロでなく、当たり前のことを当たり前に考え、それを実行する力があれば、あとは気力でなんとかなると思います。言語が苦手であったとしても、時間をかけ辞書とにらめっこをし続ければ理解することはできますし、一見難しそうな業務に見えてもあきらめずに小さい事からこなしていけば十分な成果を出す事はできます。まずは挑戦し続ける事。続ける根気があれば最後は自信になると思います。なにより私のような世の中の右も左もわからない学部生が無事業務を遂行できたのですから、多くの人が良い成果を残せるはずです。






(2012年11月04日掲載 担当: 高田、曽我  ウェブ掲載:陳穎)

 



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