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第33回
山中 翔大郎さん
インターン先:
国連広報センター(UNIC)東京事務所部


第32回
林 真樹子さん
インターン先:
UNESCOパリ本部
UNESCOカンボジア・プノンペン事務所
UNICEFカンボジア・プノンペン事務所


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近藤 篤史さん
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(UNGCO)
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インターン先:
UNICEF インド・デリー事務所

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丸山 隼人さん
インターン先:
UNDP 東ティモール事務所

第26回
池田 直史さん
インターン先:
UNHCR イエメン事務所

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第34回 高林 祐也さん

シラキュース大学マックスウェル公共政策大学院
インターン先:国連開発計画(UNDP) ガーナ事務所
期間:2009年6月1日〜8月4日

 

■インターンシップの応募と獲得まで■

私は、環境省からの2年間の留学派遣で、現在、米国シラキュース大学のマックスウェル公共政策大学院に在籍しています。一年目と二年目の間の夏休みを利用して、この夏、UNDPガーナ事務所でのインターンシップを経験しました。

サブサハラの国における環境問題(とりわけ、気候変動問題)への取組状況を知りたいというのが、インターンの直接の動機でしたので、2009年の年明け頃から、アフリカにネットワークのある先輩・知人方数人への打診を始めました。そのうちのお一人の方からご紹介いただいたUNDPガーナ事務所に、春ごろ、正式な応募をさせていただき、幸いにも採用していただけたというのが、インターン獲得に至る経緯です。

インターンシップの内容

UNDPガーナ事務所では、5つあるユニットのうちの、Environment & Energy Unitへの配属になり、諸々のプログラムのお手伝いをさせていただきました。私以外には、正規のスタッフの方が3人だけという非常に小さなユニットでしたので、基本的に、どの案件にも携わらせていただくことができ、同ユニットがカバーしている内容を、一通り勉強させていただけたように思います。

私の滞在中には、気候変動対策、オゾン層保護、エネルギー効率の改善などのプログラムが同時並行で進められていましたが、中でも、ユニットとして(あるいは事務所を挙げて)特に大きなリソースを割いていたのは、気候変動対策の分野でした。既に予算化されている、いくつかの気候変動関連プログラムのほか、京都議定書に基づくCDM(Clean Development Mechanism)の実施に向けた検討も行われており、私自身、インターン期間中の多くの時間を、CDM関連の業務に費やすことになりました。

CDMは、先進国の技術・資金により、途上国において温室効果ガスの排出量削減と持続可能な発展の両方に資する事業を行う制度です。しかしながら、これまでのところ、中国、インド、ブラジル、メキシコの上位4か国だけで全体の7割以上が占められており(登録件数ベース)、アフリカの国で実施されたCDMの件数は、全体の2%にも達していません。その中でも、南アフリカ共和国や、北アフリカ諸国への偏りが見られ、ガーナでは、これまでのところ、一件のCDM登録もなされていません。このため、UNDPガーナ事務所では、私がインターンをさせていただいていた当時、ガーナにおけるCDM一例目の実現に積極的に貢献したいという意向を有しておられ、そういった背景の下、CDM実現のために必要なステップを明らかにするといった課題に、二か月のインターン期間を通して取り組ませていただきました。

この間、CDM関連のいくつかのワークショップに出させていただいた他、ガーナ環境保護庁、金融機関、公営企業、民間企業など、それぞれの分野でCDMを担当しておられる方々との意見交換も頻繁にさせていただきました。そういった中で、当初は、おぼろげにしか見えていなかったCDMにまつわる様々な事情が浮かんで来、その結果、先進国の制度設計担当者が見落としてしまいがちな、途上国に特有の経済的・政治的事情を、少なからず、知ることができたように思います。そういった知見を得たいというのがこのインターンでの私の一番の目的でしたので(詳しくは後述)、本当に望み通りの貴重な経験をさせていただけたと思います。

Accra市内の繁華街、Osuの様子。

一方で、どうしても、オフィス内での勤務が中心になるのは、少し残念な点でありました。もっとも、私がインターンだからというわけでもなく、ユニット全体がそういった勤務形態をとっていましたので、致し方のないことではあったのですが。勝手な想像ながら、もう少し、本当の「現場」に触れられる機会が多いのかなと予想していたところがあっただけに、その点は、少し残念でありました。(とはいえ、私のわがままを聞いて下さり、ガーナ北部の町、Tamaleへの出張に同行させていただけたのは、非常に貴重な経験になりました。)

北部の町、Tamaleの集落。

資金、生活、準備等

資金については、特段の補助を受けず、実費にて渡航・生活をしていました。 住居については、同じ事務所で働いておられた職員の方のご自宅に居候をさせていただいていました。他の途上国でも、同様の事情があるのかも知れませんが、Accraは、住宅事情が決して良いとは言えず、現地UN事務所から強く推奨されている「安全な地区」内の住居に住まうとなると、その家賃は、日本の基準で考えても非常に高いものとなってしまい、また、(今回の私の滞在のような)短期の契約では、そもそも、なかなか貸してもらえないのが実情です。実際、適当な物件が見つからず、1か月以上もホテル暮らしを強いられている日本人の方(この方は国連関係の方ではありませんでしたが)もいらっしゃいました。その点、私の場合は、非常にリーズナブルな条件で一部屋を貸していただき、本当にラッキーだったと思います。2、3か月といった、比較的、短い期間でインターンをされる場合に、現地での住居探しに手間取ってしまうと、せっかくの貴重な時間が奪われてしまって、非常にもったいないと思いますので、現地事務所の方にご紹介していただくなどして、可能な限り、渡航前に当たりをつけて行かれることをお勧めいたします。

渡航前には、必須とされている黄熱病の他、B型肝炎、破傷風など、いくつかの予防接種を受けました。どこまで受けていくかについては、人によって、判断の分かれるところだと思いますが、私の場合、何人かの方に相談させていただいた上で、安心のためにも、医者から勧められたものについては、基本的に全部受けるようにしました。中には、一定の間隔をあけて、二回接種する必要があるものもありますので、渡航の日程が決まり次第、計画的に進める必要があるかと思います。

また、マラリアについては、経口の予防薬を持参しましたが、結局、一度も服用はしませんでした。幸い、私自身は、マラリアに罹ることなく滞在期間を終えることができましたが、周りの方のお話をおうかがいしていると、一度か二度、罹ったことがあるとおっしゃる方がそれなりにいらっしゃったのも事実です。

Accraは、それなりの都会であるということもあり、生活面で、特に困ったことはありませんでした。治安の面でも、夜間に出歩くのは極力控えるなど、確かにできる限りの注意は払っていましたが、実際に、怖いと感じた場面には一度も遭遇していません。私自身、初めてのアフリカ渡航でしたので、出発前は不安に感じていた部分もあったのですが、いざ、実際に暮らしてみると、想像していた以上に不自由ではなかったというのが、正直なところかも知れません。

■ 感想と今後の展望 ■

途中でも少し触れましたが、私は今後、環境の分野で自分のキャリアを築いていく上で、一度途上国、それも東南アジアのような、発展度合いや地理的・文化的な側面が日本に比較的近いと思われる国々ではなく、ある意味で自分の生まれ育った環境から最も遠い状況にあるサブサハラの国で、環境問題がどう取り扱われているのかを知りたく思い、今回、インターンをさせていただくことにしました。その意味では、ガーナという国は、地理的・文化的にこそ日本から遠くはあれ、政治・経済の面では、比較的安定した発展を遂げている国であり、本当の意味で日本の状況から「最も遠い」国を見てきたことになるのかどうかはわかりませんが。

しかし、いずれにせよ、この二か月間の経験から得られたものは非常に大きかったように思います。一番印象に残っているのは、気候変動対策にせよ、オゾン層保護にせよ、環境保護庁の職員の方をはじめとして、ガーナの方々の興味・関心が、想像していた以上に高かったということです。こういった地球規模の環境問題は、それ自体、非常に重要な問題ではありますが、目に見えて直ちに影響が現れるような性質のものではありません。そのせいもあって、先進国においては、より直接的・可視的な環境問題(公害問題やゴミ処理問題など)が、まず大きな社会問題となり、それらがある程度改善された後に、環境問題の中心的課題が、地球規模のものへと移ろっていった経緯があります(問題の発見・顕在化に時間的ズレがあったという歴史的経緯もありますが)。その点、ガーナの方々が、既に、地球レベルの環境問題に非常に熱心に取り組まれている姿は、とても印象的でした。

ただ一方で、公害問題やゴミ処理問題への対応が、十分許容できる範囲にまで進んでいるかというと、あくまで直感的な印象ではありますが、必ずしもそうとは言えないのではないかという気もしていました。「開発援助」という文脈から言えば、バイ/マルチのドナーとも、どうしても資金の出し手である先進国のtax payersの関心がより高い、気候変動、オゾン層保護といった問題に重点的に資金を張り付けがちであり、その反面、被援助国の人々にとっては、もしかするとより緊急性の高い課題であるかも知れない公害やゴミの問題には、援助資金が回りにくいといった状況が生まれているのではないかという気もしました。

また、じっくりと時間をかけて研究させていただけたCDMについても、ガーナのような、十分に工業化されているとは言えない国で実施することの難しさがよくわかったように思います。そういった点は、普通に先進国で仕事をしているだけではなかなか見えてこない面だと思いますので、今回のインターンを通して得られた視点を大事にしながら、留学終了後の仕事に活かしていきたいと思っています。

滞在中にObama大統領が訪問。街中には、Obama歓迎の看板が。

これからインターンを希望する方へのメッセージ

受け入れていただく組織やその組織の状況にも、もちろん、左右されるとは思いますが、一般的に言って、インターン生が、重要な責任の伴う業務を担当させていただくことはなかなか難しく(あるいは、適当でなく)、そういった中で、ただ「一定期間、○○オフィスに身を置きました」という以上の経験を得ることは、実は容易ではないのではないかと思います。その意味では、私の場合、「GhanaにおけるCDM実施のための課題の抽出」という、ある程度の期間を要する、大きめの課題をいただけたことは、非常に良かったように思います。もちろん、日々流れていく業務に立ち会わせていただく中で、学び、感じ取るものもあるわけですが、じっくり腰を据えて、自ら調べ、考え、また、関係者にインタビューをして一つのことを深めていった経験は、CDMのみに限らず、それを取り巻く、ガーナの経済的・政治的状況を自分の頭で深く理解するのに、非常に役立ったように思います。また、ある程度目に見える形で、アウトプットを残せたのも、個人的には、非常に嬉しく思えたことでした。

私のケースは、あくまで一つのパターンですが、いずれにせよ、ただ漫然とインターン先に身を置くだけでなく、自分として、どういったことを得て帰りたいかという、ある程度明確な問題意識(と、それを達成するための戦略)を持って、インターンシップに臨むことは、貴重な時間をより有意義なものにするために、非常に重要なポイントであろうと思います。こういったことについては、私の前に、このコーナーに寄稿された方々が、既に十分ご指摘されているかと思いますので、言わずもがなではありますが、この点を、皆さまへのメッセージとさせていただいて、この文章を閉じさせていただきたいと思います。

(2009年12月25日掲載 担当:大地田・桐谷 ウェブ掲載:秋山)

 



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