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第13回
佐々木 佑さん
インターン先:
UNDP・日本WID基金


第11回
山岸 千恵さん(2)
インターン先:
UNICEF
バングラデシュ 事務所

第10回
山岸 千恵さん(1)
インターン先:
UNICEF
バングラデシュ 事務所

第9回
亀井 温子さん
インターン先:
UNICEF
バングラデシュ事務所/
国連本部人道問題調整局
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第14回 朝居 八穂子さん / コロンビア大学Teachers College
インターン先:UNICEF・ウガンダ事務所
写真:送別ランチで、上司-右から2人目-や同僚と一緒に。


<その2>

コロンビア大学Teachers Collegeで国際開発教育を学んでいます朝居と申します。 6月始めにUNICEF ウガンダ事務所・北部支援ユニットでのインターンシップ獲得までと開始直後の様子をご報告しました。

遅くなりましが、今回はその後のご報告です。

インターンシップの内容

私が今回のインターンを通じて学びたかったことは大きく2つありました。1つは紛争が二十年続く北部ウガンダで子供達がどんな教育を受けているのか、紛争地域だからこその教育分野の課題は何なのかを、自分の目で見て知ること。もう1つが、色々な立場のユニセフ職員(インターナショナル/ナショナルスタッフ、正規職員/短期雇用、首都/地方駐在、北部ユニットのような地域部/教育ユニットのような専門部、等)がどう内部で連携しあい国内避難民(IDP)キャンプやキャンプ内の学校に支援を届けているのか、その業務の内容と効率性を学ぶこと。前者については、北部出張と学校モニタリングを通じて、後者については調整業務や職員との交流を通じて、それぞれ目的を達成することが出来、非常に有意義なインターン経験となりました。

具体的に、担当した業務をいくつか挙げると;
1)多くの機関・団体によって行われている人道援助の活動内容とそのギャップを把握する(クラスターアプローチ:国連でインターン第7回-その1-参照)ために用いるツールの教育セクター版の作成、及び、ユニセフ北部地方事務所の教育担当者に対する同ツールの利用に係るコンサルテーション、
2)教材調達計画起案、
3)国内避難民(IDP)キャンプ内の学校モニタリング、
4)カンパラ事務所の北部支援ユニットと教育ユニット間、及び、カンパラ事務所と北部3地方事務所(Gulu, Kitgum & Lira)の教育担当者間の業務調整、
5)プロポーザル内容精査と採択に至る手続き支援、
加えてカンパラ事務所のプログラムオフィサーや秘書の業務支援なども行い、かなり多岐にわたりました。

IDPキャンプ内の学校の様子は前回報告で軽く触れましたので、今回はユニセフ職員の内部連携について、担当業務の4)カンパラ事務所内、また北部地方事務所との業務調整と絡めてお伝えしたいと思います。援助調整は開発業界では常に課題として挙げられ、援助機関が乱立する北部ウガンダにおいても同様に大きな課題なのですが(だからこそクラスターアプローチが導入されつつあるわけですが)、このインターンを通してユニセフ・ウガンダという一つの機関の中においても調整、情報共有が意外と難しいということを知ることができ、とてもおもしろい経験でした。

例えば、A県では何ヶ月も前から地方政府、NGO、ユニセフ合同学校モニタリングが行われていて、私も参加する機会を得、モニタリングに使うフォーマットや収集データの一覧表などを分析・活用していたのですが、ある日B県のユニセフ事務所の教育担当者から「B県で合同モニタリングの計画があり、そのために添付のフォーマットを用いる予定。モニタリングはB県のIDPキャンプXで試行され、フォーマットの使用には問題がないことを確認。収集したデータを入力するツールを作成するのが次のステップである」との業務メールが入り(受信者は関係NGOとユニセフ・カンパラの教育ユニット担当者、及び私)、添付データを開いてみると、いくつか変更・改善点はあるものの既にA県で使われているフォーマットとほぼ同じ。どうやら両県で活動するNGOの担当者間でフォーマットが流れ、それを基にB県でモニタリング計画が進められたようです。そこで私はA県ユニセフ事務所の教育担当者をCCに入れた上で、A県でモニタリングが既に行われていること、収集データを分析するツールも既に存在することを返信メールで知らせ、またA県担当者にモニタリングを通じて得た教訓をB県で生かすために共有して欲しいと依頼しました。これは、地方事務所の横の連携不足が、B県での業務の重複を生み、A県での経験を活かし損ねかねなかった事例です。

また、カンパラと地方ではイントラネットが繋がっていないため、地方職員の情報量が限られています(という事実自体、そもそもイントラネットへのアクセスが無かった私自身、インターン期間の後半になって知りました)。その為、ユニセフが持つ学校教材キットの具体的な中身(黒板、ノート、クレヨン、定規など)を地方の教育担当者も実は知らず、同キットの到着を待ち望むパートナーNGOがカンパラのユニセフ事務所に陳情に来たという例もありました。私は教材調達計画起案のため関連情報を得ていたので、このNGOに資料を提供するとともに、イントラネットのデータベース上にあったキット内訳を利便性のためMicrosoft Wordにし、ユニセフの全教育関係者に送付しました。

何かを知らないまま知らないということにも気付かず、気付いたとしても欲しい情報が既に存在する事実や入手方法を知らずに業務を続けていることはユニセフ・ウガンダに限らずどこにでもあると思いますが、通信、IT環境、予算や移動が限られた紛争地域だからこそより効率的・効果的に情報を共有、コミュニケーションを良くし、業務の無駄を省く必要があるのではないでしょうか。私のインターン期間中また北部・教育に限ってのみの業務調整の仕事で、雑用的な側面もありましたが、実はそうしたことが業務効率の改善の上で大きなインパクトを持つことを、上記のようにひとつひとつは小さいながらいくつもの事例を通して、同僚に伝えることが出来たと思います。

上記業務のほかに、ユニセフが調整役をしている緊急教育ワーキンググループの定例会(ウガンダ北部で活動する国際機関、教育NGO、教育省が情報交換や課題を話し合う場)や、ユニセフ年間計画の中間レビュー会議にも参加し、地方政府、他国連機関、国際NGO、現地NGOなどのパートナーと会う機会を得、それぞれの機関の特色を知り、セクター内調整、プロジェクト運営と評価、資金調達や管理といった様々な問題についても学ぶことができました。

首都で学んだこと以外にも、3ヶ月のインターン期間の内3分の1を出張して過ごした北部で、地方のユニセフ職員の業務・課題を学んだり、実際にIDPキャンプ内の学校を訪れ授業の様子を覗いたり先生方と問題点を話し合ったり出来たことは、外部者として今後どのように効果的に紛争・平和復興地域に教育援助が届けられるのかを考え、携わっていきたいと考える私にとって、非常に貴重な経験になりました。

感想・その他

インターンを通じて、教育分野に限らず多くの人に会い、紛争地域の諸問題を広く知ることが出来たこと、いろいろな立場・背景を持つスタッフと交流し業務に対する姿勢や人道・復興支援に関する考えを話し合えたこと、国連機関内部がどうなっているのか知ることが出来たこと、そして多岐にわたる業務を通じて、自分の強みそして課題をはっきり認識できたことは、今後自分がどう開発援助に関わっていくかを考える上での重要な糧になると思います。

また、インターンと同時に自分の修士論文のための調査も行ってはいたのですが(テーマ:紛争時、平和復興時における障害児教育)、これはテーマがテーマだけに予期していた通りそもそも入手できる資料、統計がほとんどなく、緊急教育支援の中でもかなり遅れている分野であることが確認できたにとどまりました。9月からまた大学院の授業が始まりますが、ウガンダで学んだ現状を踏まえて、インターン期間中に培った人脈を活かし、引き続き調査し考えを深めていきたいと思っています。

今回の経験、これを踏まえての学業を経て、いつか、インターン業務の合間をぬって訪れたウガンダ北部の障害児学級の子供達や今そもそも学校に来ることが出来ない(恐らく)大多数の障害を持つ子供達に、よりよい支援を届けることができれば嬉しいです。

(写真:Gulu県で唯一の聴覚障害児のための学校で。今日学んだことを手話で発表してくれたクラスメートに拍手をおくっているところ。音が聞こえないので、このように両手をあげてひらひらさせることが拍手の代わり。)

今後インターンを考えている方、復興支援や国連機関内部の業務に関心のある方などの参考になれば幸いです。

(2006年8月30日掲載)



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